二百三話 第一王子と敵対派閥の公爵令嬢との語らい
時成が出て行った後、レショット王子は張り詰めていた気持ちがきれていた。そこにエミリー・メナトが入ってくる。
「あんな取り引きしても良いの?昏睡してるかもしれないけど、国王様の許可なく勝手にやって」
エミリーはそう言った。それは盗み聞きをしていたとも取れる発言だった。
「親父のところに行かなくて良いのか?」
心でも思っていないことを口にするレショットにエミリーは首を振った。
「あんなゴミみたいな人間の心配する必要ある?生きているだけで害しかないのに」
「まだ消してなくて悪かったな」
そういうと二人は見つめ合って笑い出した。そして最初の質問に回答する。
「俺はもちろんお父様でも手が出せなかった案件に首を突っ込んだ挙げ句、手柄はこちらにやると言ってんだ、良いに決まっている。それに君の身柄の安全は保証してもらおう」
「そんなことしなくても良いです」
ふいっとそっぽを向くエミリーにレショットはまた笑う。
「当てはあるって顔だな」
「あの人に助けてもらおうと思ってね」
最近のエミリーの交友関係に心当たりがあるレショットだがその人物には心当たりがあった。仮に親が嫌いと言っても敵対派閥に父を持つエミリーには部下を使って常時見張っているからこそ知っている情報でもあった。
「本当、風の暗部は凄いな。こちらのことは何でもお見通しな感じがするよ。春風時成が信頼する部下っか絶対に右腕が来る。今の暗部隊長だ」
ある程度時成に好きにやらしてピンチになれば助ける。それだけで時成を信頼していることを言っているようなものだった。
「それは……」
まだ予想の中だとはいうことができないエミリーだったが否定もしきれなかった。
「それが俺に対する信用なんだろう。その日は多分、討ち入りになる。二人が死んだと言うことは娘の恨みを買ったんだ、風の民のグリーンアイの側近のうち冷徹回復能力者以上の才能を持っている女の恨みを買ったんだ、一つ言っておこう。余り噂を聞かない彼女だが部下によれば一種の化物だと言う報告も上がっている」
そこまで言って約束の場所が書いてあるところがエミリーは分かり口を押さえた。
「流しても良いぞ俺は10日後はこの国にいない」
ニヤッと笑ったレショットはエミリーを背に悪巧みをするのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』二百四話は9月21日に更新する予定です。また忙しなってきたので来週はお休みです。
申し訳ございません。
次回もよろしくお願いします。




