百六十三話 興味を持つ人
明けましておめでとうございます。今年の目標は『風の想い人』の最終話を更新することです。因みに残り後約1.7章ぐらいあります。今年もよろしくお願いします。
人々は、次に狙われるのは自分ではないかとその場所を離れようとする人で広場は人が入り乱れどんどん押し出されるように逃げて行った。ただその場所から動こうともせずじっと人の動きを観察する人がいた。
「居なくなったと思えばこんなところに。帰りますよ」
路地裏で眺めていた少年は仮面を被っている人に連れていかれそうに腕を持たれた。その瞬間、路地裏に抜ける男とすれ違った。
「今の時代に合わせた昔のやり方も捨てたものじゃないだろう」
その言葉を聞いて心臓の鼓動が早くなる。少年も大人の人もどちらもこの人が基本的に表ではなく裏で生きる人間だと言うことが分かった。それも言い方的に今回の騒動の犯人である可能性が出てきた。
「場所と条件によってはその場合もあるでしょうね」
少年は冷静に低く話しかけてきた男にだけ聞こえるかのようにそう言った。
「いずれまた会う機会があるでしょう。出来れば味方同士がありがたいですけどね」
そう言うと話しかけた男は路地裏から消えていた。
都市国家アクアストームの人々の理想は打ち砕かれた。後の歴史研究家はこの事件のことを『革命家消去事件』と言われるようになる。
そんな彼は直ぐに隠れていた仮面の男が再び現れた。
「彼が『水の都の番人』です。若」
若と呼ばれた男はただ男がいた場所をずっと見ていた。
「殺せと言えば出来る相手か?」
「それがお望みならば。ですが成功確率はかなり低いでしょうね」
そう言うと二人は影に隠れて行った。
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時間は少し戻り都市国家アクアストームの選挙が始まった2日目に南西支部では我儘を言う時成が居た。
「背布の演説を聞きたい」
既に都市国家アクアストームの中に入っている時点でかなりの無茶をしているのに更に我儘を言っている時成を全力で止めるのは南西支部支部長の蓮と影道だった。
「いやいや六代目今回ばかり演説を聞きに行かないでください。そもそも女将さんには面倒臭い案件になるかもしれないと言っていたのではないのですか」
「聞いていたのですか……」
「いえ、弟子が聞いていたのを聞いた話ですけどね」
影道も必死になって時成を止めようとする。
「ですから今回の選挙はいつもと違う」
「支部長が言うからこそ俺は『歴史が変わる瞬間』をこの目で見たいんだ」
自分がしたことを他人視点から見て見たい時成はそう希望する。それは二人は否定することは出来ずらくなった。自分たちは目の前の主になった若君のその姿に高揚しこれからの未来を期待したからだった。
「気持ちは分からなくはないですが支部長としては止めなければなりません」
今ここに居る立場でもし時成に何かあれば自分の首と共に風の民の未来はまた暗くなるのは分かっていた。
「蓮。諦めろ。意志の強さは五代目以上だ」
そう言いながらテツが諦めたように話に入ってきて、その言葉を聞いた時成の目が輝いているように見えた。そして事件当日につながっていく。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』百六十四話は1月12日に更新する予定です。
次回もよろしくお願いします。




