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風の想い人  作者: 北見海助
四章 革新編
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百六十一話 帝国からの使者

薫がそう言われて通された応接室には一人の軍人がいた。白髪が少し混じってはいるが髪を後ろで結い、無精髭を蓄えている。年齢を感じさせない筋骨隆々のそんな男。


「名前も伏せられる使者は貴方でしたか。バロ・ジアス将軍」


帝国皇帝からの覚えも良い彼が今都市国家アクアストームに内密で来ていた。


「えぇ。だから伏せさせてもらいましたよ。水野さん。陛下から親書を預かっています」


薫は親書を貰い中身を見て少し目を大きくした。その後は一文字一文字確認しながら文を読んでからバロに質問する。


「書かれていることは本当よね」


「ええ。勿論」


バロの少しつり上がった鋭い目は薫の目を見つめながらはっきりとそう言い切った。それを聞いた薫は頷いた。


「皇帝にお礼を代わりに言っといてもらえるかしら」


「了解した」


それを言い終わった後バロは少し黙った。広い応接室には息をする音もなくとても静かだった。そしてバロは懸念事項を思い出して話始める。


「くれぐれも油断しないようにお願いしますよ。この世の中想定していないことがいつ起こるか分かりませんからね」


本人の名前をぼやかして言うバロに対して薫は名前を言い切った。


「飯田正則じゃないですし油断なんかしません」


「なら大丈夫ですね。これ以上同志が居なくなるのは悲しいのですよ。政権交代してもお互いに仲良くしましょう。それでは」


全く悲しいという表情や声色ではないがそう言うとバロは出て行った。


ー-------------


一方そのころここは首都魔京より10キロしか離れていない、都市国家アクアストームの大陸領土のとある場所では……


「いくら何でも我々のことを考えてなさすぎる」


「もう我慢できない」


都市国家アクアストームに不満を覚えている人達や自分たちが生きる国を良くしようと考えている人達が多く集う場所だった。


「まぁ待て。もうすぐ市長選挙がある。俺はそれに立候補する。正攻法で解決が出来るならそれで構わないと思っている」


「リーダー」


そう呼ばれる男は厳しい表情をしていた。彼の名は背布 仁(せぬの ひとし)。元組合課で副課長を務めていた43歳の中年だった。彼は立場的に多くの商業関係の人と話をする機会があり今の政権に疑問を抱きついには政権を批判するまでに至った。


「それは貴方の身が危険にさらされるのだぞ」


そう言うのは根木沼 常伝(ねぎぬま じょうでん)。彼は元組合課で背布の部下の一人だった。反政権組の半分は根木沼の元に集まったグループであるが背布はそれを含めても信頼関係を構築して上に立っていた。ただ二人の違うところはカリスマ性か信頼関係かの違いだけだった。


「それならお前がこのグループの跡を継げば良い。俺がやる正攻法が無理ならお前はどのような事をしてでも腐敗しきった政権を倒して、民の為に政治をすればいいさ」


「貴方は我々の為に犠牲になるっていうことですか」


「簡単には死ねないさ。それに犠牲に何かならない。死ぬと分からないかもしれない。まだこの国がまともならな」


薄い希望を抱いているが随分昔に選挙に立候補した人がいたが選挙の改選前日に不慮の事故によって亡くなっている。蓋を開けて見たところその時選挙で勝っていたのは亡くなった人だったとか。それを見て水野薫は選挙に繰り上げ当選した。


「じっくり時間をかけ自分達の主張を民心に納得してもらえれば勝機は見えてくる。お前は何があっても焦るなよ」


それを言うと背布は出て行った。






ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百六十二話は12月29日に更新する予定です。

今年の更新は残り1話です。

次回もよろしくお願いします。

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