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21話~30話まで

------------------------- 第21部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

計画の始動


【本文】

「………なぁ、サーシャ」


「………静かにしてください、ばれてしまいますから」


「……いや、だからさ、サーシャ」


「……なんですか」


「俺らって星を見るために外に出たんだよな?何で魔物のあとを追ってるんだ?」


「…だって、あんな話を聞いたら普通は尾行するでしょう」


と、言うわけで現在洋一とサーシャはある一匹の魔物の後を尾行していた。

なんでこんなことしてるのかって言うと、それは数時間ばかし遡る。


数時間前。


宿の窓から地面に降り立った2人は、とりあえず静かな場所を求めて歩き始めた。

ことの発端は、サーシャの機嫌を洋一がとろうとしたからなのだが…。

できるだけ、人目につかないような道を歩き街の外に出た。

2000年のように蛍光灯のないこの世界では、あり得ないくらいの星の数々が見える。

それは、まるであの時の事を思い出させるようで…。

ふと、洋一は足を止めた。

サーシャもそれに気づき、足を止める。


「洋一…?なんで止まってるの?貴方が行こうって行ったんじゃない」


「………」


「……洋一…?」


「……、すまん。ちょっと色々と思い出しててな……」


「……そう…」


「…さぁ、行こうぜ。こんなきれいな星空滅多に見れるもんじゃないからな」


そう言って、また2人は歩き出した。

少し進んだところで、洋一とサーシャは地面に腰を下ろした。

ただ、なんとなく2人して空を眺める。

その景色は、全てを呑み込んでしまいそうな漆黒で、それでいてそこに輝いている小さな光がとてもきれいで…。


「…そう言えば、貴方はさっき何を思い出していたの?ロマンチックな事かしら?」


と、サーシャが先ほどの事を少しからからかうように尋ねてきた。


「……そうだな…。サーシャにならいいか…」


「……え、いいの?」


「あぁ、勿論さ」


そうして、洋一はその空のある一点を見つめて、こう言った。


「俺な……家族と仲間を少し前に殺されてるんだよ。こんなきれいな夜空の日に」


「…………」


「…だから、その時は戦うのが凄く…物凄く嫌いになった。けど…守りきったものもあったんだ」


「…………」


「…だから、俺はこの時に思ったんだ。俺は夜の象徴になればいいって。何があっても絶対に消えることのない淡い光を…あの月のように輝き続けようって……、ってサーシャの気分転換のつもりだったのに何かごめんな」


「ほんとですよ。……でも、貴方はよくそれを乗り越えれましたね。因みに聞いていいのかわかりませんが、殺されたのは一体何から?」


「……グレゴリアス」


洋一がその名前を口にした途端、サーシャの顔色が一変した。

先程までは、やれやれ仕方ない聞いてやるか、と言うような感じだったのだが今は驚きと何かしらの感情が混ざった表情をしていた。

そして、そこに先程までのサーシャはいなかった。


「……それは…、本当ですか?」


「…あぁ、そうだが……どうしたんだよそんな怖い顔して」


「だって!……その魔物は」


「……それで、計画は実行にむけて進んでいるのか?」


サーシャが声をあらげたその時だった。微かに聞き取れる程度でそんな声が聞こえたのは。

2人ともその声に反応してすぐに身をかがめる。

こんな夜遅くに自分達以外の人間の声が聞こえるなんておかしい。

もし、人ならば灯りとなる何かを持っていてもいいはず。

なのに、視界にはそんな光さえも入ってこなかった。と、言うことは……。


「…魔物か?」


「…えぇ、しかも今の自分達では敵わない変異種のリザードマンですね…」


サーシャはこちらの方をちらと確認する。

どうやら、さっき聞こえた計画が何なのか気になるようだった。

勿論自分も気になっていた洋一は、コクリと頷くとそのままリザードマンに気づかれぬように後を追った。


そして、今に至る。

気分転換に出た筈なのに、気づけば魔物を尾行することになってしまった。

だが……この魔物、いったいいつになったら足を止めるんだ?もう結構街から離れてしまったが…。


「洋一、見て。足を止めましたよ」


サーシャにとても小さな声で話しかけられ指を指している方向へと視線を動かす。

見ると何匹もの同じモンスターと闇の魔力が体から溢れでている魔物がいた。

どうやら、さっきまで尾行していた魔物はこの親玉みたいなのの部下みたいだった。

…しかし、話が全く聞こえない。尾行あるあるだと思うが、敵との距離が少し離れすぎているのだ。

どうにかして近づけないものか…。

サーシャも同じことを考えているのか、周りの木々を見たり何処に隠れられるか探っている。

こんな様子を見ていると、この子は本当に商品関係のギルドに入っているのかが怪しくなってくる。

こんな技術いるのか?そう思った時だった。


「はぁ…はぁ…やっと見つけましたよ!駄目じゃないですか!こんな夜遅くに街の外に出ちゃ!」


最悪のタイミングで後を追ってきたと思われる兵士から大声で話しかけられた。

勿論、そんなことすればどうなるか。

急いで、サーシャと洋一はその兵士の身を伏せさせるために出来るだけ低い姿勢で飛ぶ。

だが……次の瞬間、その兵士の上半身は肉片と化していた。

変異種のリザードマンがこちらの前にいる。

いや…、全方位か…。

サーシャと背中を合わせるようにして周りに目を配る。

囲まれたのは…リザードマンだけにらしい。

あの、禍々しいオーラは感じ取れなかった。

だが、それでも危機的状況なのに変わりはなかった。

と、そこに……。


「…うわぁぁぁぁ!!」


変な所から兵士が1人自分達の所に転がり込んできた。

槍をブンブンと振り回し体にくっついたケルミン数匹を振り落とそうとしている。

こ、こいつ…こんな状況で何してんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

それは、あの時助けてくれた弱虫兵士だった。


------------------------- 第22部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

皆殺しの始まり


【本文】

「うわぁぁぁ!!」

目の前に魔物の、しかも可愛いケルミンにホムホムッとされている弱そうな兵士がこの最悪の状況の中飛び込んできた。

どうやら、洋一達を助けに来たわけではなくケルミンに襲われていたらしい。

……サーシャみたいだな…、とこの命の危うい状況でそんなことを思ってしまった。


「洋一!飛んで!」


後ろから声が聞こえ、言われるがまま飛ぶ。

後ろで何かが空気を切り裂く音が聞こえる。どうやら、相手は爪で攻撃してくるらしい。

でも、戦うにしても武器をまだ新調してないからあるのは神器のみ…。

さて、どうするか……。


「うわああぁぁぁ!!!こっちに来るなー!!」


少し離れたところから、聞いたことのある悲鳴が聞こえる。

見ると、さっき逃げてた兵士にリザードマンの爪が降り下ろされようとしていた。

咄嗟に、神器を掴んだ。

まだ…まだ間に合う!

ギアで思いっきり前に飛び剣を敵の喉元めがけて斬りかかる。

「gyじょsj」と微かな声でそいつは声を発した。

そして、地面に倒れたと同時に首と体が分断した。


「…ハァ……ハァ……」


ま…間に合った…!!

