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風の想い人  作者: 北見海助
五章 動乱編
201/255

百七十五話 結婚式 前編

お久しぶりです。本日より月曜日と木曜日の週二回更新を始めます。今後の詳しい更新予定は活動報告を更新してそこに書いてあります。よろしくお願いします。

五章 動乱編 開始です

ゴーン、ゴーン。


多那箕田村にある教会の大聖堂の鐘の音が響くと共に新郎新婦は誓いのキスをした。その教会では待ちに待った『六代目』時成と弥生の結婚式。紆余曲折ありながらもここまでこれたことに実感している暗部の幹部が全員、涙を流して喜んだ。そのような幸せそうな式の中、「してやられた」と新郎だけは不服そうだった。


ー-------------


結婚式の一か月前の6月4日。定例幹部会議が終わった後のことだった。時成が退出した後、紗奈香が急に魔法陣を展開してその場所には弥生が居た。


「皆様に一つお願いをしたく参上しました。少しお時間をいただけないでしょうか」


丁寧な言葉と深々と頭を下げた。この二年一番変化が大きかったのは弥生だ。気がつけば余り主張していなかった胸が意識すれば目に留まるほどに主張していた。服は上下黒の暗部お決まりの服だ。


「まぁ良いが」


そう言うテツは立ち上がっていたが席に着席した。それを見て他の幹部の面々も着席する。


「六代目との結婚式の手伝いをしてください」


事前に話を聞いていた紗奈香以外はその言葉の重さに全く気がついていなかった。ただテツは少し嬉しそうにしていた。


「失礼ですが、我々に言われても手伝うことは少ないと思いますよ」


成長期に入っているのだろうが雨墨光明は全く背も伸びず髪の色も変わらず白だ。


「要人を招きたいのと式をあげる場所で良いとこはないのかと案を聞きたくて」


その言葉を聞いた時他のメンバーの目の色が変わったように感じた。成功すれば名誉な事であり失敗すれば何もかも失うかもしれない賭け事だがそれでも挑戦する価値はあった。だが簡単に推薦が出来ないのも事実であった。外敵の問題や治安の問題。そこまで要人を呼ぶには整備が不良が目立つ道がある領もあった。


「ちょっと聞きたいんだが、弥生……プロポーズされたか、したか?」


確認程度で聞くテツに弥生は少し恥ずかしそうに返事した。


「ん?……まだですけど無理やり……ね」


目の中がハートの形に変わっているような感じだがその言葉を聞いて暗部隊長と宰相以外に冷や汗をかいた。嫌な予感がすると感じていた。


「え?聞いてないけど」


幹部会議に参加させてもらうことの事前に打ち合わせしたはずの紗奈香が弥生の目を捉えた。弥生は少し目をそらした。そして言い訳する。


「時成、最近相手してくれないもの。それに皆様のおかげである程度安定してきているって情報聞いたしまだ今平和だからするなら今しかないと思ってね」


それはそうだなと全員が納得するが急に結婚式の話が怪しくなった。


「案だけ聞いても良いかな」


紗奈香の質問に堂々と答える弥生に結婚式の話に色々と狂っている要素があることは共通認識になった。それでも断れない幹部は少し考えて了承した。


「やるだけやってみましょうか」


そう言って解散した。

ー-------------


それもそのはずだった。事件が起こったのは当日の7月4日のことだった。


時成は朝目が覚めると弥生は居なくなっており置き手紙が残されていた。


私の気持ちを何も分かっていない。もう待ちくたびれちゃった


ただその言葉だけが残されているだけだった。焦った時成は家中を探したが弥生はどこにも居なかった。仕方なく仕事に置き手紙だけを持って来ていた。だがそんな今日の会議は突然に幹部全員が急遽予定が入り参加者が一人も居なかった。


その手紙と幹部が来ていないことで初めて時成はこの二年間のことを振り返った。改革をしていながら調子が悪いところは修正する。その改革の結果が見えて時成の支持地盤が六代目の手腕を認め始めたのは最近のこと。それまでは忙しい日々を過ごしていた。プライベートの時間など削りに削って仕事をしていた。


「これはヤバイかも」


ポツリと時成は言葉を吐いた。そう思いながらここ数日のことを考えていた。普段よりも会話が多かった弥生との言葉のどこかにヒントがあるはずだ。色々考えた結果時成は結論に至った。


「多那箕田村にある教会か……」


一つは子供の話、もう一つは結婚の話。弥生は式を教会で挙げたいと言っていた。そう言われて時成はここ最近領内にある教会を探していた。


「正解ですよ六代目」


自分の背後から急に声が聞こえてきた。そこに現れたのは良正だった。それも普段着ないはずの黒いスーツ2年で背が伸びて170センチくらいまで成長した。かと言って自分の背の成長はもう止まったと言ってもよかった。


「良正か。出て行かれたよ」


「普段の生活を考えれば当然のことでしょう。女将さんはずっと我慢なされていました」


執事にも見える良正だが言っていることは主に反逆と取られてもおかしくはないが時成はため息が出た。


「言われてもしょうがないがなんか弥生らしくない気がするんだよな。何か知っているか?」


「さぁー……末端には何も」


彼が末端の人間なら計画を知っている人間などほとんどいなくなる。黙っていることには間違いないとこの返答で確信した。だからこそ彼が言ったことは信用できると勝手に思った。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百七十六話は3月16日(木曜日)に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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