百八十話 メナト公爵令嬢
「エミリーメナトってご存知ですか?六代目」
唐突に聞いて来たのは西支部長の美羽だった。
「メナト公爵令嬢でしたね」
「レショット王子の側近です」
それを聞いて顔が引き攣ったのはここにいる全員だった。それは彼の父はレショット王子と敵対し第二王子の後ろ盾になっていた。
「いつからでしょうか?」
「暗部隊長が指揮をして王宮の方を探り入れてますから私はざっとしか知らないですね」
そう言われて話が振られた真は答えた。
「5歳くらいからの長年の付き合いなのは確かだそうですが父親とは仲が良くないそうです」
真は暗部隊長の仕事を押し付けられる前までは貿易の護衛をしながら海外情勢の詳しいことを把握し、その後は任せている人からの報告を聞いたり抜け出したりして情報を集めていた。
そこに一人の女性がノックもなく現れると息づかいが荒いまま報告した。
「報告します。アイスジーナ王国にてサンザルト国王が倒れました」
「え?」
その報告はこれから最悪の出来事が起こる予測できたのであった。
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数時間前、アイスジーナ王国では最近疲労気味で調子が余り良くないレショット・ジーナが王国軍長椅子に腰かけて座っていた。2年が経った今、背も僅かに伸びたレショットだが元の顔の良さは疲れや目の下のくまによって台無しだった。
「あーもう俺は楽をして生きたいんだよ」
勝手に軍長の椅子に座り自分の仕事をしているのだがその軍長ゲンゾウ・ゴトウは治安維持のため王都を周回していた。
「そろそろ父が動きそうですよ王子殿下」
そう言うのはエミリー・メナト公爵令嬢。派手な金髪を後ろで一つに束ねた彼女の年は22歳メナト公爵家の長女だ。出るところは出てしまっているところは引き締まっているそんな身体つきは男を虜にしてしまうことで有名だった。おまけに顔もよく見目麗しいと言う言葉が一番似合っていた。
「この忙しい時に辞めて欲しいんだけどな」
「逆に忙しいから動くんですよ。平和な時に野心家は虎視眈々と標的のことを考えながらしかるべき時に向けて準備するものです。あの男は私には何を考えているか分かりませんから」
自分の父親のことをそう言うエミリー。それを見てふと思い出したかのようにレショットはある質問をする。
「そういや弟はどうしてるの?」
「ゲンゾウ公爵様の元で一生懸命に働いているらしいわよ」
「らしい?同じ建物に居るのにか」
隠そうともせずにそんな予想外の返答にいくら仲が良くてもそれが嘘か真実か分からなかった。
「もう一年以上会っていませんわよ」
少し浮ついた声で言ったが直ぐに治り平然と言い切るが内心では心配しているのだろうなとレショットはそう思った。
「何でメナト公爵が動くと予想した?」
「準備が整ったからお前は王子殿下を裏切れって指示が来ましたわ」
「それ俺の前で言うのか……複雑だぞ」
「あの男を父親とも何とも思ってもいません。殿下も忘れましたか?昔のことを」
そう思って思い出すとそれはとても苦い思い出が蘇ってきた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』百八十一話は4月3日(月曜日)に更新する予定です。
次回もよろしくお願いします。




