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風の想い人  作者: 北見海助
章間 七美の軌跡 青年期~『雨の十五夜』
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章間12話 若気の至り

海鮫家から帰って来てから次の日。七美は呉がいる宰相の執務室に来ていた。


「結局、喧嘩を売ってしまったと」


「でも呉も味方につけてって言ったじゃない。悪いことをしているって分かっている人をじわじわと追い詰めるような面倒くさいことをするのが嫌だったから、不正をしていた人々を堂々と証拠を見せつけて全部監獄送りにしたんだ」


明らかに怒っている呉に対して言い訳と成果を口にして許して貰おうとする七美。


「海鮫家をどうやって運営するのか教えてもらいたい」


「若い有望そうな人が沢山いたから早めの世代交代ねって言ってきたんだ。若い人たち目がギラついていたよ」


「反省してください。奴らは浪花の支援や情報を売る人も多くいた。事を構えるのはもう少し暗部が機能し始めてからと思っていましたし、そう打ち合わせしたはずですしそう言っていましたよね?」


「はい」


「まぁでもそれでこそお嬢様だと思いますし俺はそんなお嬢様だから国の未来を賭けても良いと思っている」


「でしょー」


「罰として政治関連を教えますから今日の座学はとても長いですよ」


「それだけはー」


呉の長いは約二時間ずっと勉強でとても長いは丸一日と難しい暗記テストが待っている。それが嫌な七美は逃げようと呉に背中を向けた。


犬みたいに首根っこを掴まれた七美は逃げるのを諦めて大人しくしていた。


ー-------------

少し時間が経って午後になっていた。黒服黒ズボンのテツは宰相の執務室にいる呉に報告が終わった後呉はため息を吐いた。


「お嬢様があの調子ではお前にずっと苦労を懸けそうだな」


「自分で選んだ道です。お嬢様に恨み言を言うことがあっても後悔はしていません」


自分の側近に選んでもらいこの人に忠誠を誓い荷物にならないように動いてきたつもりだった。


「よろしく頼むよ」


「いつか師匠に聞きたいことがありました」


様々な事を教えてもらった師匠に長年聞きたかったことをテツは口にする


「ん?なんだ」


「どうして孤児だった俺や訳ありの他のみんなを教育しようと考えたのでしょうか」


「衰えだよ。柔軟な発想が出来無くなってきた。それに俺は人を見る目は良い方だと思っていたんだ。でも残念だけどテツともかなの才能は見抜けなかった。そう言うところから俺は引退しなければいけないと強く思ったよ」


初めて聞く師匠の情けない声で真意を聞くテツはこの答えを聞いて疑問に思った。


「あなたなら権力にすがれると思います。そんなことよりも大切なのですか?」


「こんな地位に居ながら失敗や失脚が怖いんだ。揉み消すこともやろうと思えばできるが、それよりも引き際が大事なんだ。それに権力に縋りつかなくてもやろうと思えば今の権力以上の影響を政権に与えることが出来る。テツやお嬢に暗部の面々、亮二とかにな」


それを聞いたテツは何も言えなくなっていた。まだ老人と呼ばれないはずのおっさんがそのような事を言うのがとても驚いたこんな生き方もあるのだとその時気がついた。


「これからもよろしく頼むよ暗部隊長。特にあの自由奔放な暗部の幹部を制御出来るのはテツだけだと思っている。その名が世間に轟くように次の継承戦は動いてみるからな」


「ちょっと実力と実績が足りないし気が早いと思いますけどね」


「特にテツは能力が個性的だ。いつかどころかもうすでにテツは戦場に出ている。そしてお嬢様の為に動いた結果普通の人より活躍し君の名前が知られ異名がつけられる。早いか遅いかの違いだけだぜ」


「師匠が言うのなら間違いないですね」


「「はっはっは」」


笑ったときに部屋の中から何かが折れる音が聞こえてきた気がしたようなしないような。まだ七美は勉強をしていた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』章間13話は10月16日に更新する予定です。

本編百五十四話は11月3日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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