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風の想い人  作者: 北見海助
四章 革新編
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百六十八話 密談を終えて 風の民サイド

レショット王子と会談してから2日経った。溜まっていた仕事をある程度片づけた時成は中央支部に来ていた。執務室の扉を開けてからテツは立ち上がり出迎えた。


「仕事は終わったのですか?」


そう聞いてくるのは暗部隊長のテツだった。暇そうにはしていない暗部だがこと隊長に限っては最近暇を持て余していた。そのおかげか散乱していた机の書類や床に置かれていた荷物などがきれいに整理されていた。


「まあ一応ですが……。それよりもテツは仕事しなくても良いのか?」


もしかして逃げてきたな


何か隠していそうな言い方をして更に話題を変える時成の発言に  今テツの考えていることが当たっていることを肯定しているようなものだった。


「今接待と言う仕事をしてますよ。それとも俺が暇なのは六代目的にはよろしくないのでしょうか?」


「良いや。暗部が暇だと言うことはそれぐらい()()平和だと言うことだからな」


そう言いながら時成を来客対応の机と椅子にある場所に促して彼が座ったのを確認してからテツも座った。そして彼の疑問にテツは答えた。


「若の六代目就任をきっかけにうちも改革が必要だと唱えているんです。今暇なのはその成果ですよ」


「ん?改革……初耳ですよそれ」


意識して変えている口調が急な事を耳にして素の時成が出てくる。それくらい驚いたことだった。そもそもこの組織は『五代目』が作った組織である。五代目が欲しいと思った人材にテツ達が考えて実際に運営しながら試行錯誤を繰り返し重ねながらそれと同時に成果も他の組織とは比べ物にならないくらい上げている。そんな組織にもまだ改革が必要だとは時成も思ってもなかった。


「何時までもこの体制では良いものも腐りましょう。時代に合わせなければ鮮度が高く信頼できる情報も手に入れるのが難しくなりますからね。だから改革に手を出そうと考えました。それに隊長の席を引き継がせえようと思いまして」


「人事権は一応俺が持っていますけど」


「次の隊長の席を真に譲ろうと思いまして、無理……ごほん色々調整してました」


「今無理やりと言う言葉が聞こえてきたが」


「誰も隊長をしようとやる気がある人間が居ませんのでね」


この場合のやる気とは口を上手に使いながら領主や大臣各と渡り合いながら自分たちにとって有利な条件と利益をもたらすことが出来ること、上がってくる情報を精査しながら人配置や方向性を決めて気難しい暗部の人達を動かすことをすることを指している。


「テツさんを見れば誰もやりたがりはしませんでしょう。特に暗部が商売やら交渉やら密偵とすることが多すぎるのにも関わらず管理する人が少ないですからね」


「まあ効率化を求めたいですが機密が多く幹部ぐらいしか触らせれないのが難点ですよ。幹部にしようとしても立場を拒否するもんですからね。それに暗部は自由主義。ある程度は指令を出しますが結果が出ていれば文句は言いませんからね」


「結果を出すのなら構いませんよ。俺がそう言う人間だと知っているだろう」


「ええ。小さい時から見てきましたからね。でっどうでした六代目。王国は?」


話を変えるのが急だが時成は構わずに返答する。


「レショットが国王になるのなら確実に王国は革新路線に変わると思う。実際に会って話してみて確信した。だがレショットも問題を抱えているからな」


「メナト公爵の件ですか……その言い方でしたらうちが握っている情報はほぼ間違ってはなかったのですか」


「大まかはな」


「なら仕事した人達も喜ぶことでしょう」


「そうですね」


二人の会話はそこで途切れた。そして執務室の扉が開いた。


「数日ぶりですね。隊長」


「2日ぶりだな、宰相殿」


この二人は時成の護衛の代表者2名であり王国の密談場所にもいた。


「やめてくださいよ。今はその立場で来ているわけではないですから。それに貴方に敬われるくらいなら親に怒られる方がましですよ」


「それよりも六代目。弥生ちゃんがずっと探していたけど何かした?」


「いやー忙しさを理由に弥生の為に時間を作れて上げれてないことぐらいしか心当たりないけど……」


それを聞いたテツと紗奈香は二人は顔を見合わせた。そして同時にため息を吐いた。


「なるほどそれでっ……か。最近の弥生ちゃんイライラしていて殺気が駄々洩れだったから、みんな怒られるのかと思って恐れ恐れ仕事をしていてすごく効率が悪いのだけど」


「そんなに本部で弥生の地位が上がっているのか」


本部で仕事をしている時成だがそのような事になっていたとは全く知らなくて驚いていた。


「色々な場所に顔を出すようになったからね。それで影響が出ている訳。一目置かれているし最近では時成の嫁になるのだから女将さんなんて言われてさ」


羨ましそうに言う紗奈香だったがこの話を聞いて益々弥生の機嫌を取らないと不味いと思う時成は少し顔色が悪くなっていた。それを言う紗奈香は相手が居ないので羨ましい思いとまだこのままでも良いなとの思いが半分半分くらいだった。


「紗奈香。レショットから王国との交易のルートとかを考えてくれ」


話題転換のついでにレショットとの話し合いで出たことを提案する。


「赤字覚悟で良い?」


それも分かっていたことだがやっぱりかと時成は思った。


「まぁそこは王子との交渉次第かなって感じだな」


「なら、とりあえず考えとくね」


「よろしく頼むよ」


そう言って会話を終えた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百六十九話は2月16日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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