十六話 遭遇 辻斬りVS開花の虹目
お待たせしました。投稿を再開します。
「このタイミングで現れましたか、辻斬り」
多くの魔法使いが負傷しているなか、上野虹目は、乱入者に話しかけた。大胆不敵な虹目の行動に、太陽は少し驚いていたが冷静に言葉を返した。
「それは、お前もじゃねぇのか。開花の虹目さんよ」
言いながら抜刀する太陽が、風を虹目に当てる。
その風の強さは、敵に挨拶をするかのような弱さだった。そして虹目は、太陽の予想通り涼しい顔をして受け止めていた。
「お互いに引いたほうが得策だと思いますよ。うちの連中もヤバそうだが、『グリーンアイ』はもうもたない。部下の命が優先だと思いますが……ね」
見ただけで分かる時成の傷は致命傷に、なりそうな傷を背負っていた。そして虹目は大胆にも太陽に背を向けた。
「一つ、言っときますが冷眼も浮雲も属性剣士もここに居る。仮に僕一人が彼方方に戦いを挑んでも勝てる訳が無いですよ。それに彼方達はどうやら『グリーンアイ』が大切みたいですね。それだけ分かれば十分です。それでは」
虹目は部下一人一人に手で触れてから大魔法陣を展開する。大きさは直径4メートルの円形の魔法陣だった。そして、飯田の魔法使いや羽村、左出田と共に虹目も消えていた。
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「ばれていたのかよ」
物陰に隠れていた天将が余裕そうに出てくる。でもその顔には余裕がなかった。その理由は、目立った外傷がなかった女子二人に比べ男子二人は、多く出血している。
「暴走の反動に、出血多量。こっちも長い時間放置していると、確実に死ぬ。急いで戻ったほうが良さそうだな」
この時代の移動手段は、全身1.5メートル位の馬が主流だった。中には高度な魔法で、先ほど虹目が見せた『テレポート』と言う魔法かわあるのだが使える人は少なかった。
「急いで運ぶぞ」
太陽の掛け声で四人は中央支部へと帰って行った。
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それから3時間後。ベットの上で気がついたのは、弥生だった。目を開くと先ず始めに鮮やかなオレンジ色をした炎のランプが視界に入ってくる。
……あれっ。中央支部に居る……私
次に目に写ったのは、父、天将だった。
「大丈夫か」
天将はとても心配そうな目で弥生を見ていた。
「お父さん。ごめんなさい。私のせいで、時成が、真君が……」
今でも泣きそうな弥生が涙目になっていた。そんな娘の隣で天将は、慰めるようにベットに座って話し始めた。
「能力と言うものは、使い方一つで、他人を生かすことも殺すことも自分で出来る。この言葉は昔、風の民で生きた『世代最強回復能力者』がよく言っていた言葉だ」
その言葉を聞きながら弥生はうつむいた。今の自分に何が出来るかと心の中で自問しながら。
「今は後悔したって構わない。これから先、取り返しのつかない出来事を乗り越えた後に、自分の行動で後悔しなければそれで良い」
「お父さん」
天将は立ち上がった。そして笑った。
「お前は何も悪くない」
天将はドアを開けて、外に出て行く。取り残されたのは、弥生だけだった。それでも弥生の目からは、迷いが消えていた。
そうよね。お父さんの言う通り。後悔しても何も始まらないよね
そして弥生は、時成の病室へと歩きだした。
次回『風の想い人』十七話は、5月28日に投稿する予定です。
次回もよろしくお願いします。




