章間13話 不穏な動き
頭には自分が五代目になった時のビジョンを描きながら、ポストを決め始めていた。そこに一人欲しい人材がいたことを思い出した。彼の名は深中動仁。後に『魔剣将軍』と呼ばれることとなる男だった。
「こちらに来てもらえないかな?」
「ありがたい話ですがお断りします」
「もちろんただではない。直ぐには無理かもしれないが必ず軍部隊長の席を君にあげよう」
「本当に俺の実力を買ってくれていることに感謝しています。ただどんなに金を積まれても良い待遇でも俺は恩人を見捨てて貴方になびくことはないでしょう。例え乗る船が泥船だろうがボロボロだろうがそんなことは関係ありません」
深中動仁はそう言いきった。七美はような言葉を最近よく耳にしていた。
「そうか君にはこちらに来て欲しかったな。太陽が君のことをほめていたよ」
「もしよろしければ太陽にこう伝えてください。君の想いと俺の想いは同じだと。それだけで彼には伝わるはずです」
それを聞くと七美は頷き返して去って行った。
その後護衛で姿を表した太陽は七美と一緒に透の私室に寄っていた。
「まだ公にはしないで欲しいんだけど私太陽と結婚するから」
「お義父さん七美を私にください」
「うん……ん?」
一回頷いてあれ頷いて良かったのかと透は自問した結果頷いていいお願いではないと考えた。
「待て待て待て七美。どうゆうことだ?」
大慌てな透は聞いていないと止める。
「文字通りだけど。お父さん年で耳悪くなった?」
「ダメだ。まだ早いだろ何歳だと思っている」
「もう19よ。それに妹は良くて私はダメなのかー」
七美の妹の椿は一ヶ月前に浪花絶人と婚約した。それを比較する。その一言で透の私室には仮面を被った暗部に宰相呉も登場する。
「色々考えたけどお父さん気分が悪いみたいだから田舎に療養してもらおう」
ニコニコと言う七美が一番信頼している部下を3人連れていふ時点でその言葉の本気度が透に伝わってくる。
「誰かいないか?」
「声なんて聞こえていると思いますか四代目」
「咲の仕業か」
仮面を被っている影響で声が余り届きにくい環境に当然だが素顔は見せていないだが透の頭の中では瞬時に誰がこの結界を張ったのかが状況証拠だけで分かった。
「今は沙羅と呼ばれています」
仮面を被ってはいるが立っている暗部のメンバーは透が知っている人達だと気がついた。手際の良さに何と言っても宰相が味方している時点で察しがついた。
「わしが認めなければお前らによって田舎に行かなければいけないだろう。と言ってわしも四代目の前に一人の親じゃ。娘の気持ちくらい分かる。太陽にも剣を教えただろ」
「最悪は暗殺しなければいけないと思っていましたよ四代目。最初は駆け落ちするとか言ってましたから」
どの言葉も冗談か本気か分からないくらい行動力がありすぎる娘にいつも手を焼くのは親の務めなのかと本気で諦めた。
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幹部会議では遂に均衡が破れていた。
「七美お嬢様。最近いささか様々なことに首を突っ込みすぎではないでしょうか」
そう言うのは浪花家当主の五郎。
「そうかな?」
とぼける七美は何を言っているのか理解できないと言った表情をしていた。
「海鮫家やレストム要塞、挙句の果てには風雲家にも手を出そうとしましたよね」
「それがどうしたの?」
言われることが分かっていたような決められた文言を
「貴方はもうすでに当主のように振舞っている。それはおかしいのではありませんかね」
「なら貴方はどうしたい?椿の後見人を名乗り、長男の絶人を妹の婚約者にした。都合が悪いのは貴方ではないかしら、この国は恋愛結婚推奨で政略結婚に夫婦のどちらか片方しか風の民の権力を持てないルールになっている」
「それは風の民だけのルールだろ風魔連合共和国としては何もそんなルールはない」
「平行線ね。もう良いや十分良い子にしてた我儘言っても良いわよね」
いやどこが良い子にしていたんだ、十分暴れてしたいように動かしてきたんじゃ……
決して顔には出さないが振り回されている翔、レト、呉はそう心の中で突っ込みを入れる。どうやら指摘されたことは良い子にしてきた結果だと言いたかったのだろう
「政権を左右する旗取りの決行をお願いしますお父様。私が今までしてきた貢献で出来ますよね」
自分の父であり風の民を動かすトップに圧力をかける。それに納得したのか透も頷いた。
「ああ約束しよう」
その一言で旗取りが始まることが確約した。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』章間14話は10月17日に更新する予定です。
本編百四十五話は11月3日に更新する予定です。
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