二百十八話 君が嫌い私が好きになった剣
明けましておめでとうございます。更新が遅くなり申し訳ございません。本年もよろしくお願いいたします。
「もう、終わりだ」
今までのことを全て見ていた都市国家アクアストーム市長の水野玲はそう言った。信頼する十川正吾は暗殺され七塚二郎とデントは帰ってきていない。それに降臨した女神ですら責任を自分だとそういった。
「まだ希望はありますよ。あの手を使うのは嫌でしたが使いましょうか」
先代市長の水野薫はそう言った。だがその言葉は苦しそうで終わりだと自覚する。例えこの騒ぎを乗り越えた先には民の反乱か帝国サワバ・マジックの属国になるしか道はない。それなら帝国に着くほうが命が助かりそうなのは言うまでもなかった。
「よろしく頼むわよまさと」
「報酬は確かにいただくからな」
どこからともなく現れた男はそのまま影に潜んだ。
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雷が落ちた後すぐにドーンと言う音が聞こえた王国サイドと真の方は黒装束に身を包んだ人たちに襲われていた。
爆発音を囮に魔法で狙撃した後、剣で攻撃する。その爆発の爆風で建物一つ吹き飛んだ何も無くなった場所に真はいた。
「お覚悟を」
「あまり穏やかな話ではなさそうだ」
全身黒装束は暗くて見えない。ただ大物の人物がいる中で狙われたのはエミリーだった。
「あまり人前に出るのは好きではないのだけどな」
その後すぐに飛んできた魔法を完璧に防ぎ周りを警戒する真だが、レショット王子の方は護衛が多くいるが分断されていた。
真が抜いた剣は月の光が差し込んで鮮やかな銀色に光輝く。
「ここで死んでいただきます。お嬢様」
その声に聞き覚えがあるエミリーは黙った。父が送った刺客であり帝国の暗部。
今度は短剣を抜くと真に斬りつけてくるが真は弾いた。
「何故風の暗部が守っている」
「よく喋る刺客なことで」
真は目の前にいる男ではなく周囲を警戒する。少なくとも今見えている3人に魔法が打ち込まれてることからも他に1人いることは確定だった。
背後からエミリーに向かって炎の攻撃が飛んでくる。そのとき真は二発の横に長い2メートルくらいの斬撃を放った。
警戒してたからこそ刺客全てを炙り出すように逃げる範囲を限定する。だが正面の敵も間抜けではなくその隙に真の命を刈り取ろうと剣を振りかぶっていた。
「青は白と共に」
その言葉をエミリーが言った瞬間その刺客の目の前には縦4メートルと横5メートルの氷の壁が生成される。
「え……詠唱魔法」
最近、真は沙羅に教わって存在を知った魔法の概念を覆しうるその魔法はある単語を何組かで掛け合わせた時にしか使えない魔法。それも単語一つ間違えると不発に終わる詠唱魔法。
その理論はまだ確立しておらず沙羅は今後の研究対象と言っていた。
「世間の物差しで私は測れないみたいよ」
規格外ですと言っているようなものなのにどこか清々しくスッキリとした表情をしているエミリーに真は嫌な予感がする。そもそも世間の物差しで測れない化け物を何人も見ている真はあまり驚かない。
「私は貴方にこれからの人生を賭けようと思うから覚悟してね」
二人の関係を知らなくてもその言葉はまるでプロポーズに聞こえる。それはエミリーの覚悟を表しており顔は月の光でもわかるくらい赤く染まっていた。
「私は初めて会った時に振ったあの剣が好きよ」
そう。君が嫌い私が好きになった剣。弛まない努力を重ねて作り上げた無駄の無いその剣で私を守ってくれたあの日に一目惚れをした。
エミリーの迷いのない笑顔ですべてが物語っていた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』二百十九話は1月18日(木曜日)に更新する予定です。
次回もよろしくお願いします。




