136話~140話まで
------------------------- 第136部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
手作り料理に愛を込めて9
【本文】
リナの父の格好を見てからまず初めに発言したのはおっさんだった。
「その恰好、あんた魔女の森の者か。ということはあんたがフリーテの元軍隊長、ハルトマン・イアンだな」
おっさんの発言に、俺はいろいろなことを突っ込んで質問したかったが、そんなことをする前にリナの父は俺たちに向かって片手剣を持って突っ込んできた。真正面から突っ込んできたので、正面にはじいてから態勢を崩そうと思って俺も前に出た。
「馬鹿!坊主!避けろ!」
それと同時におっさんの声。腰に構え抜きかけていた刀から俺はとっさに手を放し、右手側に飛んだ。その瞬間背後で風を切るような音と、建物がきしめく音が響き渡った。すぐに態勢を立て直し、先程まで俺がいた場所を見ると、その地面の場所がまるで大きな獣に何度も掘り返されたかのような大きな穴が開いていた。
「…マジかよ」
あんなん喰らったら一発でえぐれて死ぬじゃねえかよ!
「よく避けた!坊主!!」
背後からそんなおっさんの声が聞こえた。だが、それに返事をしている余裕なんて俺の中にはなかった。そもそもお酒に酔っていた時でも簡単に隙をつかれて気絶させられてしまった相手だ。動機はなぞだけれどもそんな相手が本気で武器を持って挑んできたのだ。これも、紫雷さんやマーズさんが言っている人形というワードと何か関係があるのだろうか。まぁそんなことよりも今は生きること優先だけど!接近戦ができないのなら、魔法で攻撃するしかない。そう思った俺はすぐに得意な水魔法を使おうと魔法陣を展開した。だが、リナの父はそんな俺を見て素早く接近し、その手に持った片手剣を振り下ろしてきた。魔法詠唱中は簡単にキャンセルができないので緊急でシールドを展開する魔法に言い換え、俺はシールドを張ると同時に後ろに飛んだ。展開したばかりのシールドがすぐに破壊される音と、さらにこちらに迫ってくるリナの父の足音。このままだと確実に押し殺される。幻夢はさっき使ったから使うこともできないし、逃げてもすぐに追いつかれてしまう。だからと言って防御に回れば簡単に俺は死ぬだろう。左手の甲を見る。そこには最後の一本となった狐のしっぽのような痣。生きるためだ。ここで最後の神威を使うべきだ。そう判断した俺は左手に刀を持ちそれを上に掲げてから神威と叫ぼうとした。その時、
「坊主!伏せろ!」
接近するリナの父親の背後からおっさんの声が聞こえた。その声に従ってしゃがむとおっさんの持っていた斧がブンと大きな音を立てて俺の頭の上を通過した。
「ちっ!避けやがったか…。無事か、坊主!!」
「助かります!でもおっさん!あんたがリナのそばを離れたら……」
「それは大丈夫だ!あの黄色いのがそう言ってたからな!!」
黄色いの?そう言って俺は入り口の方にいるはずのリナの方を見ると、そこにはリナとなぜかペピーがそこにいた。俺と目が合うと、ペピーはその羽でグッと指を立てた。いや、なにも安心できないんですけど!不安要素しか散らばってないんですけど!後何でここにいるん……ってあぁ、そう言えばあいつ勝手に契約したとかなんか言ってたな……。最近見ないと思ったら、まさか今まで俺の体内の中にいたのか!?なんにせよ、あいつにリナを護るほどの力が…そう言えば、あいつ確か隠密系の技が使えるんだよな……。信じていいのか?かなり不安要素強めだったが、その動作に一応指を立てて反応してやると、ペピーが少し喜んだ反応を見せた後、かなり集中して何かを展開した。あの様子なら何とかなるかな。そう思い、前を見る。そこにはいまだ無傷で俺たちの前に立つリナの父。対してこちらは歯が立ちそうにない俺とどんな戦い方をするのか全く予想できない、そしておそらく馬鹿なおっさん。特攻隊長とか言っていたから、とりあえず前進させれば前には出てくれるだろう。だが、それじゃぁ勝てない。まずはどうにかして態勢を崩さないことには始まらない。
