百六十二話 都市国家アクアストーム『革命家消去事件』
それから少し月日が流れて5月になった。都市国家アクアストームでは数年に一度の市長選挙がある。そして今年はここ20年以上いなかった現政権と対立する立候補者が今年は参戦した。
彼の名前を背布仁。現政権を批判し今までの政権やあり方を改善しなければいけないと言い持論を述べ選挙に臨んだ。
初日からその勢いは凄く彼の演説には多くの人が聞きに来てその内容は人が人を呼んで拡散していく。今の政権は歴代の独占政治を引き継いでいた。この政権の疑問に多く民はたどり着いてしまった。今まで当たり前だと思っていたことは他国では当たり前ではないと民は気がついたそれを批判する。それと同時に背布に期待が湧いてくる。
2日目、3日目と演説を聞く人は倍増していった。そんな演説は聞きに来る人などあまりいないだろうと始まる前では想定していないような人々が演説を聞きに来ていた。
それと同時に大きく変わろうとする人を見ればそれを面白く思わない人々もいる。それは現政権の跡を継ぐ水野玲だった。こちらは日に日に演説を聞く人が少なくなっていた。
「くそー」
3日目の演説を終えた玲は苛立ちを隠せなかった。目に見えて人が減っていくのが分かり罵倒されないだけましだと思えるようになってきた。
「指示してもらえればいつでも行けますが」
十川正吾が意味深にそう言った。
「なら構わない殺ってくれ」
それは背布を消す。殺せと命じた。そして十川実行する。因みに水野薫は彼の応援演説をするがもうすでに政権に対して直接的な事は避けていた。
4日目。w183年5月4日。この日事件は起きた。この日の背布の演説は水の都とアイスジーナ王国の国境に跨る橋の近くの広場だった。
演説を始めるとき聞きに来た民は広場に入りきらないほどいた。そして午前11時演説が始まった。
「久しぶりにこの場所に来ました。何も変わらないこの場所を見て変わらないことも良いのかと思います」
あれっこんなことを言う人だったっけ。多くの人は疑問に思った。
「だが変わらなくても良いことはこの場所だけかもしれない。変わらなくても良いのは今、そして今後生まれてくる未来の子供たちの生活がより良いものになった時だと思っています」
その言葉を聞いてこの人の想いは変わらないと民は安心する。そう言って多くの人を見回すと人々は途端に拍手をし始める。
息を吸って吐いたとき背布は路地裏で自分を見つめる人に気がついた。一瞬目が合ったと思ったらその男の目は緑色に見えた。だが気にすることもなく演説を続けた。
「民のことを顧みない。自己愛で保守的では我々の生活が豊かになりません。ですが私は違う。必要以上の税を無くしたり下げたりしながら民の生活を豊かにしていく。そうすれば減らした分の税は増えていくそもそもそう言う仕組みで出来てあるのがこの税金だ」
背布はそう演説する。どうも民層の受けは良さそうだった。そう言い切った瞬間空から攻撃された。
ドン、ザッ、ボオー
上空から一直線に魔法が放たれて背布に直撃した。当然だが結界魔法を張っている場所での演説だった。それを貫通する威力の魔法が放たれたことになる。
「歴史は繰り返されるのか」
晴天の中被害者が演説していた路地裏でこそりと眺めていた少年はそう言った。
その魔法は氷と炎の魔法だった。詳しくは初段の氷魔法で心臓を一撃してから証拠隠蔽のために炎魔法で氷を解かす。亡くなった原因が炎魔法の直撃を食らったかのように見せかけるために。
攻撃を受けた背布は直ぐに前のめりに火に焼けながら倒れた。そして演説を聞いていた人達は混乱し始め一斉に彼を助けることもなく離れ逃げていく。それはこれからの自分たちの未来を現しているかのような事件。変わることのない支援者、権益を持っている人達の今後の繁栄が世代が変わっても保証されたそんな事件だった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
今年は小説コンテストの方に参加させていただきました。余り話す機会はなかったのでここで感謝を申し上げます。ありがとうございました。
さて今年ですが個人的には飛躍の年になったと思っています。コンテストきっかけに多くの人の目に留まり『風の想い人』を読んでいただけるようになりました。読んでいただきありがとうございます。ですが反省することは多くあります。予告している更新の時間や予定に間に合わない、Twitterするとか言って途中で辞めました。そして、三章入ってからは作ると言ったストックは多く作ることが出来ず、更新するのに手一杯になってしまいました。
それと謝罪ですが、年明けからの週2回更新はストックが足りず出来ません。申し訳ございません。もうすぐ一度区切りがつくのでそれから1週間休みを貰って週二回更新を始めます。
次回新年一話目、『風の想い人』百六十三話は1月5日に更新する予定です。
急に寒くなりましたが読者の皆様もお体ご自愛下さい。来年もこんな作者、『風の想い人』もろともよろしくお願いします。よいお年をお迎えください。
北見海助