その兵士の所に近づくと完全に意識を失っていた。

どうやら、死ぬ恐怖に負けたようだった。

でも、助けることができてよかった…。


「まだですよ、ご主人様。あと3体程残っているので倒しにいかないと」


「そうだな……、って風華!?何で!?」


「…自分で呼び出しておいて、それはないでしょう…。まぁ無意識にでも私を抜くことができたから、それだけでも成長したってことですね」


「さりげなくディするのやめない?」


「ほら、早くあの子のとこにいってあげないと。男として失格ですよ」


「はいはい、行きますよ」


風華に言われるがまま、洋一はサーシャの所に行こうとして、そういや兵士いたな…と思いだしそいつをおんぶしてサーシャの元へ急いだ。



「遅かったですね。そちらの殲滅は終わりましたか?」


「…え?いや、サーシャ?何でこんなにも簡単に倒しちゃってるの?」


サーシャの場所まで急ぎ足で行ったところ、まるで魔物なんて出くわしませんでしたよ?と言うくらのスピードでサーシャがあの人数差で勝利を手にしていた。


「前からこういうことはよくあったので…。それより、急いで街に戻らないと色々とめんどくさいことになります」


「と、言うと?」


「あの街が消滅するかもしれません」



2人+お荷物1人+風華で街へ向かって走り出した。

結構な距離をあけてしまったせいで、急いでも20分はかかりそうだった。

そして、そこで風華の存在について聞かれ、ここまできたら隠す訳にもいかず正直に黒の神器について話した。


「成る程…つまり、貴方は神に選ばれた、と言うことですね」


「うん、ごめん。何言ってるのかさっぱりわかんない」


「知らないんですか?黒の神器は光と闇を超越した人物、又はある特定の条件を満たさないと試練にすら挑ませてもらえない、とても貴重な物なんですよ?」


「………そうなの?風華?」


「そこは、私には語れないわ。まぁ確かに条件を満たさないと試練に挑ませてもらえないっていうのは確かだけど。それよりも、そのお荷物君いい加減起こしたら?」


風華が洋一の背中を指しながら言った。

確かに、こいついい加減起こしたほうがいいと思う。と言うか起こしたい。

後ろでイビキかかれてヨダレも滴ながら寝てるから正直邪魔で仕方がない。ぶん投げたい。

そして、そう思ったときにはそいつを思いっきり前に向かってぶん投げていた。

ガチャガチャと鎧がいい音をたてて地面に衝突する。

「ぐっほぉ!!」と凄く痛そうな声が聞こえた。

涙目になりながらそいつは頭を押さえて


「痛い……」


「そりゃそうだろ。ぶん投げたんだから」


そこで声をかけて初めて自分達の存在に気がついたのか、少し驚いていた。


「貴方は…あの時チンピラに絡まれてた人ですね!」


そうだけど!確かにそうだけど!今そういうこと言わないでくれるかな!?

後ろから、感じたことのない黒のエネルギーを感じる。

これは……絶対にやば


「その話。後で絶対に吐かしてあげますから、覚悟しといてくださいね?」


にっこりと笑いながら、サーシャが洋一にむかって微笑むとその兵士を起こして街に向かって走っていった。

いや……怖っ!!これ戦いが終わったあと絶対に尋問されるやつや……。


「あの…何か僕、悪いこと言いましたか?」


言ったよ!言っちゃったんだよ!見たらわかんだろ!?

しかし、そんなことを口に出すわけにもいかず2人ともサーシャの後を追った。



「へぇー、ジャルっていうのか」


「はい、そうです。そして洋一とサーシャさんですね?」


「まぁそうです。今はとりあえずこのくらいにしておいて、街に戻ったら直ぐに避難の誘導をしないと行けないので、貴方から話をつけといてくれませんか?何か言われたら"ユーリュに頼まれた"と言ってください」


「は、はぁ」


ユーリュという言葉にどんな意味があるのか、この時の洋一は考えてもいなかった。

これが、後々残酷な運命に絡んでくると。



そして…街が目の前に見えてきた。

あと、数百メートルも行けば街にたどり着く。

何とか間に合った…。そう思ったとき、何か違和感を覚えた。

そう言えば……あの時の明らかにオーラのおかしかったやつ、どこに……まさか!!

そんな悪いことを考えてしまったときだった。

街から爆発音と悲鳴が聞こえてきたのは。


------------------------- 第23部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

神器の持つ力


【本文】

街の正面入り口の門にたどり着いた時だった。

爆発音と炎が同時に上がったのは。

たどり着くのが遅すぎた。

門の前では体が完全に切断され、小腸や胃がプルンとした状態で地面に転がっている。

あまりにもグロイ光景に、ジャルは地面に胃のなかの物をぶちまけた。


「ジャル……大丈夫か?」


「いいえ……それより、あなた方は平気なんですか…?」


「俺は……"馴れてる"から大丈夫だが…サーシャは?」


「商売で戦場に行くことなんてよくあることです。それより、急ぎましょう。多分この様子だと、軍は全く役に立ってないようですね」


その時、門が開いた。人1人が通れるようなその隙間からは、頭から血を流しているジャルの上司と思われる人が呻きながらよたよたと歩いてきた。

そして、ひろ達の目の前で立ち止まると目が上を向いたかと思えば首が地面にドサリと落ちた。

それで、気を失いそうになるジャル。

流石にここまでグロテスクな光景を見るのは久しぶりだったので、洋一も少し気持ち悪くなったが、それでもここで立ち止まっていてはなにも始まらない。今この街を救えるのは自分達だけなのだから。

自分にそう言い聞かせ、神器の風華を握ると無表情のサーシャと怖がっているジャルと一緒に門を潜った。

炎が渦を巻き、人を巻き込み、魔物が叫び声にも近いかなきり声で人を斬っては楽しんでいる。

まさに、地獄絵図だった。

その光景に我慢できなかった洋一は、その衝動に任せて剣を振るった。

瞬間、何かが引きちぎれる音と終わる音が聞こえる。

ドクンと、脈を打っているそれを冷酷に投げ捨てる。

それと同時に魔物は叫び声とともに光の粒となって消滅していった。

こんなこと一度も起こったことがなかったので、洋一は少し戸惑った。

その時、剣と姿を変えている風華が話しかけてきた。


「困惑するかもしれないけどそれが、私達神器の持つ力。悪しき者を滅する力よ」


「……じゃぁ、あの時倒したビッグブルは……」


「少なくとも、悪しき者ではないはね、まぁ原因は私達の試練でしょうけど」


オイコラ、と風華を軽く叱っているとサーシャとジャルがこちらにやって来た。

数匹の魔物を連れて……。


「あー!!無理です!こんなの僕には絶対に倒せません!」


「うるさいです!ちまっちま言ってる前にさっさと戦おうとする意志を示してくださいよ~!」


うっっわ。ジャル気、弱っ!!

確かに、ケルミンにビビってあんなところに突っ込んできた男だからな…。

でも前に、ジャルを見たとたんチンピラどもがビビってたのは何でだ?

