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風の想い人  作者: 北見海助
章間 七美の軌跡 幼少期~青年期
110/255

章間4話 スラム街の救世主 後編

連続更新4日目です。

「よく知ってるな、そこの従者。まあ俺は異名なんか興味はないがそう呼ばれているな」


「お嬢、俺が戦いますよ」


テツは七美の前に出ようとするが七美に止められた。


「それよりもうすぐ援軍が来るはずよ。誘導をお願いしてもいいかしら」


それを聞いたテツは頷いてから七美を置いて路地裏の表の方に走っていった。


「あいつがいたら勝てたのに……女だとか子供だとかで守られることなんて、そんなことはここには残念ながらそんな甘い場所ではないんだよ」


そう言って天将は自分から七美の間合いに入ると両方の刀で七美を斬り裂いたかのように見えた。だが七美は薄い笑みを浮かべると、靄になって消えていった。


「なぜそこにいるんだ」


「あらっいちゃ悪かったかしら」


目の前にいたはずの七美は消えており天将の背後に立って自分の首に刀が当てられていた。


「降参してくれない。私は何もここを襲いに来たわけではないのよ」


「信じられるかよ」


天将は握っていた左手の剣を七美がいる背後に向かって突き刺した。だがそこには七美がいるわけでもなく自分に向けられていた刀も消えていた。そして目の前には七美が三人もいるように天将からは見えていた。


「はぁ?」


まさに怪現象なのだが天将にも帰ってきて見ていたテツにも何が起こっているのか分からなかった。


「魔法が使えない……だったら自分の能力は何なのあの日からずっと考えていた。これが私の答え。もう貴方は私の術中の中に入っている。だからもう一度だけ言うわよ、降参しない?」


「俺には勝ち目がない降参だ」


天将は剣を落として膝をつくそれを見て戻ってきたテツは自分の仕事を思い出したのか直ぐに行動し始めた。


「お見事でございますお嬢様。それと援軍が到着しました」


「そう。後は水笠家の人に任せましょうか」


七美はそう言って二人が戦闘してきた道を振り返ると多くの人が倒れており、前を見てもその奥に多くの人が痩せこけ、怯えていた。


「まだまだ改善することは山のようね」


「それは今後ですね。まずはここに居る彼らの処遇について考えなければならないとおもいますけど……その表情なら決めているのですね」


七美は軽く頷いてから、歩き出した。この日水増村の郊外にあったスラム街はなくなった。



ー-------------


2日後


あの日は影道を使って色々と根回しをした結果水笠家の当主レトには感謝され、透と長澤には軽い叱責をされたのだが相も変わらず七美は水笠家に遊びに来て、スラム街にいた荒くれものや弱っている人々などに会いに来ていた。


「まぁ、普通に裁けば国家反逆罪で死刑になるけど……まぁいいよ。彼に救われたと思って今後、生きてほしい」


全員を集めて単刀直入に言う七美は現実を突きつける。そこには可憐な幼さではなく事実を淡々と告げる執行官みたいだとここに集められ人はそう思った。だがその言葉に疑問を感じた人たちは不満を言い始めた。


「え?でも天将は俺たちのせいで死ぬのか?だったら俺たちを殺してくれ、あいつは今までこんな俺たちの為に用心棒してくれたんだ。おかしいだろ」


「そうだ、そうだ」


そこには彼の人望とスラム街の人々の少なくない絆の繋がりを感じた。そこに2日前の七美の疑問がようやく解けた。


ああ、あの子も本当は守りたかったんだ。だけど守れるほど生活は豊かではなく、守れるほどつてもなかったのね。なら私がとる行動はやっぱりこれだね


命をかけて守ろうとした多くの人たちは口を揃えてそう言った。それを見て七美は笑いだした。


「いいなぁ天将君は。こんなにも慕われているんだね。先ほど天将には君たちと同じことを言わせてもらったけど彼もあなた方と同じことを言っていたんだ。だから彼には死ぬほどきつい修行をしてもらうことにした。まぁ彼も強くなりたいとそう望んでいたみたいだったから、それで良いと思うけど。


七美は目を細めて真剣な表情で周りの人々を見てから軽く息を吸って言葉をつづけた。その表情を見てここに居る人たちは息をのんだ。


「ここからが本題です。皆さんには少し水笠家に居てもらい様々なことを学んでもらいます。何名か教師もつけるのでそこの人たちから一人前だと言われた人から夢に向かって歩いてください。衣、食、住やお金のことは勿論、教える教師がダメなことをした場合裁きを与えます。まぁ言ってしまえば皆さんの未来に賭けることにします。困ったことがあれば頼りないかもしれませんがこの私龍我七美に頼ってください出来る限りのことはどうにかしましょう」


ここに居る人たちは七美がただの領主の子供ではなくこの国を治める龍我の跡取り娘だと気が付いた人たちは目を大きく開けて丸くしていた。


「ええ……それじゃあ」


一人の女の子はポツリと呟いた。


「もちろん今回は私が乗り込んだことで挑発みたいになってしまいました。私のせいなのでお咎めはなしですよ。試すようなことを言って本当にごめんなさい。そして皆さんの将来を楽しみにしています」


七美はニコッと笑った。この瞬間自分たちの明るい未来を想像して、雄たけびを上げた。


これを見たのちの水笠家のの人々はこの日見たまだ幼さが残る七美を見てこう呼ぶ人が現れた『スラム街の救世主』と。そしてこの出会いが将来、別名、『狂信者』とも呼ばれる人々との出会いだった。

ここまでお読みいただきありがとうございした。

突然変更して申し訳ないのですが、今回の章間の話は七美の人生の前半までです。後半は三章が終了後、更新しようと考えています。理由は9話ぐらいでは『七美の軌跡』が終わらず書きたいことが書いているときに多くなって来週までに終わらないことが原因です。

これにより章タイトルも『七美の軌跡』から『七美の軌跡 幼年期~青年期』に変更しております。

次回『風の想い人』章間5話は2月14日に更新する予定です。

本編百七話の更新は2月23日に更新する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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