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風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
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三十四話 太陽の訓練 その2

「おっ、来たな。待っていたよ」


暗闇の中、太陽は中央支部の裏で座っていた。


中央支部の裏には山頂まで400メートル位ある山がある。そんな裏山の麓に太陽、時成、真、沙奈香、弥生の5人がいた。


「親父っ。何で今から勝負するんだ」


「んっ……あーそれかー。皆が本気で修行を始めた時からいつかは、勝負したいなーって思っていたんだ。まぁ気分かな」


太陽は右の口角だけを上げて不適な笑みを浮かべて時成の質問に回答する。そして、時成以外の三人の方にも目線を飛ばしてから勝負の内容を話し始めた。


「勝負のルールだが、戦闘範囲は裏山だけ。勝負のつけかたも簡単。俺に一撃当てるか、そちら全員の降参だけ。だが、一撃当てた人だけ終わって良いことにする。質問はないかな」


「攻撃技は、魔法でも良いの、太陽さん」


「良いぞ。但し殺傷性がない魔法なら何でも良いぞ」


質問した沙奈香は、顎を少し引いて静かに小さく、口元に笑みをこぼしていた。


「さぁ始めようか」


太陽は自身の腰に帯びている刀に手をかけた。夜でも色が分かる位に白い鞘から、少しずつ夜の闇より漆黒の黒い刀身が表れる。


「来るよ」


そう言った弥生は少し体に力を入れた。その一言と同時に太陽からオーラと一緒に息が詰まるほどの圧力が四人にかかった。


「この殺気を感じて思い出した。太陽さんはあの()()()だったって」


弥生は何事もななかったように辺りを見回して確認する。


今、弥生の一直線上に太陽は刀を握って構えている。そして、時成と真は太陽を挟み撃ちに攻撃をするために時成は弥生から見て左側に、真は右側に回り込んでいた。その行動の早さから弥生は、殺気を感じた時にはもう動いていたと思った。


そして、その行動を見た太陽は弥生の心の中にある優しい表情ではなく、獲物を狩る動物のように左右を鋭い目で交互に見ていた。


はー。あの二人さっき私が言ったことを理解してないよね。そして、この勝負の意味に。最悪なことに私の魔法はあと3つぐらいしか魔法陣を展開することが出来ない。どうする。相手は『恐怖の象徴』とまで呼ばれた『辻斬りの太陽』。条件があるとしても4人の力を合わせないと勝つことは出来ないよね


冷静に今の自分の魔力と戦況を把握する沙奈香。自分の魔力は後少しで限界を迎える。だから今、必死に勝ち筋を探していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時成は木刀を握って走っていた。


一撃なら自分だけでもあてられる。いつまで経っても弱虫な俺ではないぞ


剣士として強くなると決めた()()()から時成の剣士としての師匠は太陽だった。その時成の行動源は自分と太陽の実力の差を肌身で感じて知りたかった。そして、太陽に強くなったって思って欲しかった。


ただそれだけ。


いつの間にか時成の目は緑色に変化していた。そして、時成は一気に太陽の間合いに侵入する。右斜め上から木刀を太陽に向けて振り下ろす。


その行動に両サイドと正面を見ていた太陽はわずか1秒対応に遅れる。体を右側にひねり時成の木刀を自分の愛刀をぶつける。だが少し見ていなかった逆サイドの真は太陽の腹部を目指して鋭い突きが入る。


「まじか」


太陽は力で少しずつ押されていた時成の木刀を真の突きに合わせて誘導する。カーンと言う木刀と木刀が接触した音と共に中央支部側から裏山にかけて強風が吹いた。その風に押される形で太陽は裏山に入っていく。だが、時成と真は警戒していたはずの突風に対応する(すべ)がなく倒れないように立っていることしか出来なかった。


「完璧に虚を突いたと思ったんだけどな。さっきの攻撃」


風が収まり真は少し悔しそうに地面に座る。真は黒の殺し屋(ブラックキラー)と呼ばれる人達にお願いをして時間が空いている人から近接戦闘を学んでいた。


「俺の方に少しは意識させることが出来ても押しきることが出来ないわ」


時成も少し悔しそうに地面に座った。反省はしても後悔はない。その証拠に今の二人は清々しい程の笑顔になって笑っていた。


次回『風の想い人』三十五話は9月24日に投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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