三十二話 同業者
8月最後の追加分です。
前回もそうですけど、遅くなってしまいすみませんでした。
風の民の会議から2時間後。空には無数の星が光り輝いている頃。
ここは風の民と旧妖魔共和国の国境付近にある飲食店。風の民の人達は外でご飯を食べると言う習慣もありこの店を利用している客も多かった。そんな飲食店を動仁は訪れていた。
「遅ぇーよ動仁。お前が呼んだんだろ、話がしたいことがあると言ってな」
狭い個室で待っていた太陽は動仁の目を見ながら強く言った。
何故なら、太陽が言ったことは本当で、会議に参加していたテツの護衛として太陽が本部の近くに来ていたことを知っていた動仁は、此処に来るようにと誘っていたからだった。
「久し振りに会って、ここに来たのにその言い方は酷くないか、太陽」
少し笑ってから動仁は近くに置いてあった白いグラスに入ってあった水を飲んだ。
「早速本題に入ろうか。時間は有限だからな」
「分かっていてくれて助かる」
太陽も頷いて返事をする。そして、動仁は真剣な表情になりこう言った。
「話は会議で聞いた。飯田の件の責任を持って何を企んでいるんだ」
「まだ答えられない質問だ。だが一つだけヒントを言うのなら俺の行動は、10年前から変わっていない」
太陽も話、終わると動仁と同じように水を飲んだ。
「10年前っか。正確には『雨の十五夜』以降だろ」
「さぁな」
太陽は不適な笑みを浮かべ動仁を見る。動仁はその笑いに危機感を覚えていた。何故なら嘘をついた太陽は、いつも不適な笑みで笑っていたと動仁は記憶していたからだった。
嘘も本当も混ざってんのか今の会話に
だが考え事をしている動仁に太陽からの質問が入った。
「お前は今、誰の部下なんだ」
「……」
動仁は口を結び、黙ってしまった。そして、その質問を流して、動仁は持論を話はじめる。
「ただ俺は、炎狐君に賭けている。次の風の六代目は彼になる。俺はそう思っている」
龍我炎狐。透の孫で今年で18歳になる。穏やかな青年だが少し考え方に幼さも残っている人物だ。そして、動仁を父のように慕っている。
「炎狐君かっ。……あの男と妹様の子供。お前にとっては生きる形見なのかもな、彼が」
太陽は過去に見た炎狐を想像で思い出しながらそう話す。
「本当は派閥など無かった。そして、昔はもっと自由だった」
動仁も過去の事を思い出していた。太陽と動仁の二人は昔から賭け事が好きでよく遊んでいた。それをいつも怒るのがテツだった。そして時々二人で互いに賭け事をすることもあった。
二人とも何となくだが生き方や考え方が近いと感じていた。
「ああそうだな。本当に懐かしい。五代目も妹様も生きていた。あの時代がまさに風の黄金時代だったな」
そして二人は料理を注文することにした。
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そして、30分後。二人は料理を食べ終え少し休憩していた。
「元気そうで良かった。そして、懐かしい話がお前と出来て良かった。だが太陽、最後に聞かせてくれ。お前の生きる意味は何だ?」
「……」
今度は太陽が黙ってしまった。そして、黙った太陽に動仁は続けてこの言葉を口にする。
「嫁さんも子供も失い、世間では『辻斬り』の異名が恐怖の象徴になった。本部の連中からは『裏切り者』と呼ばれ、長老様の呼び出し以外は本部を出禁になってしまった」
話していながら太陽に同情してしまった動仁は涙目になりながら力強く質問する。
「敢えてもう一度聞く。お前が今、生きている意味は何だ」
「俺も賭けているんだよ、サイコロふってんだよ。救われた命を賭けた、人生最後の大博打を……な」
サイコロとは正四角柱に一から六の黒丸が、書かれている箱みたいな形のやつである。
「それじゃあ俺もお前に聞く。今、何を目的に生きているんだ」
だが動仁は席を立ってお金を置いた。その様子を見て太陽は返事を聞こうと声を出すが、
「おいまだ……」
「案外俺も同じなのかもな、太陽と」
とだけ言って動仁は飲食店を後にするのだった。
次回『風の想い人』は9月11日に投稿する予定です。
9月4日は休みです。すみません。
これからもよろしくお願いします。




