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風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
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十三話 東堂真の能力

次の日。5月も後半の17日。もうすでに1日の気温が少しずつ高くなっている。


ここは中学院。今日は5時間の授業があった。

そして今は、放課後。


「春風ちょっと職員室に来い」


担任の先生に呼ばれる時成。これがこの事件の始まりだったとは、担任も含めて、誰も気がつかなかった。


「あーあ。時成が先生に呼ばれちゃった」


弥生は、小さくため息をつきながら独り言を呟く。


「あれっ、一緒に帰れなくてさみしいの」


沙奈香は弥生の独り言に、すぐに反応し面白がって煽りを入れた。


「そ……そんなわけないし」


弥生は頬を紅く染めて詰まりながら否定する。


「ツンデレかな」


「沙奈香なんて、もう知らない」


ふいと首を振り弥生は、沙奈香から目を背ける。そんな弥生を見て沙奈香は、焦って謝罪の言葉を述べる。


「ごめん。からかいすぎた」


と。そんなやり取りを遠目で見ていた真は、


またかこの二人は


と呆れていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そんな二人と真は、支部に向けて歩いて帰っていた。時成はというと、まだ先生に呼ばれて中学院に残っていた。


真は、回りにいる人の視線を感じる。だが、女子二人は気がついていなかった。


「囲まれている」


真の顔は、真剣な表情へと変わる。

それは、普段から長く一緒にいた沙奈香でも驚くほどの豹変ぶりだった。


「これは真剣にしないとヤバイかもな」


真は、小言で二人に言い聞かせる。真は持っていた刀を取り出す。


その真の行動に焦りを感じた一人の男は三人の前に姿を表した。それに続けて多くの人々が三人を取り囲むようにしながら出てくる。


「グリーンアイはいないようだな」


そう発言するのは、三人を取り囲んでいる人達の後ろに居た飯田の副幹部羽村だった。


隣に居た沙奈香は、周りを見回した。自分から見て正面に、羽村がそして後ろからは幹部クラスのとても大きなオーラを感じた。


「油断しないで、羽村以外にもまだ幹部がいるよ」


沙奈香は手に魔法陣を起動し始める。黄色い文字が少しずつ円形に描かかれていく。


弥生は短剣を取り出し抜刀する。


「狙いは、私でしょ。あなた方の思い通りにはならないわよ」


相手の魔法使いは、無言で魔法陣を起動させずに火の魔法を放つ。その魔法に合わせて白くて細い直線が真から放たれた。


それは真の技であり、真の『斬撃ざんげき能力』の能力ちからであった。


「斬撃使いか。珍しいな」


羽村は、目を丸くする。それでも怯まずに真に照準を合わせる。


「っち」


真は軽く舌打ちをする。その瞬間、羽村が突っこんでくる。真は羽村の刀を自分の刀と接触させた。その瞬間、キンと甲高い音が辺りに鳴り

響きわたる。


そして二人は、同時に後ろへ吹っ飛んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


イテテて。時成の奴マジで凄ぇーな。こんな技を弥生の奴を守りながら戦っていたのかよ。


真は、時成に向けての今の自分の素直な感想を思う。


「やっぱり中途半端で勝てる相手ではないな」


真は、悔しそうに弱音を口にする。そして刀を再び握りしめて立ち上がり刀を振った。その直線上に三本の斬撃が生まれる。


だが羽村は、真に向かって一直線に突っ込んで来る。そして三本の斬撃は羽村に斬られることなく彼方へ飛んでいく。


それを見た羽村は、嫌みを込めて真を煽り始める。


「斬撃使いっか。グリーンアイより弱いな。取り敢えず邪魔だから死ね。全ては飯田様のために」


それを言い終わった羽村の最速突きが、真に襲いかかる。そして今、真の頭には走馬灯がよぎっていた。


小さな時から木刀を振っていた時成。沙奈香の魔法の能力が開花した時等。


今見ている全てが、懐かしく思えた。だから真は、


俺はあいつらより弱いし、自分の能力さえ扱いきれない。ダメな男だ。


と思った。


真は、無意識に羽村に向かって小さな斬撃を放つ。それが心臓に向かって伸びてきた刀の進路をずらしていた。


「ぐしゃぁ」と言う音と共に真の胸の左側と羽村の刀が赤い血で染まり周りは真の血が飛び散った。だが真は何一つ声を上げることはなく倒れていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何でここにいるのよ。『氷の武器職人』、左出田雪間(さでだせつま)ー」


沙奈香の近くで左出田と戦っている弥生の悲鳴が聞こえる。そして沙奈香は、魔法使い15人を一人で相手にするという無謀な勝負に挑んでいた。


くっそ……私の魔法は結界で阻まれるし近くでは弥生と左出田が戦かってるし。


魔法使いは再び火の魔法陣を展開して放った。少しずつ遅れているが他の魔法使いも同様に火の魔法を沙奈香に向かって放つ。


それが重なって無数の弾幕になり、沙奈香を襲う。その弾幕から自分を守る方法が沙奈香は一つしか思い浮かばなかった。


「魔法陣展開。結界」


あらかじめ起動していた結界魔法を、沙奈香は展開する。


結界とは透明な壁を魔力で創造する防御魔法の一つである。


それでも15人で放つ火の魔法は、沙奈香の結界を壊していく。


1対15の魔法勝負じゃこっちの分が悪いし、弥生ちゃんの方に加勢に行かないと。相手が幹部の左出田じゃ一人では勝ち目が薄いのに。


沙奈香は今の現状を把握しながら次の有効な一手を探しながら考えていった。

次回『風の想い人』十三話は、5月4日に投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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