そんなことを疑問に思いつつも、サーシャとジャルが連れてきた魔物に石ころを投げつけ、意識を一瞬そらす。

その間に、サーシャがお得意の爆発系クオーツを魔物にぶつける。

ゼロ距離で爆発したが、ジャルがビビリだったこともあってか、大きなシールドのおかげで2人も無事だった。


「大丈夫か?」


この状況で苦笑いするのも可笑しいとはおもったが、この2人を見ると苦笑いするしかなかった。


「私は大丈夫ですけど……」


「無理無理無理無理!!こんなの絶対に生き残れるわけがない!」


相変わらず、ネガティブな発言を繰り返すジャル。

戦場で、こういう性格奴は大概死ぬことが多い。

どうか死なないことを願うが。


「ぱっとみ思ったんですが……市民と思われる人がいませんね」


サーシャがそう言って、周りを見た。

確かにそうだった。転がっている死体はどれも兵士のものばかり。


「と、言うことは市民の避難誘導はしなくていいから……」


「親玉を探してやっつける、ってところでしょうか?」


「そうだな。それじゃとりあえず、明らかに雰囲気や姿が全く違う魔物を探していこう」


と、洋一とサーシャの2人だけで、話し合いがまとまってしまい、さっきから駄々をこねているジャルは、サーシャに何発か蹴られたあと、渋々半泣きの状態でついてきた。

このメンバー……色々と大丈夫か?と思わずにはいられなかったがそんな贅沢は言っていられない。

なんせ、ここは2013年じゃない。1000年も前の世界。

あの時代のように名声はこの時代じゃ通用しないのだから。

そして、周りを警戒しながら進んでいると、噴水のある広場に出た。

そして、そこに"奴"ははいた。


------------------------- 第24部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

ペインキラー


【本文】

「避けて!」


サーシャのその言葉と同時に何かが頬をかすったような気がした。

反応しきれず、ただ棒立ちになる。

ぽとりと、頬から赤い液体が落ちる。

…血………。

瞬間、あの時の記憶がよみがえる。

あの時、体の半分が闇に浸食され回復魔法が効かなくなったルル。

救いたかった、救えなかった。

だから、生き返らせるためにあれからの試練を受けた。

だから…

”まだ、こんなところで死ぬわけにはいかない!!”

2発目が飛んできたのを、風の流れで感じた。

それを、神器で受け止める。

思ったよりも重く後ろへと弾き飛ばされてしまい、建物に背中をぶつけた。

体の物をすべて吐き出しそうな痛みが背中から襲い掛かる。

それを、口には出さずただ奴をまっすぐと見ながらゆっくりと傷ついた体で立ち上がった。


「…ほう、1発目でかすり傷。さらには2発目を耐えきれる人間がいたなんてな…驚きだぜ」


奴が初めて口を開いた。

空は静寂を守り続けており周りは赤々としたものがうねうねと動き奴を鈍く照らす。

その時初めて、マントとフードを身に着けていることに気が付いた。


「誰だ…おまえは…」


洋一がそう問うと、奴がフード下でほくそ笑んだ気がした。


「おいおいおいおいおい……、まさか、俺の事を聞いたことがないってかぁ!?そりゃすげぇ!!どこの田舎もんだよおめぇさんはよぉ!」


「………」


「だが……おめぇさん、強いんだろう?特に”その獲物”持ってるってことはよぉ」


洋一の持つ神器を指さしながら奴はいう。

その時裾から出た指は人間のそれではなかった。

化物、その考えしか浮かばなかった。

しかし、奴はあの時感じた強力な邪気を体にはまとってはいなかった。

何だ…、一体どういうことだ…。こいつが魔物を使ってこの街を襲わせたわけじゃないのか…?

ならいったい、あいつはどこに………。


「なんだい、考え事かぃ?そりゃぁよくねぇ。人の話は聞くもんだとおかんに習わなかったのかぃ?」


「っ!!」


気づけば、奴が自分の顔を覗き込んでいた。

いつの間にこんな近くまで接近されたのか。

恐怖というものに縛られそうになったその時、


「掴まってください!!」


サーシャが横からジャルを抱えた状態でものすごいスピードで接近してきた。

右手を差し伸べられ、すぐにその手を掴む。

そして、通り過ぎると同時に、サーシャは奴に向けて何個も爆発系クオーツを投げた。

後ろで爆音が響く。

しかし、その爆発は、周りの炎に包み込まれすぐに消滅してしまった。


「よかった…まったく心配かけないでくださ」


「ひどいことするなぁ嬢ちゃん。あぁ!?」


奴の声が真横で響いた。

すぐにサーシャは逃げるための準備をするが、それでも間に合わず腹に重い蹴りを一発くらってしまった。

それと同時に3人とも吹き飛ばされる。

洋一は地面に何度か転がり、サーシャは壁に直接叩きつけられ口から赤いものを噴出し、ジャルは最初から気を失ってたのか、地面を転がっても特に何の反応も示さなかった。


「サーシャ!ジャル!」


腕を引きずったせいでそこから血がありえない量出てきた。

それを回復魔法で一瞬で回復して、ジャルを回収しサーシャの所まで向かう。

サーシャが倒れているところに着くとそこには奴がサーシャにとどめを刺そうと人のそれではない指を胸に突き刺そうとしていた。

その時、”体が勝手に動いた”

まただ、この感じ。まるで脳で考えてることが体ですぐに実行される感触。

気づけば、奴の指を剣で受け止めていた。

重い。指を振り下ろしているだけなのに、ものすごく一撃が重い。

けれど、何とかサーシャを守ることができた。

今は、それだけであのころとは変わったんだろうとそう思った。

そして、この状況を一番驚いているのは奴だった。

フードの奥から見えるギラリと光るその目は、驚きを隠しきれてはいなかった。

すぐに奴は自分から距離を置くと笑い始めた。

とても奇妙で、今起こっていることが面白おかしいことのように。


「……いやぁ…いいぜぇお前さん。名前は」


「……洋一」


「洋一!そうかそうか……そりゃいい名前だな!」


「そういうあんたは、何者だ」


「俺か……俺はなぁ………」


その時、奴が自分の視界から消えた。

自分の周りを、風が猛スピードで動いているのがわかる。

そして、それは自分に向かって飛んできた。

金属音があたりに響き渡り火花を散らす。

自分は、剣を両手で持ちその衝撃を受けとめる。

その時、奴はケタケタと奇妙な声を上げながら、奴は自分の名前を言った。

俺の名前はなぁ、”ペインキラー”っつうんだよ。

だがそんなこと聞いている場合ではなかった。

感じたこともない、あまりにも大きすぎるその力が自分の体にのしかかってくる。

骨が奇声を上げ、体がこれ以上受け止めるのは無理だと叫んでいる。

自分は、突っ込んできた奴の勢いを受け流すために、剣を軸に体を動かす。

横にずれた瞬間、剣と腕ごと奴に持って行かれそうになったが何とかこれをいい感じに流すことができた。

腕がつながっているのか、自分でも驚くほど自信がなかったが、感触があった。

まだ、いける。

今度はこっちから仕掛ける。風華を強く握りしめ奴に向かって雄叫びを上げながら突進する。

それと同時にそこら辺の小石を剣で一度斬る。

奴は、俺が真正面から突っ込んでくるのを確認すると、まがまがしく鈍く光る刀身を見せつけるように裾からだし、自分に斬りかかってきた。

多分、長さ的にあれは短刀…か?

