百九十九話 発言力がある老人
遅くなり申し訳ございません。
来週は小説を書く時間が無いためお休みします。
東堂真が去った部屋には剣を突きつけられていたためうっすらと血が流れ始めていた。
「水の都は何を考えているのだろうな」
「暗部に手を出すと言う余計なことを……。何を考えているんでしょうか?」
二人は思案するが何も浮かばない。それでも貰って、調べた情報から照らし合わせれば一触即発の状況になっているのは素人でも分かる。
「怒った『黒の殺し屋』が相手になるのはかなり不味いな」
「『属性剣士』は金城家、『氷結の姫』は生花家出身。幹部の年齢は似ていて同年に生まれた子供が4人。『緑の目』か『斬撃使い』か『回復能力者』か紗奈香と呼ばれている宰相だけ」
「能力は遺伝することが多い。それと仮に亡くなったのがあの暗部隊長の親なら自らここに来てあのような立ち回りはしないでしょうねそうなれば、高確率で宰相紗奈香になる」
「敵に回したのは『知略の魔女』だったってことかな」
紗奈香の性別と風の民での役割を知っているレショット・ジーナだからこそこのあだ名が言えたのだろう。ゲンゾウが首に包帯を巻いた後、本日呼んでいた男が到着する。
「おおー遅刻してしまったかいのー」
一人の老人が入ってくるその老人は腰が曲がっておらず腰には剣を帯剣している。それだけでただものではない人間だった。
レショットが座る近くには首に包帯を巻いているゲンゾウを見て笑い出した。
「小僧あれだけ油断は禁物だと教えてやったのに未だに治っていないのか」
「良い年になったおっさんに小僧呼ばわりはないでしょう師匠」
入ってきた人に対して師匠予備をするゲンゾウは首を触った。
「まあ孫から話は聞いているがそれでもお前は孫を守る立場にある人間じゃろ。今では『王国の盾』とも呼ばれているお主に誰がそれをしたんだ?」
「暗部隊長」
清々しく答えるゲンゾウに知っている知識を使えば老人の頭の上にはてなの文字が浮かびそうだった。
「奴はそんな芸当が出来るような人間ではないじゃろう」
がははと笑うこの老人の名前はゼロシュ・イネンナサール元公爵。当主を引退してからは帝国との小競り合いで大立ち回りをしたり指揮をしたり若手を育てたりと自領でやりたい放題。だが全てにおいて結果を出しているから文句が出なかった。
「二代目ですよ」
そう言うとゼロシュは黙った。
「二代目……か。奴は死んだのか」
「まさかバリバリの現役ですよ。ただ役目を終えただけです」
「役目……か」
まさに今の自分がそうだなとそうゼロシュは思った。彼が呼ばれた理由は春風時成訪問の件。今だ発言力が衰えないゼロシュからの提案なら平和に事が済むと考えていたが、『属性剣士』と『知略の魔女』が死んだのなら話が変わる。だからこそ打ち合わせは入念に情報を最大限集める努力をすることが大切だとそう思った。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』二百話は8月17日(木曜日)に更新する予定です。
次回もよろしくお願いします。




