百二十二話 最敬礼
昨日は更新できずすみませんでした。
「あ……暗部の最敬礼」
そう驚くのは透だった。暗部の最敬礼を見るのはこれで3回目。1回目は七美が5代目に就任した時。2回目は七美が亡くなって遺体が安置していた時。そして今回だけだった。まだ暗部が結成してからの時間は短いのだが普段の状況では滅多に見られない敬礼をみて驚くのも無理はなかった。
飯田正則は倒れ、それを見て弥生は時成の方に走り出し、その後を追って真と紗奈香も追いかける。それを見て透は近くに置いていた椅子に座りこんだ。見たらわかる。この結果が全てを物語っていた。だが他の人は何が起こったのか分からずに付近を見回していた。
「遅くなりましたがこれを認めてください」
テツは懐に隠していた紙を座りこんだ透に渡した。それを見て内容を確認して透は笑うしかなかった。
「いつ、作ったのじゃ?」
「太陽が死ぬ3日前です。後これも、両方とも本物の控えは持っているのでご自由にお使いください」
「おい、こっちのほうが問題ではないのか。あの連中がこれを認めるとでも思っているのか」
テツの仮面の下では口角が上がっているのを確認した透は最悪のパターンを考えた。
「どうでしょうか。この事実を知れば納得するしかないでしょうがこの事実を知らなければ。知っていても文句を口に出す人もいるでしょう。安心ください。飯田がどうなったのかもうお忘れになったとは長老様も言わないでしょう」
それはこの紙に書かれていることを認めなければどうなるのか、たとえそれが身内でも容赦はしないと言っている脅迫だった。それを聞いて透はまだそれほど暑くなく普段はかかない汗をかいているのに気が付いた。しかもその汗はとても嫌なものでもあった。
認めなければ今、新たな主を得た暗部や水笠、海鮫家が反逆する。それはなにがなんでも阻止しなければいけない事だった。
その事を分かっているかのようにテツは透を見ていたが、そんな彼に一人の暗部が報告に来る。
「隊長、報告します。あの援軍の全員をもうすでに追い返しました」
「あいわかった。じゃあここに暗部を集めてくれ。帰るぞ」
そして暗部は全員が揃うと透と共に中央支部に帰って行った。3月1日飯田家は崩壊した。この事件を後の歴史の教科書にはこう書かれてあった。卒業式の凶行事件と。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回『風の想い人』百二十三話は5月19日に更新する予定です。
少し話のストック今後の展開を考えるために1週間休みをもらいます。とりあえず目標にしていました話が終わりました。次の話から3章の後半に入ります。
次回もよろしくお願いします。




