二十三話 これは予想通りか想定外か
遅くなりました。すみません。
これが冷眼の殺気
天将が話終えた瞬間、背筋が氷そうになるほど寒くなっていた。辺りはだんだんと暖かくなってきた陽気は失くなり、冬の寒さが体を走る。
その時正弥は天将の殺気にのまれて動けなくなっていた。
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「おい、邪魔だー」
「誰か、助けてくれー」
公園の入り口で少しずつ入ってきた人達はその言葉を聞いて後ろを振り向いた。だが驚きの余り口から言葉が出ていない。
それもそのはず、突如公園に現れた一頭の馬は飯田軍の中心で暴れに暴れ、その馬に振り回された飯田軍150人は、現在、混乱状態に陥って止める事が出来なかった。
そんな中、大暴れしている馬に先行部隊は慌てて何発もの魔法を放った。
その魔法の種類は炎や水、氷などの大小様々で暴れている馬を止めようと試みた。
だが、魔法は暴れ馬に当たる瞬間に全て軌道が馬を避けるかのように変わってしまった。
その光景を見ていた虹目は、暴れている馬に黒い人影が座って操っているようには感じた。
「はぁ……嘘だろ。何故ここにいて、貴様が介入してくるんだ」
虹目は、馬に座っている黒い人物の正体が、さっきの魔法が不可解な軌道に変わった時に全て分かってしまった。
その事に虹目が気がついた時には、大暴れした馬は公園の中央近くまで到達していた。
「何をしているーあの馬を殺せー」
軍とはたった一つ想定外が起こると長年訓練していないとすぐに足並みが乱れることがある。
だからこそ虹目がそう言うも大混乱になった軍の人達は、虹目の言っていることも聞かずに馬に対して距離を開け始め、この場所から逃げだした人もいた。
その隙を黒い人影は見逃さなかった。
「乗れ、弥生ちゃん」
黒い人影は馬の上から黒い影を纏った手を出した。弥生はその言葉に従い手を伸ばした。だが黒い人影の手は遠くにあり、届きそうにはなかった。
それでも弥生は手を伸ばすことを止めなかった。何故なら黒い影を纏った手は止まる事を知らずにずっと伸びて、弥生の手に到達する事を知っていたからだった。
そして、弥生の手は黒い人影の手と接触すると、自分こど影に取り込まれて、気がつくといつの間にか馬の上に乗っていた。
「えっ」
弥生がその言葉を言った時に多くの人がその事なか気がついた。だが時すでに遅く、馬は暴れるのを止め、弥生を乗せて公園を走り去っていく。
「生きろよ。お前は」
天将は、混乱している軍の人を少しずつ気絶させながら馬を背にそのようなことを言った。そして、二刀の刀を力強く握りしめた。
ここが俺の死に場所だ。影さん、娘を助けいただきありがとうございます
天将は何も報告もなしに、弥生を逃す事に協力してくれた影道に心の中でお礼を言った。その時だった。
「生きてー。お父さん」
馬に乗って走り去って行く弥生は、大きな声でそう言った。天将はこの10年、長老の透の任務を受けてこの場所で任務を行いながら、弥生の存在を隠しながら成長を見守っていた。
その隠していた事が今、この発言で飯田方にバレることになった。
天将は一瞬だけ複雑な気持ちになった。
ここで飯田に弥生との親子関係がバレるのは非常に良くないことだ。だがそんな事よりも天将の胸の奥底から熱い何かが込み上げてくる。
あいつは分かっていたんだろうな。自分がここで死のうとしていることが
天将は考えても仕方ないことだと思った。だが、それと同時に懐かしくも思ってしまった。
生きてっか。だったらまだ死ぬわけにはいかないな。
弥生が勇気を出して自分に言ってくれた言葉を心の中で言った。その一言は生きることを諦めかけた天将に深く突き刺さっていた。
「ああ。まだ俺は死ねない」
天将は再度力強く握ってそう呟いた。
次回『風の想い人』二十四話は7月23日に投稿する予定です。
よろしくお願いします。