それを空中から確認できただけでも連日で使ったかいがあったってもんだ。

奴は、真正面から斬りかかってくる自分の、脳天めがけてその短刀を突き出す。

びゅん、とものすごい音がして風が”石ころ”を粉々に砕いていく。

殺せるとでも思っていたんだろう、奴は真正面からやってきた自分が石ころだったことに驚きを隠せないのか、なにやら悔しそうに、けれども嬉しそうに舌打ちをした。

そう余裕ぶっている奴の背後に着地した自分は、すぐさま一撃を入れるために走り出す。

奴の背後まで接近すると、弧を描くように剣を下から振り上げる。

だが…、自分はこの時あまりにもうかつに飛び込み過ぎた。

なぜなら、奴は片方の腕の裾からしか短刀をだしていないから。

こういう相手に限って、隠し武器は持っていることが多い。

だが、このことを考えている時には奴の腕からまったく同じ形の短刀が自分の心臓をとらえていた。

防ぎきれない!そう思った。

ヒャッハー!!と奴は叫びながら自分の心臓めがけ、先程のように早すぎる風を前に打ち出す。

自分は、その衝撃を受け後方へと吹き飛ばされる。

お腹の物が口から出そうになる。

だが、心臓は自分の体についたまま今も動き続けている。


「今のご主人様では、勝てない敵だと推測。…まったく、少しは黒の神器の所有者としての力を見せてほしいものよ、ねぇ風華?」


「お姉様!…はい!確かにその通りですね!」


「ほら、いつまでぼけーっとしてるの。こっちも力を貸してあげるから、あそこでぶっ倒れてる2人の為にも頑張りなさい」


「いや、……確かにそうだけど、おまえなぁ水連」


「私を呼び出せないご主人様が悪いんじゃない」


自分の力不足を他人事のようにディスってくる水連。

確かにそうなので、何も言い返す言葉が浮かばない。

だが、先程彼女が鞘から出てきて自分をかばってくれなかったら、今頃とっくに死んでいただろう。

彼女らを手に取り、立ち上がると奴は自分を見て、また大声で笑った。


「こりゃぁすげぇ!俺の攻撃をここまで喰らって生きてるやつは初めてだぜぇ!……やっぱあんた最高だなぁ……。これだから、殺しはやめられねぇんだよ!」


そう叫びながら、短刀2本を振りかざして攻撃してくる。

だが、自分はそれを受け止めると、瞬間しゃがんで奴にカウンターをぶちかました。

その時、奴はフードの中で笑みが消えた。


「……ハハ、今まで長いこと生きてきたが、まさかぁ初めて攻撃をもらうとは思わなかったぜぇ……」


「…そうか、なら俺はもう一度自己紹介させてもらおう」


自分は奴に向かってそういうと、風華を奴の方に向けた。

これは、俺があの時の肩書を捨てるのにはちょうどいい機会だ。

だったら、ありがたく使わせてもらおう。


「…元妖刀”楓”が使い。現、黒の神器所有者、高田洋一。ペインキラーという壁をここで今超えさせてもらう!」


「ヒャハッハッハッハー!!やってみなぁ!!俺を殺せるもんならなぁ!!」


そしてまた、両者の刃が激しくぶつかった。


------------------------- 第25部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

圧倒的チカラ


【本文】

赤に包まれる街の中、そこにまったくそぐわない金属音が鳴り響く。


「おおおお!!」


「っしゃー!!」


何回も何回も、ぶつかってくる奴をただひたすらに受け止め反撃する。

しかし、あの時当てて以来、攻撃が全く当たらない。

あの短刀が奴の動きのアシストをしているせいで、すばしっこすぎる。

どう封じ込めばいいのか、まったく案が浮かんでこなかった。

あぁ、今ここに葵がいれば、きっと打開策をすぐにでも提案してくれるのに。

とかなわない願いを思いつつも、目の前の戦闘に集中する。

奴の特徴は、多分だが名前の通りに痛みを感じさせずに、つまり一撃でしかも痛みを感じる前にはもう死んでいるんだろう。

仮にもし、そうであったとしても自分がここであきらめるわけにはいかないけどな。

サーシャには迷子の所を救ってもらった音があるし、ジャルは……えーっとあれだほら。

守ってあげたい…?って今何考えてんだ自分は!あいつ男だろうが!

と、変なことを考えている間にもあの風の斬撃が何発も飛んでくる。

眼で見えない分体で感じ取るしかないので、予測と風華のサポートを使って何とかかわしていく。

そのあとは、水連の能力を使い居場所を特定しようとするが、まったく場所が特定できない。

ここまで実力の離れた相手だと、正直負けそうな気がしてならない。

けれども、こんなところで、みんなとの再会を果たす前に死ぬわけにもいかない。

だったら、短時間で一気に決めるしかない。

体中の全魔力を活性化させ、青の片眼を開放する。

もっても1分。捉えられない敵だろうが絶対に当てて見せる!

力を発動したおかげか、奴をとらえることができるようになった。

だが…、

脳で考えていることと体の動きがリンクしない。

それどころか、体の動きも合わなくなってきた。


「……おまえさん、つまんねぇな。やっぱ、遊ぶのやめるわ」


「っ!」


自分が予想したよりも弱かったせいなのか、奴はものすごくイライラしていた。

それどころか、さっきはあんなに距離を置いていたのに、急に距離を詰めてきた。

金属が激しくぶつかり火花を散らす。

その力は、先程受け止めた時よりも力強く、あっという間に力で押し負けてしまった。

そのまま、地面にたたき倒されそして、心臓をえぐられた。


「……つまんねぇおもちゃだったな…」


そういうと、奴は俺から遠ざかっていった。

……まだ…………ま………だ……


”お前さん生きたいだろ?”


脳内に直接、誰かが話しかけてきた。


「…だ…………れ……」


”そんなのは、どうだっていい。こっちもお前さんには死なれると困るんだ。だから……その体借りるぞ”


ここで、自分の意識は完全に途絶えた。


頭が、ガンガンしていたい。

先程までぶっ倒れていたジャルは、そんなことを思いながら、ふらつく足で立ち上がった。

すでに日が昇ってきているのか、木々の間から光がさしていた。

だが、その新しい朝をこの場で迎えられているのはどうやら自分だけのようだった。

すぐ近くには、体がボロボロの少女と、白の槍を持った助けてくれた少年と……。

……白の槍?そんなもの持っていたかあの少年は。

パッともう一度倒れている少年をもう一度見ると、その槍はもうそこにはなかった。

それと同時に、少年が意識を取り戻したのか立ち上がろうとする。


「………」


「あ……あの、大丈夫………ですか?」


「………行かなきゃ、あそこに。あいつがいるなら……早く……」


そういうと、少年は霧のかかった魔女の森に向かって、歩き始めた。


「ちょっ!駄目ですよ!霧が出ている最中に魔女の森に入るなんて!」


だが、ジャルの言っていることが聞こえないのか、その少年はそのまま霧の中へと吸い込まれていった。

……追いかけなきゃ……!何としてでも!

