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風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
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十九話 原点の約束

「何してんだよぉー。今、良いところなのにさ」


割り込んで入って来た男の子に、正弥は苛立っていた。


「もう一度だけ。その手、離せよ」


「お前、俺に勝てると思っているのか」


正弥のその返答に男の子は笑って答えた。その男の子は当時5歳だった、時成。普通に喧嘩をしても歳上の正弥に勝てるわけがなかった。


だから、正弥は時成に殴りかかった。だが時成は正弥の方を見たまま動くことはなかった。


「やめてー」


弥生の悲鳴が辺りに木霊するのと同時パンという音がそれを追いかける。弥生は時成が殴られたと思っていたが、倒れたのは正弥だった。


「どうして……」


たった一撃の時成のカウンターパンチが正弥の腹部に直撃していた。そして時成の瞳は透き通るほどに美しい緑色をしていた。


助けてもらった弥生は何故か時成の瞳に見とれていた。


「体が熱い。でも、弥生。大丈夫か」


「う……うん」


話しかけられた弥生は、はっと我に帰った。


「返ろ」


時成は弥生の手を繋いで公園から走っていなくなった。時成は気がつかなかったがその時の弥生の顔はりんごのように赤く染まっていた。


「約束して」


数十分走っていた二人は、息が切れてきた弥生の言葉で走るのを止めて立ち止まった。


今いる場所は寂れた商店街、『雲の扉(くものとびら)』の首都魔京側の入り口が遠くに見えている場所。


約束の内容が一切分からない時成は弥生が時成としたい約束の詳細を聞くことにした。


「何の」


と。


二人は幼いながらその言葉の重さは知ってた。その理由は二人の父がよく言っている言葉があった。「約束とは命を賭けてでも守るものだ」と。


「私を守って」


弥生の純粋な黒い目は、時成の緑の目を捉えていた。そして、時成は口元に笑みがこぼれた。


「俺が近くにいる時はな」


その時成の言葉で約束は成立した。裏切られて当たり前の約束を。そして、これからこの約束が二人を縛るとも知らずに。


だがそんな先を知らない二人は笑っていた。


―――――――――――――――――――――――――――


時は戻り、妖力を集め終わった弥生は、能力を発動していた。


かつて禁忌とよばれたが、死ぬような致命傷でも治すことが出来る技があったと父から聞いた。それが出来たのは『世代最強回復能力者(ヒーラー)』だけ。でも、これから先に時成の助けになるためには、私はそれに挑戦するしかないの


弥生は手のひらに集めた妖力を全て回復能力として使うエネルギーに変換する。


回復(ヒーリング)


小さな声で、言うその技をあの日約束した自分から時成への思いを込めて、時成に使用する。


その技は、回復(ヒーリング)の上位互換の上位回復(ハイヒーリング)に変わっていた。


手のひらから無数の光が放たれると同時に弥生は、体に力が入らなくなりベットに倒れてしまった。


上位回復(ハイヒーリング)回復(ヒーリング)と違い、治せる範囲が少しの怪我。回復(ヒーリング)が例えば捻挫とか突き指とか、1ミリ位の浅い傷に対して、上位回復(ハイヒーリング)は、骨折から5センチぐらいの深い傷まで治せる。


だから代償で使う妖力が大きく、その妖力が体に少ししか残らなかった弥生は妖力不足で倒れてしまった。


「んっ」


弥生が倒れたその後すぐにベットの上で気がついた時成は自分の胸の上で寝ている弥生の姿が、目に写った。


少し驚いた時成は、左出田からうけた痛いはずの傷が痛くなくなっていた。


俺の怪我が治っている。


その事から察した時成は、何も言わずに目を閉じていた。そして再び眠ってしまった。

次回『風の想い人』二十話は、6月18日に投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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