十二話 次の一手
あれから3日が過ぎた。ここは、中央支部の剣道場。そこで時成と太陽が剣術の稽古をしていた。
「脇が甘ぇ」
太陽は、時成に向かって横に竹刀を振った。その竹刀には風が纏っていた。それは、太陽の『風を操る事が出来る』と言う能力を使っていたからだった。
『風を操る』と言っても半径5メートルぐらいしか操作する事が出来ず、さらに操る事が出来る、『風圧』が低い為、本人は火力にならないと言っている。
だが火と水の魔法には、圧倒的に強い能力でもあった。
そんな風を纏った竹刀は、時成の懐まで迫っていた。対応に遅れた時成は、竹刀で防御してみるも太陽の『風を操る』能力だけを相殺し、後方へと飛ばされていく。
「えっ……大丈夫か」
太陽は、今の現象を目を丸くして驚いた。何故なら自分が使った能力が消され、簡単に対応出来るはずの攻撃を貰って、時成を飛ばしたからだった。
「何だよ、今の」
太陽は、初めて見る時成の能力にびっくりして詳細を聞いた。
「分かるわけ無いよ。でも一つだけ言える事は消した後は体が数秒間、一切動かせないてことだけだよ」
時成は、受け身をとっていたので、飛ばされても怪我は無かった。
「そっか」
太陽は、嬉しそうに笑った。最初は驚いたものの、その笑みは時成の可能性に、これからの成長に賭けるかのようにとても嬉しそうな表情だった。
「能力の二重使用は、気を付けろよ。暴走するからな」
「暴走」
時成は、その言葉の意味が分からず太陽に、質問する。
「使わなければ良いことだ。自分を守りたいならな」
太陽は、今日の稽古はもう良いぞと言う意味を込めて竹刀を片付ける。
「ありましたございました」
時成は、頭を下げてお礼の言葉を述べた。
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それから1ヶ月。ここは風魔共和国の首都『魔京』にある飯田の拠点。
上野虹目は部下から情報を受け取って飯田正則に報告しようとしていた。
「1ヶ月探した結果。素の状態で緑目の人は居ないとのこと」
「やはり能力が関係しているのか」
正則は、複雑そうな顔をする。
「あれから10年。そろそろ『黒の殺し屋』を一人でも落とさないといけない。だからこそ、この機会で、な」
正則は、力強く拳を握る。それは、何をしてでも落とすという、強い意思が感じられる。それを虹目は分かったらしく本来なら言わない強気の姿勢を見せる。
「左出田の少数精鋭の部隊に、左出田と羽村をつけて、冷眼の娘を奪わせましょう」
「その後、ここに引っ張って黒の殺し屋を一網打尽にする。もし失敗してもその情報を元に、次の行動に移す」
二人は顔を見合せて悪い顔で笑い始めた。
「私めは、この騒動に乗じて『辻斬り』と接触を試みようと思います」
そこまで言いきった虹目は、正則に向き合った。そして
「分かった」
と正則は、虹目の意見を肯定してから、そう言って頷いた。
次回『風の想い人』十三話は、5月2日に投稿する予定です。
活動報告を更新しました。今後の投稿予定です。詳しいことは、活動報告に記載しています。
よろしくお願いします。