そうして、ジャルは霧の中に飛び込んだ。



気持ちが悪い。それが目覚めた時感じたことだった。

あたり一面血の匂いがして、本当に気持ちが悪い。

そんな中、サーシャは体を動かし立ち上がった。

先程まで、行動を共にしていた、二人の姿を探す。

だがそこに彼らの姿はなく、地面には森へと続いている足跡だけが残されていた。


「まさか…!魔女の森へ!?」


あそこは、幼い魔女たちを守るための魔物が放たれているのに!

早くいかないと!

その時だった。


「はいは~い、サーシャちゃん♪元気にしてた?国王様もあなたから連絡が来ないって心配されてたわよ?」


うるさい定時連絡が入った。


------------------------- 第26部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

魔女の森 濃霧


【本文】

「はいはい~、定時連絡の時間だよ~。さぁ!洗いざらいすべて話しなさい!」


と、楽しそうに連絡相手の子がしゃべる。

と、いうか定時連絡なのになんで報告だけ尋ねてくるのか。

けれど、そんなことは気にせず相手はこの時を楽しんでいる。

やっぱりギルド設立時から変わらない。


「何ですか…ナタリーさん」


「いやいや、我らがマスコット、サーシャちゃんがどこぞの男に取られてないか心配でしてね」


「そんな冗談は良いから。で、定時連絡ってのは?」


「いや~、サーシャちゃんが最近全然連絡してくれないから、男でもできたかなぁ~って」


「そんな変な心配しないでください!」


ケラケラとした笑い声が機械越しに聞こえる。

少しムカッともきたが、この人はなぜかどうしても憎めない。


「それで本題なんだけど、そちらのほうでペインキラーらしき人物が目撃されてるから、注意してっていう連絡なんだけど」


「………遅いですよ、連絡が」


「ありゃま、もう鉢合わせたか。………それで、”同業者”としてどうだった?」


「そんなことより、私のあの武器を送ってほしいんですが。早くしないと…」


「…んん?早くしないと?…はっ!まさか本当に男ができたのね!!」


「違いますから!!」


どんな話も恋愛がらみにさせようとしてくるこの人は本当にめんどくさい。

このままだと、話が終わらなさそうだったのでサーシャは連絡を切った。

そして、武器を送ってくれることを信じて魔女の森に飛び込んだ。



「あらら、逃げられちゃった。でも生きてはいるみたいね。これで安心かしら?国王様」


「あぁ、流石我が義娘だ。逞しく成長しておる」


「心配なら自分で連絡すればいいのに…」


「恥ずかしいじゃないか」


「はいはい、そうですねー」


「こ…国王様ー!!」


突然王室の扉をどたばたと騒がしく開け1人の兵士が入ってきた。


「何事か……何だ。カイルか」


「何だじゃないですよ!助けてください!また姫が!!」


「見つけたよーカイルー!!さぁ!今日こそ私の台座に貴方のエクスキャリバーを突き立ててもらうわ!」


「ひぃーー!ご勘弁をー!」


「……姫様、そんな言葉いったいどこで……ってまた猥本ですか。こんなものは没収です」


「あー!私の秘蔵コレクションがーー!返せー!ナタリー!」


あれ…何か大切な話があったような気がしたけど……。ま、いっか。今は姫のこの癖をどうにかするとしますか。

ナタリーは、姫の首襟をむんずと掴むと説教をするために部屋まで引きずっていった。

相変わらず王国·アラマティウスでは騒がしい日々が続いていた。



最初に森に入った瞬間から感じられたのは、気持ち悪いほど空気中に充満した血の混じった臭いだった。

おもわず鼻を摘まむ。それほどまでに激臭なのだ。

辺りを見回そうとしても霧ばかりで、全く見えないしこの臭いのせいで集中もできない。

とりあえず、サーシャは道なりに進んでみることにした。

確か魔女の村までは2キロ位だったはず。

きっと、2人ともそこに向かったに違いない。

この状態で向かい側に抜けるだなんて至難の技だしね…。

足跡も途中から消えてしまい、現在コンパスの針を信じて魔女の森の中央に向かう。

その途中、新米魔女ご一行と引率の熟練魔女に出会うことができた。

どうやら今日は魔女認定試験の日らしい。

だから、外部から誰も入らないようにこの霧を婆様が出したのだと、そう言っていた。

危ないから貴女もついてきなさい、と引率の熟練魔女に言われ半ば強制的に魔女の村に転移させられた。

転移した先はどうやら広場のようで、新米魔女達でごったがえしていた。

だが、その中に彼らの姿は見つけることが出来なかった。


「洋一ー!えーっと……あと誰だっけ…?ジャルー?」


広場の真ん中で大声で呼び掛ける。だが、彼らの返事は返ってこない。


「洋一ー!ジャルー!」


「そこの貴女!ちょっと待って!」


後ろから、1人の魔女に声をかけられた。

振り向くと、周りは皆黒の服を着ているのに対し、この子だけ白でできた魔女の服装だった。


「…何ですか?」


「1つ聞きたいの。貴女がさっき呼んでいた人の名前。出来れば洋一の方のフルネームって分かる?」


「それを聞いてどうするんですか?」


「…もしかしたら…はぐれてしまった仲間かもしれないから…。理由はこれでいい?」


そう言えば、確かに洋一も仲間を探してるとか言ってたような……言ってなかったような……。

ならここは、先にこの子が洋一の仲間なのか確認しといても問題なさそうね。


「ええ、十分ですよ。その人の名前は高田洋一です」


その名前をいった瞬間、その子の表情が変わった。

なんと言うか、嬉しいを通り越したような異常な喜びと同時にその嬉しさのあまり涙まで流していた。


「え、いやあの」


「…やっと…やっと見つけた……。ねぇ!今その人は、ひろ君はどこにいるの!?」


その子はサーシャの腕を掴むと、そう尋ねてきた。


「それが分かっていれば、あんな大声で呼んだりしません!大体貴女は彼の何なんですか!」


そう。今一番の疑問はそこだ。

見つけたとしかいっていない彼女、それは仲間を見つけたと言うことなのか。それとも目標を見つけたと言うことなのか。

仮にもしこの子が裏の仕事を負っているのだとしたら、教えるわけにはいかない。

そんなやり取りをしている最中だった。

近場で、ドーン!と大きな何かを叩きつける音が響きわたった。


「な、何!?」


「闇撃退用の魔物が動き出してる……何で……」


上空では、熟練魔女達が魔物の被害が村に出ないように村を覆うようにシールド展開させていた。

そして、シールドを張り終えたその時だった。

大怪我をした洋一をおんぶしジャルがこちらに走って来たのは。


------------------------- 第27部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

