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風の想い人  作者: 北見海助
三章 風雲児編
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百十八話 弥生の策略

連続更新前半2話目です。よろしくお願いします。

天将の了解を得た弥生は次に真と沙奈香のほうに歩いていった。


「真君。飯田正則を押さえてきてね」


その弥生の満面の笑みに、少し恐怖を感じた真は抵抗するのと考えるのを止めた。


「それは無理だ。あいつの能力と俺のでは相性最悪だ。まぁ5分ぐらいはどうにかするつもりだけど」


「そうだったとしても真君、頑張ってね。私は、魔力が回復してないから援護は出来ないわよ。任せたからね」


少し悔しそうにする真の隣にいた沙奈香は、弥生のこれからの行動は読めていた。だから真に釘を指した。


「一瞬で良いから時間を作りなさい」


「命令形かよ。まぁ良いか。どうせこれから先も同じようになるんだし」


真もニヤリと悪い顔をする。


そう。これからも


そう思いながら、真は沙奈香が持って来た自分の刀を握った。


「まだこいつは死なせないぜ」


と言いながら、刀を抜刀した瞬間、正則に向かって斬撃が、飛んでいく。


「何だよ」


急に飛んできた白い斬撃に正則は、刀を斬撃に当てた。その慌てた対応で、ターゲットが時成から真へと変わった。正確には、ターゲットを時成に向かないように右側から左側、上下に斬撃を放ち続けた。


「クソガキが……ふざけてんじゃねぇーよ」


頭に血が上った正則は、真を殺す勢いで殺気を放ったがそこは真、怯えることはなくただ笑っていた。


無理ゲーだし勝てないし。でも、時間を作らなければダメみたいだし


真に正則の左からの鋭い一撃が当たるが刀で防御はしていた。


約束は守ったからな


たった5分。その人達にとっては、とても長い時間に感じるときだってある。だが真にとっては、とても短い時間だった。


その長い人達の方は、と言うと……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


真と同じタイミングで飛び出した弥生は飛ばされて来た時成の近くまで走っていた。


全身赤色に染まる服からは、血が滴り落ちており体育館の床に落ちて血だまりが出来ていた。その状態でもまだ動こうとする時成に、弥生が自ら止めに入った。


「いい加減にして」


その言葉と行動は違った。怒り口調の弥生は、時成の首に二本の指先を当てる。最近弥生が習得した微弱な麻酔魔法を時成にかけた。


微弱な麻酔魔法は今の時成には効果的なのかもしれない。弥生はその一瞬の時成の隙をついて、自分の妖力を集めた。


そして、弥生は自分の唇を時成の唇と合わせた。


「っん……ん」


何も知らない時成は、暴走状態が治っているのに気がついたのだが今、目の前で何が起こっているのか分かっていなかった。


「あなたは、何がしたいの」


唇が離れ、弥生は時成に唐突な疑問を問いかけた。その言葉を聞いた時成は一瞬で自分がしていた行動を反省する。そんな中で飯田正則が真を吹っ飛ばし、近付いて来る。


正則は弥生の心臓に向かって刀を突いた。


「あぶねぇー」


時成はとっさの判断で弥生を庇って心臓を刀に貫かれていた。唯でさえ赤い服が鮮血で染め上がっていく。


次の瞬間。多くの人の悲鳴が聞こえる。でも、一番大きな悲鳴を上げたのは、弥生だった。


「う……嘘でしょ。こんなの……イヤー」


今にも泣きそうな顔をしている弥生は、倒れて来る時成を体で受け止めた。


「お前を殺そうとしたら辻斬りの息子は庇いに来ると思ったが……ふ、ふ、その通りになった。俺の目的は、達成された」


正則は嘲笑うかのように皮肉を並べる。そして不敵な笑みを浮かべた。


「甘いんだよ。そこの多くの人間を守る為に発動した結界魔法で動けない黒の殺し屋(ブラックキラー)さん達。そしてその奥にいる龍我透さんよ」


「忌まわしき風の血はここで絶えた。諦めな。そして絶望しろ」


その言葉に反応して天将やソーキ、たくもが体育館中に強い殺気を放った。中でも、一際異色な殺気を放つ人がいた。


「あなたを……殺す」


その人は、南雲弥生。他の三人にくらべ圧倒的に濃厚な殺気が辺りを埋め尽くす。その殺気に耐えられずに周りの人は、膝をついたり、気絶したりする人までいた。


「冷眼の娘」


本気の弥生の殺気に、正則は反射的にある程度距離をとっていた。正則は焦った。何故なら「殺気の強さとは、自身の強さに比例する」と言う父からの教えがあったからだった。


「冷眼の娘を今ここで殺さなければいけない気がする」


目的の春風時成を殺したはずの正則は、目的を達成したはずなのに謎の危機感を感じた。だからこそ行動に移すのは、早かった。


「全員死ねば良いのよ。だけど甘いのは、あなただよね」


正則は弥生を刀で突き刺そうと構えをとり突っ込んで来る。そして、その言葉を聞いた時には正則は弥生の近くまで来ていた。けれど、弥生は不敵な笑みで笑っていた。おかしいと気がついた正則は異変を感じていたが体を止めようとした時にはもう遅かった。


自分の目の前には確かに死んだはずの時成が立っていた。


「ちゃんと禁忌も考慮しなければ……よね」


弥生は上げた口角を固定して目を細めた。そして


壊し屋(ブレーキング)


殺されたはずの時成は、そう言いながら突撃してくる正則を力強く吹き飛ばした。飛ばされた正則は、体育館の壁へと激突する。そして時成は、自分の刀を納刀して弥生の方に向かって歩き始めた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百十九話は5月1日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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