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風の想い人  作者: 北見海助
第一章 小競合い編
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十一話 春風時成の秘密

少し年代の矛盾が生じていたため七美の出生年をw132年からw135年に変更しました。

記憶使い(メモリー)は知っているな」


太陽が口を開く。記憶使い(メモリー)とは、10年前の『雨の十五夜』で飯田正則が殺した人物である。


「風の五代目ですよね」


弥生が太陽に質問する。風の五代目とは、風の民の五代目当主で長と言うことになる。


「ああそうだ」


太陽は返事をする。風の五代目は産業改革に特に力をいれて、民の為になるような政策をし、成功した人物でもあった。


w155年に五代目に就任した龍我七美(りゅうがななみ)は、龍我透(りゅうがとおる)の長女であり、妹の椿(つばき)の一歳年上のw135年に生まれた。


「今、世間で時成はどう言われているか、知っているか」


この天将の問いに三人は再び黙ってしまった。


「親不明の捨て子だ。更に捨て子を拾ったのは太陽で時成を義理の息子として育てていることになっている」


「えっ」


弥生は思わず声を上げた。その反応に近い反応を他二人もしていた。


「その記憶が間違っていたとしたら。当たり前と思っていた常識が覆ったとしたら」


「記憶の改竄」


太陽の目には光が無かった。太陽は、過去の自分の行動に後悔しながら今、三人に伝えるべきことを伝えていく。


「それは五代目の十八番(おはこ)だ。だが規模が大きかった。分かっていると思うが能力ってのは、使うたびに代償が発生する。例えば魔法だが、使うためには使用者の魔力が必要と言うように」


太陽は、息を大きく吸いながら少し涙目になっていた。


「『禁忌 死に戻り(デスバック)』。使用者が代償で死ぬ代わりに使用者が過去に出会った人、全ての記憶を改竄することが出来るという技だ」


その規模の大きさに聞くだけでは実感が分からない三人の為にも太陽は、本当の事実を口にする。


「時成は、俺と七美の実の息子だ」


そう言って太陽は、目を擦って涙を拭く。


外は静かになり、いつの間にか日は沈んだ。そして魔法の炎のランプが少しずつ灯りをともし始めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


執務室。暗部の人々がまとめた情報を管理する部屋であり川田影道(かわたかげみち)達が良正から報告を受けた部屋だ。


「お疲れさん。羽村を殺ったってな時成」


「殺してはいません。返り討ちにはしました」


テツは、難しい顔をした後、乱雑に置かれた資料の束の中から一つの紙を見つけてくる。


「今回、お前らを襲った連中は、左出田の部下だけだったらしい。これからは、いつも以上に周囲を気を付けろよ」


テツは時成に見つけた紙を見ながら忠告する。時成もそれを分かっているかのように笑いながらこう言った。


「中学院の教師は飯田の息が掛かってましたね、そう思えば」


テツも良く分かっているなとでも言いたげな顔で頷いた。


「取り敢えずは大丈夫だな、時成」


お前のその覚悟をした顔が見られて良かった。


「下がって良いぞ。呼び出して悪かった」


時成は黙ってテツに向かって一礼して、執務室を後にした。


「飯田の奴らは慎重だぞ、テツ。次は、幹部の左出田が動くかもな」


今まで執務室の影に隠れていた影道が姿を表した。


「ああ、それは痛いほど分かってる。だから情報が更にいるな。今回ばかりは、影は基本支部にいてほしい」


「分かった。だが何人か暗部は動かすぞ」


影道はそう言って執務室を後にする。


たくとソーキにも今回ばかりは、動いてもらわなくてわな。10年待ったんだ。子供達も、もっと成長してもらわないとな


東堂(とうどう)たく。真の父親で『浮雲(うきぐも)』と世間で呼ばれる暗部の実力者だ。


ソーキ、金城(きんじょう)ソーキは沙奈香の父親で『属性剣士(ぞくせいけんし)』と世間で呼ばれる、たくと同様に暗部の実力者である。


「任せた」


テツは誰も居なくなった執務室で、たった一言そう呟いた。

次回『風の想い人』十二話は、4月30日に投稿する予定です。

よろしくお願いします。

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