15分の死闘の始まり


【本文】

シールドを張り終えて直ぐに姿を現したジャルは、そのまま顔面をシールドにぶつけた。


「あべしっ!ななな何だこれ?ってシールド?!あ!サーシャさん!」


「何してるんですか!早く中に!!」


「入れれば入ってます!それよりも洋一さんが……」


「何?洋一に何かあったの?」


「えぇ、実は……っていまそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!」


そう騒いでいると、後ろでドシンと鈍い音がした。

何かの触手らしいものが、ジャルの背後付近に叩きつけられていた。

地面がぱっくりと割れていて、多分普通にシールドで防いだとしても、簡単に割られて死ぬだろう。


「死ぬー!死ぬー!サーシャさん!ヘルプ!」


「行きたいけど行けないのよ!自分で何とかしなさい!」


「………あ、あの!」


ギャーギャーと騒いでいると横から声をかけられた。


「少しだけ時間を稼げますか?」


見ると、先程の白い服の魔女だった。


「何か策があるの?」


そう問いかけると、コクンとうなずき「待っていてください!」とだけ言い残して、何処かへいってしまった。


「だそうよ、ジャル」


「だそうよ、じゃないですよ!僕近接戦闘は無理なんですよ!!」


「あら?貴方の家系って有名な槍の名手の子孫じゃ無かったかしら?」


「な……何でその事を………」


「はいはい、それはあとで教えてあげるから、今は前に集中しなさい!来るわよ!!」


それと同時に、鞭のように何本もの触手がジャルに襲いかかった。




「ばば様!」


「おやおや、どうした葵。そんなに焦ることもないだろうに。大丈夫、試練ならちゃんと受けさせてあげるよ」


「そうじゃないんです!」


「ならなんでここに来たんだい?まさか、シールドを外してくれとでもいいにきたのかい?」


「………っ!!!」


「図星だね、でもいくら貴方だからといってそう願いを聞くわけには」


「ひろ君がいたの」


「ん?」


「私の…とっても大切な仲間が!はぐれてしまった仲間がいまそこにいるの!」


「それで?」


「……もう………あの時のように大切な人を失いたくない……だから!!」


「……………」


しばらくのあいだおも苦しい空気が続いた。

その間ずっとばば様は、私の目の奥深くをのぞきこんでいた。

そして、ため息をホゥとつくと、「仕方ないね」とだけ言うと葵の下に魔方陣を展開した。


「これは……」


「15分できっちりと倒しておいで。ついでにさっきまで話してた子もおまけでつけといてあげるから」


葵の表情がぱぁっと明るくなり「ありがとうございます!ばば様!」と言うのと同時に、シールドの外に葵の体は転移した。



「ぬわー!!死ぬー!死にますってサーシャさん!というか、いつから外に!?」


「私が聞きたいんですよ!あーもう!さっきまでいたあの子はいったいどこに」


「お待たせしました!!」


と言うと同時に触手が何かしらの魔法によって攻撃され、浄化された。


「まさか……上位属性!?」


「凄い……」


敵の攻撃が緩んだので、走り回っていたサーシャとジャルは白い服の魔女のもとに向かって走った。


「ナイスタイミングです!貴女名前は?」


「葵です!」


「指揮経験はあるわよね?そこの馬鹿に色々と教えてあげて」


「な……僕はそんな馬鹿じゃ!」


しかし、ジャル返事を聞くことはなくサーシャは武器を装備すると真っ先に霧のなかに突っ込んでいった。


「とりあえず、…ジャルさん?でしたっけ。私が貴女の魔法にあわせるので、何でもいいです。魔法をぶつけてください。できるだけ火属性がいいですが」


「了解です」


「あと、ひろくんはそろそろ下ろしてください。治療しながら戦いますから」


え、そんなことできるの?とジャルが疑問を抱いたときに目の前からサーシャが吹き飛んできた。

そのまま勢いよくはねとび、シールドに背中をぶつける。

苦しそうに咳をしながら立ち上がるサーシャをみて、ジャルの膝が笑いだした。

そして、それと同時に触手の持ち主が姿を現した。


------------------------- 第28部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

I can fly!


【本文】

「グッゲログアアアアァァァァァァァァアアアアアア!!!!!」


咆哮。

力強く周りの者がすくんでしまいそうな程大きい。

濃霧で辺り一面が見づらいなか、触手の持ち主は姿を現した。


「……あれ、なんですか」


「マンドラゴラ、新米魔女を守るために婆様がお作りになった魔物です。ほら、一撃目きますよ」


「何でそんな余裕あるぎゃぁぁ!!」


横からブンと触手による攻撃をジャルのみが豪快に位シールドに叩きつけられる。


「っ!……あれ、そんな痛くない」


「私がシールド張ったんですよ!早く立ってください。あのサーシャとか言う子だけじゃ、絶対にもちません!」


この子凄い厳しいな…、とジャルが思っていると、二発目がきた。

これを、ジャンプしてかわすと魔女の子から触手にむかって火属性魔法を!!と叫ばれたので、躊躇なく打った。


「ガイア!!」


その瞬間、真下に超巨大な炎の火球が現れ、触手どころか地面すらも溶かした。

これには、戦っていたサーシャも驚いて戻ってきた。


「……何してるんですか」


「……貴方、味方を殺すき?」


「ごごご、ごめんなさい!!つい、打っちゃって……」


「でも、ガイアって火属性魔法の上級技でしたよね。それを使える事は凄いです!根性ないのが残念ですけど」


葵がジャルにむかって、心にグサッと刺さる言葉をふりかける。


「本当、根性ないし雑魚の魔物にもビビってるし」


そこにサーシャがおいうちをかけてさらにジャルの心をえぐっていく。

ジャルの目がウルウルとなりだしたそのとき、


「グルグゴグギギュガアアアァァァァァァァアアアアアアア!!」


と咆哮が響いた。

魔物を見ると、皮膚の色が完全に変色していて、もう前のような植物の魔物とは思えないような色をしていた。

そして、触手を完全に溶かされたことに怒っているのか、ジャルが視界に入った瞬間、全ての触手で叩き潰しにかかってきた。

これを、シールドで受け止めようと葵がシールドを展開するが呆気なくぶち壊されてしまい、全員が触手に叩き潰された。

が、幸い先ほどジャルが地面ごとえぐってくれていたお陰で、そこにむかって叩きつけられた形になった。

地面に激突する前にサーシャは体勢を立て直し、葵は地面にクッションをしき、ジャルはそのまま落ちていった。

一人だけ豪快に叩きつけられたジャルは、そのままそこで伸びてしまった。

何とかダメージを受け流した二人は、ジャル助けに行こうかと走り出したが、そこに触手が伸びてきてジャルをさらっていってしまった。

急いでのぼろうとするが、思った以上に高く相手を利用しなければのぼれなさそうだった。


「まずい展開ね……さぁ、どうするの、葵?」


「貴女の爆発を利用して上まで吹き飛ぶってのはどうでしょうか」


「…貴女結構凄いこと考えるんですね」


「これでも、いくらか死地はくぐってきてるんです!いきますよ!」


「了解!」


サーシャがクオーツを地面に思いっきり叩きつける。

その直後、葵がそれを包むかのようにシールドを展開させそれにのる。

サーシャもおいていかれないように、急いでとびのる。

次の瞬間、クオーツが爆発しその爆風受けたシールドはそのまま真上に吹き飛ばされた。


「おおおおお!凄い!」


「…………」


「サーシャさん…?」


「ブクブクブク」


「サーシャさん!?え?何で!?」


爆風で飛ばされたシールドはそのまま大穴を抜け出した。

そこまではよかった。

だが、葵は知らなかった。知っているはずがなかった。

サーシャが重度の高所恐怖症だということに。


------------------------- 第29部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

黒に染まる


【本文】

気を失ったサーシャはそのまま力なく地面に向かって落下していく。

それを受け止めて、葵は何とか地面に着地した。


「ぎゃぁぁぁ!!喰われる!喰われる!ヒイイィィィ!」


一人は気が動転してるのか、多分助けてもろくに動かないだろう。

まぁ……一応魔女の森を守るために作られてるから殺しはしないと思うけど…。

でも…このままだと、婆様の約束の時間がきてしまう。

そうなったらきっと、あの試練を受けさせてもらえなくなるだろう…。

それだけは、どうにかして避けないと!

