百七十四話 蓋突村視察
水無村から出た時成は午後4時くらいには蓋突村に到着していた。ある程度復興したがそれでも飯田と衝突して支配者が変わっていた影響もあるのか戦場の跡が残っていた。
まだ半年くらいしか経ってないはずなのに時成は懐かしい記憶が思い出す。蓋突村の攻防も弥生を攫われたこともあった。
「お久しぶりです。六代目」
出迎えたのは白髪赤目の当主雨墨光明。相も変わらず全身に魔法を纏っているが自身の上には黒いものが浮かんでいた。
「初めて会ったときよりも症状がましになっているな」
「沙羅さんには色々魔法を教えてもらいました。おかげで外にも出ることが出来るようになりました」
「それは良かった」
そう言った時成は案内されて執務室に入った。そこもかなり質素ではあるが書類の山が全くなかった。
「蓋突村は復興が第一でまだまだ終わっていません。それに空き家も多く調べた限りでは今が一番人が少ないみたいです。それに合わせてですが追加の援助が欲しいです」
当然だが公金で援助のために使用されたお金は記録する。それが怪しかったら暗部の監査が入り、黒なら摘発される。
「幹部会議での承認がいるから議題に出しておく」
「ありがとうございます」
その執務室に沙羅が現れた。転移魔法陣で来たのだが二人は驚くことはなかった。
「昨日指示されていた件ですが、既に旦那が危機感を感じて動いていましたので後で書類を渡します」
耳元でささやいた沙羅に時成は頷いた。そして最速で足元で魔法陣を展開して転移して行った。
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夜にかけて蓋突村を視察した後に沙羅が迎えに来て中央支部に来ていた。
「久しぶりー」
中央支部に出入りしている父親と同じ年ぐらいの暗部の人達から馴れ馴れしく話してくるがそれも気にならなかった。
「六代目。この資料を見てください」
隊長の執務室の前で背後からそう言われて誰かと思えばソーキだった。
「早めに動いてもらって助かりました」
「色々と気になってましたからね。因みに名簿に名前と職業が入っていますがほとんどが転勤の扱いになっていました。もうこの国に居ません。見て貰えれば分かりますが飯田家と距離が近い会社だったり飯田のスパイと疑っていたものも中にいました」
「確認しておくよ」
そう言って時成は執務室の扉を開いた。そして中に居た真と今後の打ち合わせをしてから後にした。
そして忙しい日々を過ごしながら気がつけば2年が過ぎようとしていた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』百七十五話は3月13日に更新する予定です。活動報告の通り一週間休ませてもらいます。3月13日からは月木曜日更新をしていく予定です。本日の更新分で四章は終わりになります。また作者が年始の時には想定していないところで四章を終わっていますので五章の終わりまでが残り0.7章分だと考えてください。それと六章では完結まで書ききろうと思っています。
次回もよろしくお願いします。




