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風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
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十五話 暴走

次回の投稿予定日が20日になっていましたが、正しくは21日です。

すみません。

「残念だったな。君のヒーローは、もう動けないよ」


時成を倒した左出田は、まだ倒れている弥生に近づきながらそう話した。そこに沙奈香が魔法使い達の集団を振りきって近づいて来る。


「まさか、あの連中を半分も気絶させ残りは手負いにさせるとはな」


沙奈香は魔法陣を左手の手のひらに起動している。だがそれも読んでいるのが左出田だった。


「大量にあった魔力はガス欠寸前まで無くなっている。そこから分かることは、それが最後の魔法陣になるだろうな」


左出田に事実を言われた、沙奈香は少し驚いた表情をしてしまっていた。それが左出田が言っていたことを肯定する一番の材料になってしまった。


「飯田の精鋭15人を相手してここに助けに来る実力は認めよう。お嬢さん名前は、何て言うのかな」


「知らなくて結構よ」


沙奈香は、起動していた魔法陣を展開する。その魔法陣は、水の魔法で水滴が無数に浮かび上がった。


「弥生ちゃんを返して」


そう言うと、無数にあった水滴は左出田の体に向かって飛んでいく。それを左出田は全て避けて沙奈香の魔法を対処する。


「覚えときな。飯田は、魔法に詳しい連中ばかりだ」


そう言って左出田は沙奈香との距離を詰めて、沙奈香を気絶させる。そして近くに倒れている弥生を軽々しく持ち上げて肩に乗せた。


「ターゲット獲得。全員速やかに撤退するぞー」


左出田の声で魔法使い達は気絶している味方の方へと近づいていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何をしているんだ俺は、大切な人も守れず何が約束だ


地面に這いつくばった、時成は左出田に斬られた胸や右側の傷を押さえながらそんなことを考えていた。


そして弥生は、気絶させられて、左出田に連れて行かれそうになっている。


時間がないか……。また目の前で大切な人を失ってしまうなら、死んだほうがマシだ。だから……だから使ってやる。


時成の目と髪は再び緑になり、立ち上がる。


親父ごめん


時成は太陽に心の中で謝った。太陽に届くことは無いと知りながら。


体が熱くなっていく。そして左出田に斬られた所は痛みが無くなっていた。


「フフ、フ、その手ヲ離せクソ野郎」


「左出田様あの緑奴立ち上がりましたよ」


魔法使いの男は左出田と反対に向いて時成に向き合う。


「殺してしまえ。死に損ないだ」


左出田はたった一言そういった。


「はい」


魔法使いの男は、時成に向かって魔法陣を組まずに火の魔法を放つ。だが時成に届くまでに、消えて失くなってしまった。


「えっ……消えたのか……」


その言葉に左出田は反応して弥生を捕まえながら時成のほうに向く。


「お前ノスベテヲコワシテヤル」


左出田は時成の目に、光はなく曇っているように見えてしまった。


おいなんだあれは……だが何であってもあいつだけはもう一度潰さなければいけない気がする


左出田の直感は、そう悟った。そして魔法で氷の両手剣を精製する。それを持った左出田の両手は小刻みに震えていたらしく、両手剣はカタカと鳴っていた。


あいつにビビっているのか、俺は


それでも左出田は体の震えを止め時成と向き合う、その時だった。パリンと何かが壊れる音がしたのと同時に、さっき命令した魔法使いの男が胸を斬られて飛ばされてくる。


他にも、時成に斬られた魔法使いは、時成が左出田に向かってくるまでに五人も犠牲者がでていた。


「ツギは、オマエだ」


パリンと再び何かが壊れる音が聞こえる。時成は、服と木刀が魔法使い達の返り血で真っ赤になっていた。そして左出田に向かってゆっくりと歩いてくる。


「き……消えただと。俺の両手剣バスタードが。ま……まさか」


左出田は謎の違和感を感じ、また魔法で氷の両手剣を造り出す。その違和感はすぐに答えとなって帰ってきた。


「パリン」


魔法で造った両手剣は、光ながら粉々に壊れていく。


破壊者ブレーカーか」


この能力を持った人は、過去の偉人には、たった一人だけ。その人物の異名は『ワールドリスタータ』と知られている。


左出田は、無理やりにでも魔力を使って氷の両手剣を造りだし時成に斬り込んだ。その時成もその行動に対して、右斜めに刀を振る。


一瞬、刀と刀がぶつかった衝撃でキンという甲高い音が響いたが、すぐに左出田の魔法で造った、氷の両手剣は壊れてしまい左出田は後ろに吹っ飛んでいく。


「トドメだ」


時成は、飛ばした左出田を追いかけようと体を動かそうとする。だが、


「ぐふ……」


片足を地面につけて、口から赤い血を吐いていた。その瞬間からだんだん体の感覚がなくなっていった。


暴走状態のリミット。二つの能力を同時に高水準で発動させると言う荒業は、当然、代償無しで使えるほど甘くは無かった。


「ここで死ぬのかな……俺ができることはしたけど……本当は、弥生をちゃんと守りたかったなぁ」


薄れていく意識の中で時成は悔やみきれない後悔をする。そして時成は、地面に倒れてしまった。


「こいつらから離れろ、お前ら」


近くで誰かがそんなことを言った。けれど時成の意識は朦朧として、やがて消えていった。


次回『風の想い人』十六話は、5月21日に投稿する予定です。

一週間空きますが、よろしくお願いします。

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