とりあえす、上で捕まってギャーギャー騒いでいるジャルの触手をファイアで焼き切り、地面に落とした。

そして、そのまま頭を打って気絶した。

…何でひろ君こんな人達と一緒にいたんだろう……。

何かしらあったんだろうけど、まさかここまで役に立たないとは思っていなかった。

特にサーシャちゃんの方に関しては多分本気すら出してないと思うし……。

さて、いったいどうしたものか……。

火を放つのもいいけど、それじゃぁ婆様に迷惑かけるし、かといって接近戦が得意なわけじゃない。

基本前はひろ君に任せてたから…。

また、昔みたいにヒーロー参上みたいな感じになってくれればいいんだけど…。

そう言えば……ひろ君、どうしたんだっけ。

確か、私が守るって言って………。

ここでようやく、ひろが誰にも守られていなかった事を思い出した。

しかし、地面は火球で大穴があき、さらにはひろを渡された位置辺りは触手が地面をえぐった後が残っていた。


「…嘘…………」


また、私が間違えたから。また、前しか見てなかったから。また…また………。

大切なものを失う悲しさと苦しみを忘れてしまったから。

葵は、ただその場に力なく跪くことしかできなかった。




「頃合いだろうね……そろそろ、私がでなきゃ………!!!!!!!!」


葵が諦めかけているのを察した婆様は表にでようとした。

だが、それよりも先に恐怖という感情が出てしまった。


「…誰じゃ……この森で…これ程の闇の魔力をおびているものは…!!!!」





力なく跪いた葵を触手が絡めとる。

それを、そのまま持ち上げると少しずつ力をいれ締め付けはじめた。

もう、空っぽとなってしまった葵はただ、ひろを最後に見た所をボーッと眺めていた。

そして、締め付けが段々と強くなりだし、もう何もかもどうでもよくなりはじめたその時。

一本の白い槍が葵を絡めている触手にむかって投げられ、突き刺さった。

その瞬間、触手は黒くなり一瞬にして塵と化した。

そのまま、葵は落下し地面に頭を叩きつけた。

そこで、葵の意識は途切れた。


その者は、その場からゆっくりと立ち上がった。

黒く染まった右腕に白い槍を持ち。

そして、そのまま槍を構えた。


「……ブラッディ………クロス………」


次の瞬間、魔物の体は一瞬で全て塵と化し空気に溶けていった。

そしてその者は、ひろはその場に倒れた。


------------------------- 第30部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

魔女の森 静かに、そして盛大に始まる


【本文】

暗い。

またこの空間か。

上も下もわからない、ただ黒く暗い空間。

最後は、なぜあんな力を持っているのか、で終わったっけ。

また何か色々と文句を言われるんだろう、そう思ってその子の姿を探す、が全く見当たらない。

いつもなら、目に前に急に現れて話しかけてくるはずなのに。

何か異変が起こったのか?…でも、これは………。


「全く……来るのが遅すぎるよ。君は」


後ろでそんな言葉が自分に投げかけられた。

だが…、この前とはしゃべり方、それに声のトーンまで全く異なっていた。

一応の為にふりかえって確認してみる。

そこには、かつての子供の姿はなく見たこともない服を着た青年が立っていた。


「それが…あんたなのか」


「あぁそうだ。だが今はそんなことを話している場合ではない。君はもう僕の力を借りることが出来ない」


「……力?あんたの力なんて見たこともないが」


「それはそうだろう……なんたって、君が死んでからじゃないと使えないんだから」


「ちょっとまて、それはどういうことだよ。その言い方だと、まるで俺は何回も死んでやり直しているみたいな言い方じゃないか」


「……僕はもう君の力になってあげることが出来ない。今回は闇を取得するのが早すぎたんだ」


その時、その青年の体が少しずつこの空間に溶け込むかのように消え始めた。


「ちょっとまてよ!お前はいったい何者なんだ!?これは、俺自身の夢なのか?それとも、お前が作り出した仮想世界なのか?そして、」


「残念だが、時間だ。君がこの世界で今度こそ何を成し遂げるのか、楽しみにしているよ。僕の名前はク…ロ…ス、と……べし者だ」



うっすらと意識が戻ってくるのを感じた。

光が目の中に潜り込んでくる。それと左手に少し熱を感じた。

ボーッとしていた意識が、次第に覚醒していく。

どうやら、夢ではないようだった、が体がものすごく痛い。特に胸の辺りは胸焼けと言うのだろうか。

そんな感じだった。

そして、左側に人の気配がしたので首を動かして、そちらの方を見る。

そこには、自分の手を握った葵がこっくりこっくりと船をこいで寝ていた。 


「……葵…?」


「……ん…………」


葵をよく見ると、服は土がついた状態のままでとても清潔と言える状態じゃなかった。

が、それよりも洋一は何故今目の前に葵がいるのかが不思議でならなかった。

確かに、サーシャから魔女の森に何かが落ちてきたと言うことは話で聞いていた。

自分もそんな感じだったからそうだと疑ったが…、まさか本当にそうだったなんて…。

そう言えば、サーシャとジャルの姿が見えないけど…二人ともどうしたんだ?

そんなことを思っていると、どこかの扉が開いたのか誰かが部屋の中に入ってきた。


「葵さん…?寝てる?」


そこには手に薬草と魔道書っぽいものをもったサーシャがたっていた。

多分葵に持ってきてとでも頼まれたんだろう。

しかしサーシャは、葵を起こそうとするわけでもなくそーっと部屋の中に入ると忍び足で俺の所まで来た。

とりあえず、何かあったら怖いので目をつむることにした。

ベッドの横に気配を感じたかと思うと、本をパラパラとめくる音が聞こえ、そのあと聞き覚えのある魔法が聞こえた。


「ええっと……クイック…ヒール……?であってるよってうわわ!本当に出た………」


どうやら、俺に回復魔法をかけに来てくれたみたいだった。

あれ?こいつ今まで結構きつい態度だったけど、もしかしてツンデレ?

なんだ、可愛いところもあるんじゃん。まぁ、高所恐怖症もサーシャにとっては相当なギャップだったけど。

……それにしても、クイックヒールって確か出るというより体が包まれていくって感じなんだけど…それに、サーシャって魔法使えないって言ってなかったっけ?

