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風の想い人  作者: 北見海助
章間 七美の軌跡 青年期~『雨の十五夜』
176/255

章間23話 退却戦

撤退する時の殿をどの部隊にするかを決めるとき五代目はこう言った。


「全ては帝国軍を甘く見積もった私の責任。死んでも構わない」


多くの人が死に退却を余儀なくされた。だが大将自ら殿を務めるのは以ての外だと言う意見もあるがそれを有無といわさずに風の民軍は退却を始める。


「ほんと貴方達は狂ってるわよ」


そんな殿に残るのはソーキやたくを筆頭に残る暗部結成の初期メンバー。普段は剣を持たない人も多くいるが鍛錬は欠かさずにしていたと余り七美の前で自慢する人たちはいないがこの日に限っては違っていた。


「そりゃ、貴方に見出されたメンバーです。恩を仇で返す奴などいないでしょう。そんなことをして見れば夜、『影の執行人』が現れてすぐにあの世にいくでしょう」


ほとんどの人が逃げ、身内だからこそこんな冗談を言える目の前には帝国軍の旗が約20本見えてくる。


「全員適度に攻撃しながら退却する」


一番練度が高い部隊が過去一番危険な任務になった。徐々に退却する暗部メンバーを追い、途中で魔法を撃ちながら必死に逃げて行った。脱落する人はいなかった。その要因となったのは効果的に魔法や結界を使った結果なのかもしれない。


そして夜になり追撃がやんだ七美たちは交代で見張りながら休息を取っていた。


「遅い。どれだけお前たちを待ちわびたと思ってるんだ」


「すまん。任務が長引いた」


アイスジーナ王国に支部を作る準備をしていた太陽は報告を受けて帰ってきた足で戦場に向かって今到着した。


「遅いんだけど……」


文句を言う七美だがかなり疲労しているのが見て取れる。戦闘時の返り血は浴びているがそれを落としていていたことに太陽は気がついた。


「浪花絶人が主力で追ってきているの。もう惨敗だけど、悔しい。奴に一矢報いたい」


「余り無茶をしないことだ」


体力の限界を超えていた七美は直ぐに眠ってしまった。それを見てから太陽は動き始める。


「影」


誰も人が居ないはずの場所に影道が現れる。それが暗部の中では当たり前のことで誰も気にはしていなかった。


「すまないな。五代目はああ言っていたが完全に俺の作戦ミスだ」


今回現場で作戦を立て暗部の部隊を指揮していたのが影道だった。だが太陽は首を振った。


「結果論なんかはあまり気にしていない。ここからどう動ければ五代目の要望に応えれる?」


暗部の中で作戦を立てるのはテツか影道の二人だけだった。


「ここから約1キロ後方に野営陣地がある」


「強襲に賭けるしかないな」


太陽はそう言うと影道と共に消えていった。その後1時間後には二人で帝国軍を強襲して追ってを半壊させ味方の魔法で炎上させていた。


翌朝。七美が太陽の姿を確認できた時、彼は血みどろになりながらそう言った。


結論を言えば夜の強襲により追撃車4000人に対して約150人を殺し、1500人程度逃げさせて浪花絶人は太陽の攻撃で左目左手を失い完全に戦意を下げることに成功した。


「結局奴を殺すことはできませんでした」


「良いよ。指示していてだけど生きていたことが一番嬉しいから」


七美はこの戦争期間中で一番良い笑顔を見せながらそう言った。それからは帝国の追撃が来ずにスパイン要塞に帰ることができたのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』章間24話は11月1日に更新する予定です。

本編百五十四話は11月3日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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