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風の想い人  作者: 北見海助
三章 風雲児編
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百二十四話 昇進の話

3月2日の早朝午前6時。中央支部の執務室にはテツに呼び出された追目良正(おいめよしさだ)がテツが座っている机で分けた反対側に立っていた。良正もテツも黒服黒ズボンの黒ずくめ衣装をしていて執務室は明かりは灯っておらず空が少しずつ明るくなり始めて部屋も徐々に明るくなっていた。


「朝、早くに呼びつけてすまんな」


「いえ、隊長にはお世話になっていますので」


会釈程度頭を下げる良正にテツは肘から先の腕を机に置いて良正が顔を上げると静かに話し始めた。


「昇進の話がある。これは暗部の幹部の全員一致を受けて話ている」


「暗部内での昇進の話などあまり聞かないのですが何故僕に話が回ってきたのですか?」


「心当たりは沢山あるんじゃないか。最近だと特に大きな証拠を持って帰ってきたりしてたしな」


暗部メンバーの多くは昇進の話を聞いても現役で最前線に立って仕事をしたいが為だけにほとんどのメンバーは直ぐに断りを入れるか受けてもその後で仕事に戻って行き余り人前で話すことはなかった。良正は話の途中だったがテツの話しを遮って自分の考えを述べ始めた。


「ちょっといいですか。それは随分前の話じゃないですか隊長。昇進の話はお断りします。自分の実力を評価してくれたことには嬉しいですが俺は現場に出て能力を使って有益となる情報などを握り皆様の役に立ちたいと思っています」


テツの目を捉えて離さない良正の黒い瞳には信念に近いものを感じた。だからこそため息を吐いて全て続きを話し始めた。


「若達の側近(かげ)にならないか?これから様々な行動をして恐れられるようになるはずの若や弥生、真に紗奈香。これらの側近になる気持ちはないか?昔、お前がまだ影に見いだされてから1年が経つ前。偶然お前の能力を見てから俺の中でこの話をすることを決めていた。話す時期を待ったのは君の成長や他の四人の覚悟や実力が伸びるのを待ってたんだ」


そこまで暗部隊長であるテツに言われたのであればもう断ることなど出来なかった。


「後。ここだけの話なんだが俺は次代の暗部隊長に若からの信頼が厚い真にする。副隊長までの地位は俺の口からでは確約できないが副隊長にならないのならその分だけ影よりも自由に動けるはずだ。若の為に力を貸してあげて欲しい」


「最後の話は聞かなかったことにします。側近なら断る理由はありません。昔から師匠と同じくらいの大きな恩を時成さん……いえ若や弥生さん、紗奈香さん、真さんから貰いました。だからこそ少しでも貰ったもの以上のものを返せるなら……その地位をいただきます」


そう言うと良正は頭を下げた。


ー-------------


良正がテツの命令で時成を呼びに行こうとして医務室まで歩いて行った。そんな医務室の前では数人の暗部メンバーが立ち止まっていた。


「ちょっ誰があの部屋に行くんですか」


「あの部屋にいくのは命を懸けなければならないな」


まだまだ若いメンバーだが良正よりかは暗部に入って5年以上も経っている人達が命を懸けなければならないとそう言わしめた


「おい良正。今若と若女将さんが寝ているんだそこに行くのか?」


「ええ隊長の命令ですから」


「えー今良いところなのに……むにゃむにゃ」


そんな弥生の寝言の声が聞こえている中、少し躊躇ったが色々と文句を言われるのだろうと思いながら諦めて良正は扉を開けた。だが良正は冷静さよりも驚きが増して『失礼します』が抜けてこう言ってしまった。


「何やってんですか」


挨拶もなく良正の一言目はそう言う感想しか出なかった。時成は起き上がって愛おしそうに寝ている弥生を眺めているだが上半身は裸でその隣には時成が使用していたであろう布団を思い切り自分の体に巻き付けて寝ている弥生がいた。


「いやー起きたらもうすでにこうなってたから俺も何が起こったか分からないんだよ」


「分からないでは済まされないとは思いますが……天将さんに怒られてきてください。それと隊長が呼んでいました。行ってください」


「分かった。すまないが服をとって来てくれないか」


「分かりました」


そう言うと良正は部屋を出て行った。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百二十五話は6月2日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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