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風の想い人  作者: 北見海助
第二章 恐怖の象徴編
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百四話 風雲の悪夢

2月17日の午後8時。飯田正則と上野虹目は見ノ木村に転移した先で歩いていた。


「なんとも味気ない戦になったな。それに失ったものが大きすぎる」


落ち着いた声で話す正則も太陽に斬られた傷や疲労でクタクタになって近くにあった木の下で一休みすることになった。


「ああ本当だよ。だが『辻斬り』は殺した。またやり直せばいい話だ」


「とりあえずは辻斬りを殺したことを議会に報告して声名を出すしかない……なって聞いているか正則?」


「……ああごめん。少し昔のことを思い出していた」


「昔?」


「約30年前の『風雲の悪夢』だよ」


そう悪夢。先代が行ったクーデターだが、辻斬りは風雲の血は途絶えてないと言っていた。戦ったあの中の誰かが一族だというのかわからないな


「あの事件かー」


虹目も斬られた腹と痛みを抑えながら、そう返事をした。今は長年の目標だった辻斬りの暗殺が出来てホットしていた。


二人は空を眺めた。今日の見ノ木村の夜空は空気が澄んでいて星々がとても綺麗に輝いていた。


ー-------------


そう思い出すのは今から遡って約30年前のw150年。風魔連合共和国の首都の魔京の街外れには大きな屋敷が立っていた。その屋敷の主の名前は風雲之矢(ゆきや)。w1年までの妖魔100年戦争が終結した時の功績で妖魔共和国の重鎮となった風雲一家。w148年の時までは多くの議員に慕われ一家は犯罪などを取り締まる仕事をしており民からの信頼や仕事の実績が多くあったはずだった。


日の午後7時この日、一家の屋敷はとても暑かった。いや燃えていた。


「武器を持てー。反逆者には裁きをー」


1000人以上いる兵隊に声をかけるこの男こそが風雲家の譜代家臣の一家である飯田家の飯田正大(まさだ)だった。ちなみに譜代家臣は生花(いきはな)側近の金城(きんじょう)家、上野(かみの)家、新中(にいなか)飯田(いいだ)家の五家あった。


そして息子の飯田正則は当時9歳であった。この兵隊の中身は自分の家や味方になった家。そして風雲家に恨みがある人、金で雇われた傭兵。さらには変装でうまく正体を隠している帝国サワバ・マジックの兵隊までいた。


飯田正大が言った『反逆者には裁きを』とはこの日までに飯田家は風雲家が風魔連合共和国を独断で帝国サワバ・マジックに売国するという情報と証拠を握っていた。そして長年風雲家を不満に思っていた人々の心を掴み、風雲家を粛清すると言ってこの屋敷に火をつけて攻め入っていた。


ー-------------


「お前は俺たちの未来だ希望だ。これを持って風の民に行け。龍我透(あいつ)なら俺らの無念も分かってくれるはずだ。……人を恨むなよ太陽」


そう言って風雲之矢は太陽に黒い鞘をした刀を預けて迫りくる飯田軍に向かって刀を構える。


「親父ー」


太陽はそう叫ぶと炎が迫る屋敷の中で両親と兄、そして使用人が戦いに挑む中で黒い鞘の刀を強く握り涙を流しながら一人この屋敷を去った。そして風雲家とその戦で風雲家側で心中する形となった生花家と金城家は3時間もの間抵抗したのち、炎の勢いが弱まって行く中で最後の生き残りだった当主の之矢を殺したことによってこの戦闘に終止符が打たれた。


そして4日後、風雲家の生き残りがいないか確認した飯田家からの報告を受けた風魔連合共和国の議会はこのような情報を公開した。


『帝国に売国しようとする裏切り者風雲家は全員殺した』と。そして見つからなかった、風の民に逃げた齢15歳風雲太陽は、この時天涯孤独となった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回『風の想い人』百五話は1月20日(木曜日)に投稿する予定です。

次回もよろしくお願いします。

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