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風の想い人  作者: 北見海助
三章 風雲児編
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百二十話 影に立つ人

連続更新後半1話目です。よろしくお願いします。

天将が体育館を去った後。


「ちょっと待ってろ弥生。あいつを斬ってくる」


時成は自分の刀の鞘に手を伸ばす。そして少し握ってから手を離す。その様子を黙ってみている傍観者達。そんな時成に声をかける人物がいた。


「持って行きなさい」


その人物は透。右手には黒の柄に黒鞘の刀を握っていた。


「お待ちください、長老様。その刀はもしかして例の奴ですか」


「そうじゃが、それがどうしたのじゃソーキよ」


ソーキはその刀を知っていた。いやそれは誰もが知る刀である。


名を「霊剣 風宗」かつて風雲一族の長が持っていた有名な刀の一つである。そして紛失したとされた刀だった。


それを透は渡そうとしている。その意味は黒の殺し屋なら知っていて当然だった。何故なら太陽の遺言で「時成に六代目を継がす時に渡してくれ」と言っていたからだった。


ソーキは軽く頭を下げてから


「いえ。俺は長老様に従います」


と言った。


「気にしなくていいんじゃよ。誰かは聞いてくるとは思っていたからのー特にお前はな」


そう言いながら時成に霊剣影宗を渡した。


「ありがとうございます」


何も知らない時成は深々と頭を下げてから刀を手にとった。それを見て透はこう言った。


「わしは、もう隠居しようと思う。わしと親友の孫ならこの二本の刀を扱えるはずじゃ。勝って来なさい」


微笑んだ透はポンと時成の肩を叩いて送り出す。


「はい」


時成は飯田正則の方に向いた。敵戦力は中学院の先生10名に正則だけ。


「真。俺の勝負に邪魔する奴等を斬ってこい」


いつの間にか時成の背後に立っていた真は眉を潜めて疑問を口にした。


「それはどの立場で言っているんだ」


低くきつく放ったその一言が体育館に木霊する。何を言っているんだこいつはと言っているような視線が真に集中する。


「んっ……決まってんだろ。相棒としてだよ。まさか出来ないのか」


当たり前のように言う時成のその一言は、真の首を絞めてしまった。はぁーと息を吐く真。そしてやっぱり近くにいる沙奈香に声をかけた。


「すまんがあれを持って来てくれるか?紗奈香」


「良いけど、今日は魔法使えなくなるよ」


「あの連中だけなら俺だけでどうにかなる」

真が言ったことに疑問を浮かべた沙奈香だったが覚悟を見せている真にこれ以上否定的に言うのは間違っていると沙奈香は思ってしまった。


「はい。約束のものよ」


当たり前のように涼しい顔して魔法陣を展開せずに転移魔法を使う沙奈香は真に魔法で持ってきた黒い仮面を渡した。


「弥生が嫁ならお前は宰相になるだろ。だったら俺はそんなお前らを影から支える」


黒い仮面を受け取った真は沙奈香にそう言った。


「それで良いんじゃない」


沙奈香は笑って答えた。後世、この話は歴史の教科書に名前を残すグリーンアイの時成の側近の一人として活躍する有名なシーンの一つになる。


「お前は風の六代目になる男。その相棒が俺って言うのなら、世間に情けない姿は見せられない。俺にもプライドってやつがあるからな」


そう言って真は時成の隣まで歩いて行く。


「今日、この時、この瞬間より俺の命をお前に預ける。お前が口にする道は俺が整備してやる。誤った方向に曲がるのなら殴ってでも真っ直ぐにしてやる。この仮面に誓って」


黒い仮面を一回時成に渡してから返してもらう。そして黒い仮面を被った。真は黒い仮面の奥でニヤッと笑った。そんな真を見た時成はこう返した。


「分かった。よろしく頼む」


真が言ったけじめに時成も力強く頷き返した。そして二本の刀を抜刀する。黒と白の鞘から相反する色の刀身が光輝く。


「さぁ、反撃だ。俺の勝負の邪魔をする奴を斬ってくれ、相棒」


「了解」


真も自分の刀を抜いて答えた。その瞬間、真の刀から先生に向かって白い斬擊が飛んで行く。不意打ちを喰らった先生は真の斬擊が直撃して後ろへ吹っ飛んでいく。


「東堂を殺せー」


飯田側についた先生方からそのような声が次々上がった。ニヤッと笑う真。その時点で真の思う壺だった。真の斬撃に何も出来ずに倒れていく飯田の部下達。


真はいつも以上に生き生きと戦っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あれっ、真君。もう戻って来たの」


と驚いたのは弥生だった。何故ならまだ戦闘が再び開始してから5分も経ってはなかったからだった。


「めんどくさかったからさっさと倒してきた」


「えっ」


飯田の部下や、先生は、面倒くさいからと言って簡単に倒せる相手ではない。その事実を身に染みて知っている卒業生や在校生の子供達は驚いていた。


「まぁあの大軍に比べたらこれくらい簡単に倒せなければダメよね。時成の影になったんならね」


「それはそれで酷い話だけど」


倒せて当然って言う沙奈香に酷い話と言って仮面を外す真。それを聞いて微笑む弥生。それを見て聞いて多くの見学者は、はっきり言って異常な時成の幼馴染み三人が敵になるというリスクを背負って飯田正則を助けようとは思わなかった。


その中でも面倒臭いと言って簡単に飯田家の暗部を倒した真の異名に『斬撃使い』と言う名前がついた瞬間でもあった。


「後は時成の復讐が達成したらオッケーだね」


そう言った弥生はもうすぐ決着がつきそうな時成の方に向く。そして真と沙奈香も同じ方向に向いた。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百二十一話話は5月4日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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