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風の想い人  作者: 北見海助
三章 風雲児編
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百四十八話 雨墨家の闇

タイトルの話数がずれていましたので修正しました。他にも色々修正箇所は沢山あると思います。もしよろしければ誤字報告の方もよろしくお願いします。報告が来たり、私が気がつけばその都度随時修正していこうと思います。よろしくお願いします。


招かれた時成は雨墨家の会議室に呼ばれた。対角に座る光明と時成に出入口の近くで立っている、雨墨家の執事の隣で沙羅は何時でも動けるように魔法陣を起動する。外には美羽がいて蓮は時成の隣で座っている。紗奈香は光明の背後に立っていた。最初に口を開いたのは時成だった。


「君は何者なんだい?」


仮想敵になるかもしれない家の奥の会議室の椅子に座る時成に周囲を警戒する蓮が隣にいる。


「何者って言われても困ります。僕はただの阿保領主の息子だ」


「いやいや。その纏っている魔力のことだよ」


それを言われてドキッと表情を僅かに変える光明に当たりだと確信をえた。


「何故気がつくのか教えてもらいたいですね」


「企業秘密です」


時成は光明を射るように目を見続けていた。視線を感じる光明だが表情を変えることはなかった。


「少し気になったのだが、雨墨渡司やその長男?名前まで覚えていないのだがその二人には何かあるのか?沙羅」


背後に立っている沙羅に質問を投げかける時成に仮面の奥でため息を吐く沙羅は丁寧に説明する。


「まぁ経営がうまくいっていないとかは分からないが民が払う税が少しずつ重くなっている。先ほど光明さんが言っていたように長男は女癖が悪くて侍女や村の女性を何人も手を出しているとかな」


「私が言ってしまってはおかしい話ですがごみ父は浪費家で浪花家から借金しているそうです。好色兄もその金を使い込んでいるだとか」


「これはまた随分と他人事だな」


「私は表舞台に立ったことはありません。知ったのも最近でした」


「執事に聞くが経営が破綻するような土地なのか。前調べを聞いた時はそのような感じではなかったが」


「私はソズンと言います。時成様の言う通り経営は破綻していません。さらに言うなら軌道に乗っている事業もいくつもあり家臣にはちゃんと給料を賄っています。ですが税は少しずつ加増しています」


事前に軽くだが調べた紗奈香や沙羅が頷いている時点でそれは正しいのだと時成は思った。


「民からは少しずつですが批判が出ており払えなくなった低賃金の人達や見切りをつけた人たちはこの村を出て行っています」


「君はどうなりたい?」


時成の低い声が重く光明にのしかかる。全ての件のことを把握しているのか関係なかった。


「こんな何もかもダメな人でも慕ってくれる部下がいる。今日を必死に生きている人達に信頼されるそんな雨墨家でなければいけない。もし許されるなら俺は雨墨家の当主になるがそれには大きな壁があります。それでもよろしければ」


「決まったな」


時成はニヤリと笑うと沙羅が口を挟んできた。それは光明を見たときからの疑問を口にする。


「ちょっといいかしら?貴方もしかして魔力飽和病じゃないかしら?」


「っ……」


再び光明が動揺する。そしてその言葉を話した沙羅は目を瞑った。『魔力飽和病』。時成みたいに魔力を持たず生まれた人以外、普通の魔法使いや魔力を持っている人には気を付けなければいけない病気の一つである。一時この病気が流行って対策が必要になったこともあるがこれは薬のせいでもあった。


では『魔力飽和病』の何が問題なのか?その理由は魔力が自分の体の中にある『容量』以上の魔力が回復するのが問題だった。魔力を増やす常套手段は魔法を使い続けながら体の『容量』を大きくして、大きくした『容量』を回復する。それが回復しなければ『魔力枯渇病』になる。


つまり魔力飽和病の症状は魔力が容量以上に回復するのが原因で容量以上の魔力は消費しなければ、少しずつ体のどこかが蝕まれ、体の機能が不十分になっていき最終的には命を失う病気だった。


「まさかこの家に『あの薬』を盛っている人がいる?でも随分取り締まったはずなんだけどな」


自分がしてきたことを思い出しながらそう話す沙羅に頷く蓮。


「いえ若様は生まれつきでございます」


「天然か、対策とかはしている?」


「8年ほど前からですね。それでも生まれてから10年は何もしてこなかったので色々と蝕まれていますよ」


「その髪に目の色とかかな。私は医者ではないけど多分日光に弱くなっているよねその体?」


「その通りです。医者にも診せましたが同じようなことを言っていました」


「それが大きな壁だとしても沙羅はどうにか出来る魔法を知っているだろう?」


頷く沙羅を見て時成も頷き返してから話始めた


「なら問題ないな。光明の覚悟も聞いたし後はどうにかするだろう。海鮫家に帝国軍を案内した奴が他にもいるかもしれない。絶対に許すなよ」


堂々とした言い方に当主の自覚が出てきたのかと蓮は感じ、席を立って会議室を出ようとする時成に頭を下げた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百四十九話は9月22日に更新する予定です。

また次回から5日間連続で更新をします。3連休前半は予定通りの1話しかなくすみません。

次回もよろしくお願いします。

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