二百二十話 次代の暗部
水の都義勇軍と治安維持軍の戦闘は激化していた。既に何百人もの死者が出ているが引こうともしない。ここの勝負に全力で懸けていることは明白である。
その中に一人の指揮官は奮闘していた。防衛課長のデントである。それでも減っていく味方に勢いづく敵に四苦八苦していた。
昔は良かった。失った過去の栄光と残った腐敗のせいで今自分が不利の状況で戦場に立っている。分かっているが甘い蜜を吸っていたのも事実だった。戦場で死ぬしか道はないだろうか。
思案するが前線は崩壊していた。
ー-------------
「第二陣放てー」
この掛け声は3回目。計6回魔法を敵に放つがなかなか本丸は落ちない。それもそのはず敵は『炎上のデンド』。水の都最強の指揮官の一人が指揮する軍隊は強かった。でも譲れないものがある。
「伏兵来るぞー」
右翼からそういう声が聞こえる。組織化した治安維持軍の部隊ではなく別動隊だった。掛け声の主は暗部には聞き覚えがある。蓮だった。
そんな彼の前に一枚の大きな結界が表れた。
「送られてきたのねー」
「久しぶりだな美羽」
別動隊を対処するのは『破壊者』の蓮と『結界師』の美羽だった。
「もしかしてあの軍は特殊警察なの」
「間違いないだろうね」
二人は仮面越しに目を合わせる。
「六代目の真意は聞いた?」
「聞いた」
蓮は地面に手を置いた。そして突撃してくる特殊警察のほうに向いて睨みながら殺気を放出する。
「命懸ける価値あり」
蓮はそう言うと地面に亀裂が走り出す。それは建っている建物にも及びこの戦闘していた場所にも及んでいた。バリバリと言う音とゴーと地鳴りもしてくる。
「地面破壊」
そうは言うが元々あったものに干渉する能力を持つ人はなかなかいない。そして蓮は一気に力を加えて崩壊させる。それに合わせた美羽は蓮の攻撃が当たっても壊れない結界を作り出す。
「さすが美羽だな。前にも思っていたがその結界は特別製なのか」
「ありがとう。それにこの結界を作るのに10年はかかっているのよ。それも対蓮しか使えない結界だし」
「そこまで研究してたのか」
その答えに美羽は満足げにうなずいた。木や建物が倒れた中、蓮は孤立した『発火師』を見つけた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』二百十八話は2月8日(木曜日)に更新する予定です。
次回もよろしくお願いします。