そんなことを思いだし、凄く嫌な予感しかしないのでうっすらと目を開けてみる。

見ると、炎が爛々と火柱を上げていて、当の本人は何がどうなったのかわからないのかポケーッとしていた。


「っておーーーい!!!!!」


「うぇあぃ!起きたの!??」


「んなこと、言ってる場合じゃないだろ!葵!起きて!手伝って!」


「葵ちゃんなら、寝れてないようだったから睡眠薬を飲ませたよ」


「……馬鹿野郎ーーー!!!!」


このあと、必死に水魔法を連発でぶちかましたおかげでなんとか火を鎮めることができた。

危うく、火が建物に燃え移るところだった。

ふぅー、と一息つく同時に気分が悪くなった。

そうしてまた、俺は気を失った。

翌朝、葵と婆様に怒られたのは言うまでもない。

葵は涙目で、バカバカバカバカ!心配したんだよ!?とポカポカと俺を殴りながら言った。

どうやら、葵はここに来てすでに一ヶ月経っているらしく、俺と葵の間で時間のズレが少し起こっていた。

知らない場所で、しかも一人ぼっちで魔法の森の人たちがいたとはいえ寂しかったことだろう。

葵はそのままその場で泣きじゃくってしまった。

そして外野陣はこれをニヤニヤしながら、特にサーシャにおいては何か物騒なものだしてたけど、まぁ気にしないことにしよう。


「さて、それじゃあ…本題に入ろうかの」


葵が泣き止んだタイミングで、婆様という魔女の森の長が話を切り出した。


「まずは、言わせてもらおう。この霧の中森を進んでくるとは、馬鹿にもほどがある」


「「「スンマセン……」」」


「普通であれば、関所で止められるであろうに……そなたらはどうやってここに来たのじゃ」


「……え……!もしかして、今の街の状況を知らないんですか!?」


「……何があった」


ここで、俺ら三人は街であった出来事を婆様に話した。

街が襲われたこと、住人の影は見当たらず死んでいたのは兵士のみだったこと、そして、ペインキラーが現れたと言うこと。

そこまで話終えると、婆様の顔色が変わった。

まるで、何か重大なことをやり忘れたかのように。


「葵!禁術継承の話はあとじゃ!今は早く教師と生徒を急いで」


「ご報告申し上げます!只今何者かがここに侵入し…………あ………が…………」


この気配、この空気。この前肌で感じたものと全く同じだった。

報告にきた魔女の教師らしい人物は、胸と喉、頭を一突きに刺されそのまま肉塊とかした。

サーシャは、直ぐにクオーツを投げ俺は爆発に巻き込まれないようにシールドを展開した。

直後、爆発が起き部屋の一部が吹き飛ぶ。


「………きおったか……奴等が」


「…婆様…?…まさか予知夢が………」


葵の恐怖の混じった声でかけられた声に婆様はその場で黙りこんだ。

そんな中、爆風を耐えきった奴はそのまま俺に向かって飛びかかってきた。

こちらもそれに対応するために、風華を呼び出し受け止める。


「よぉ~…数日ぶりじゃねぇか!兄さんよぉ!!」


「……ペインキラー…!!?」


爆風がその衝突によって晴れた。そこには数日前に見たペインキラーの姿はなかった。

そこには…左手を切り落とされ、右目を失ったフードを外した化け物がいた。

目は完全にいっていて、興奮状態にあるようだった。人間だったらとても危険な状態だ!


「洋一!」


その時、サーシャが俺に向かって一本の刀を投げた。

それを、ペインキラーを突き放してから手に取る。


「料金は五万五千セニーです♪」


「この状況でお前商売する!?」


「ひろ君!横に飛んで!」


馬鹿げた会話をしている間にペインキラーに間合いを詰められていた所を葵が咄嗟に発った風属性の魔法が直撃する。


「いいねぇいいねぇ!!!ブラザー!」


「てめぇにそんな呼び方で呼ばれたくはない!!」


風華をしまい、刀を引き抜く。すると目の前に一瞬風が踊った。


「…これは…」


「私が厳選した武器で三番目辺りに強い武器!そのなも名刀 名桐!使い方はさっきの通りだから!」


「ああ!そっちは葵や婆様避難させといてくれ!おいジャル!」


「はいいい!!」


たった今まで空気のような存在で扱われていたジャルは急に呼ばれたことにビックリしたのか体をビクッと震わせた。おいここ戦場だぞ……。


「…二人を頼んだぞ!」


そんな頼りないやつにでも頼らなければいけない。今は贅沢なんて言っていられないから。

ジャルは、コクコクと頷くとガクガクと笑っている膝を叩き婆様を背負ってサーシャと一緒に爆風で飛ばされた家から外に出た。


「……なるほど………一騎討ちをしてくれるってかい……!!あんた最高だぜ!」


「…うるせぇ人殺し。俺は今無茶苦茶怒ってるんだよ………」


「……あ?何にだよブラザー」


「……ああ、言ってやるよ!てめぇのその簡単に人を殺せる神経にむかついてるんだよ!!」


それと同時に、間合いを詰め一閃した。

しかし、これは読まれていたのかひらりとかわされる。


「……見せてやるよ、頭義流抜刀術。てめぇを倒すためなら何でも使ってやろうじゃねぇか!!」


「いいねぇいいねぇいいねぇ!!それでこそ!!俺の腕を!目を!奪った好敵手だ!!」


そして、刃物と刃物ぶつかる重低音が響いた。



「何が起こってるんですか!?」


「私に聞かれても困ります!そこの頼りない男にでも聞いて!」


「いや、僕何にも知らないですよ!」


「……どこまでも使えない男ね。せめて戦えるようになるまでは男って呼ぼうかな」


「待ってサーシャさん!せめて!せめて名前だけはちゃんと呼んで!」


「……二人とも止まって!!」


サーシャの合図とともに婆様を背負ったジャルと葵は足を止める。

そこは、かつて広場だった場所だった。そして今は……


「……ここまで…やるのか……奴等は…」


「婆……様。これは……」


目の前に広がるのは赤朱緋紅。紅に染まった土と水溜まり。

そこに、複数の見たこともない魔物とあり得ない程の闇を放っている化け物がいた。

それは、サーシャと洋一があの時に見た化け物と同じ姿をしていた。

それが、自分達を見たとたんありえないほどのスピードで魔法を詠唱し一気にぶつけてきた。

その時だった。サーシャの連絡機器の音がなり、ウィンドウが空中に開くのと同時に箱がサーシャの前に現れた。


「いやーごめんね~サーシャちゃ」


「話は後!!!」


その直後にそのすべての魔法がサーシャ達にぶつけられた。

敵は勝利を確信したのかその場を離れようとし、背後に残る生命力の反応に足を止め振り返った。


「………ナタリー、用件は」


「……武運を、リーダー」


「……サーシャ……さん?」


サーシャの右手には、普段戦うときに着けているペンデュラーを五つも着けていた。

ジャルは、今の出来事に腰を抜かしたのか、婆様を背負った状態で尻餅をついていた。


「葵さん、援護頼みましたよ…………ユーリュとして、こいつは……絶対に潰さなきゃいけないですから!!」


そして、サーシャは化け物に突っ込んでいった。


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