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風の想い人  作者: 北見海助
章間 七美の軌跡 青年期~『雨の十五夜』
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章間21話 裏切りの浪花絶人

アイスジーナ分断戦争から暗部が帰ってきてサンザルト・ジーナ国王が1月1日に即位した。その20後の1月20日。中央支部の医務室で春風時成は多くの人の未来への希望と共にこの世に誕生した。


「貴方の名前は春風時成。時と共に成長し立派な人に成るように。私と太陽がそう想ってつけた名前よ」


泣いている時成や二人を見ている人達に七美がかけたこの言葉は多くの人の心に刻まれることになる。


「若様誕生を祝い、カンパーイ」


暗部の中央支部では結界が張られた中暗部メンバーが騒いでいた。それもそのはず七美の子供の時成が生まれてから約一週間。皆が皆時成を見て今後来る安泰で明るい未来を想像し喜んでいた。


「皆注目。今までは幹部くらいしか余り言っていなかったけど、今後は自分の後継者を育成してね。忠誠心が高い子たちが前線に出れるようになれば人手不足が落ち着きます。それと時成や他の子達の為に動いて欲しい。この子達が風の未来を支える存在になるはずだから」


その前に生まれた真と紗奈香に後に生まれてきた弥生を見て、自分たちが頑張って仕事してきたことが間違っていなかった。今後も明るい未来が待っている。誰もがそう感じ今後の未来に期待していた。だがすでに不穏な空気は流れ始めていた。


それから約半年後の9月10日の深夜。事件が起こる。本部の一室では浪花絶人と椿がいた。


「な……ぜ。貴方が私を……刺すの」


短刀を持っていた絶人の手から先は真っ赤に濡れていて服には返り血がついている。刺された椿はそう言いながら後ろから倒れた。


「俺の思う通りにならなかったからだ」


そう言い残して絶人は去って行った。


その次に絶人が向かったのは中呂村と多那箕田村の領境付近にある木製の大きな家に来ていた。その家は宰相呉の屋敷だった。


「お前はもう終わりだ」


それから絶人はタイミングよく帰ってきた千愛音と娘の弥生を交戦しながらも殺害した。


ー-------------


事態に気がついた七美は二人の死体を眺めて近くにいた天将に話しかけた。既に暗部は犯人を捜し動き出していた。


「なんで呉さんや千愛音が殺さなければいけないの」


涙を流しそう言う七美だが一番悔しくて憎いのは天将だと思った。そして七美は指示を出し始める。


「浪花絶人を指名手配して、見つけたら殺すことを許可する。悲しいけど皆が分かっていたこと。それにこの後何をするのかが大切だと呉さんならそう言うだろう」


五代目権限を使う七美に何も言わず頷いた暗部は捜索班に追加の伝礼を出す。ただ天将は俯いて腕の中に居る弥生を見ていた。


「うぁーん」


天将の腕の中で泣く赤ちゃんは生後半年の弥生だった。多くの人に囲まれて怖くなったんだろう弥生は泣き始めてからはずっと泣くのを辞めなかった。そんな弥生を落ち着かせながら天将は口を開けた。


「あの時うっすらだが弥生には千愛の力が体に纏っていた。多分使ったんだと思います。それにこの時間まで残っているという事は……これだけの力があれば自分も弥生も助かることが出来たはずなのに……」


仮面の奥で唇を噛み締めた。どちらも僅かに息をしていたなら千愛音の魔法で両者生きれることは分かっていた。と言うことは最悪の光景が写ってしまう。


「天将も分かってるとは思うけど親って子供の為に何かしてあげたいんだよね……それが自分が死ぬと分かっていても……ね」


嫁と師匠を殺された天将だが表情は仮面を被っており見えなかったが少しずつ言葉を出す天将。だからこそ余り感情を見せない天将が感情を表していることに恐怖を感じるのは失礼かもしれないと七美はそう思った。


「今言う話ではないけどずっと言ってるけど後継者教育をしてね。こんな事しか言えない弱い私を許して」


「俺と千愛の後継者はこの子です」


天将の口からははっきりとそう言う言葉が聞き取れた。七美が動きだした。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』章間22話は10月30日に更新する予定です。終わるまで連続更新になると思います。

本編百五十四話は11月3日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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