「おっさん、リナの父親の態勢を崩すことは?」
「やってみなくちゃわからん。やってほしいか?」
「できれば…お願いします」
戦いの可能性を広げるためにも、今は手探りで戦っていくしかない。おっさんは俺の言葉を聞いて、自慢の斧を一度肩に担ぐと一気にリナの父親に詰め寄った。斧持ちであんなスピードが出せるのか!?一瞬そっちに意識が行ったがすぐに集中しなおすと、俺の得意な戦い方ができる狭い空間を利用してギアを使ってその空間を移動しまくった。おっさんの強さは人としてはもしかしたらあの紫雷さんを超えているかもしれない。そう思えるほどにおっさんは強かった。まずリナの父に接近したおっさんは肩に担いでいた斧を思いっきり振り下ろした。これはどこにどう攻撃が来るとすぐに読めるから回避は誰でもたやすくできるだろう。俺が驚いたのはこの次の行動だった。なんとおっさんは自分の斧を叩きつけた勢いで斧の柄を持ちながら宙へと浮いていた。そして、地面に刺さっている斧を引き抜くようにして地面に降り立つと先程の攻撃を回避しまだ態勢を崩していて隙だらけのリナの父親に、その斧を横から叩きつけた。ブオン!と大きな音が響き渡る。あれほどの大きな斧をこれほどの大きな音を出して振ることができる。あのおっさん、思ってたより強い!!馬鹿だけど!!
「おら坊主!追撃しろ!!すぐに立ち上がってくんぞ!!」
「りょ、了解!!」
おっさんに怒鳴られて、動きまくっていた俺はある壁を蹴ってから一気にリナの父親に接近した。動きまくっていて素早さが上がっていたのもあったのか、いつもよりも早く目標に接近することができた。そのことに自分自身が驚きつつも、俺はリナの父親に向かって刀を上に振り上げて魔力を込め状相破斬を繰り出した。それを片手剣でリナの父親は防いだ。途端に片手剣がボロボロに崩れ去った。それでもめがけてふ俺はまだ魔力のこもった刃をその鎧めがけて振り下ろした。一度鎧を壊したら意識が戻った前例を俺は知っていたから。リナの父親を直接斬らないように弾きながら鎧だけを斬りつけて破壊すると、いったんバックステップで距離を置いた。とりあえず、なんとか止めることはできた。
「よくやったなぁ!!坊主!!」
俺がおっさんたちの方に戻ってくると、おっさんはその斧を地面に突き付けてからその大きな手で俺の背中をバンバンと叩いた。叩かれた場所が腫れるんじゃないかって思うくらいに痛かったが、今は誰も怪我することなく立てていることを喜ぶべきだろう。
「洋一さん!常連さん!大丈夫ですか!?」
「大丈夫かッピー!」
そこへリナがペピーを人形のように抱きかかえてからこちらに走ってきた。そして転んだ。まだまだ子供なんだなって思い手を差し伸べるためにおっさんとともに近づこうとしたとき、遠くで何かが動きリナにものすごいスピードで接近した。油断していた。俺が斬ったのは人じゃない、鎧だ。まして鞘で殴って気絶させたわけでもない。そんな人間を吹き飛ばしただけで倒した気分になっていた。
「嬢ちゃん!!」
おっさんが叫ぶ。リナはまだ気づいていない。そんなリナに接近するリナの父親の手には小さな短刀が握られていた。子供の喉元なら簡単に掻っ切れそうな、そんな短刀を。やめろ、もう失いたくないんだ!これ以上、身近な大切な人たちを!けど今から刀を抜いてあの短刀をはじくことができる自信は俺にはない。かといって、リナの手前リナの父親の手首を斬るわけにはいかない。けどそうしないと、リナが殺されるかもしれない。どうする!どうする!そう思った時、ふとあの手紙の事が頭に浮かんだ。
”冷酷になってください。たとえどんな悪名が広がろうと悪い噂が広がろうと、時には命を切り捨てる覚悟を持ってください。”
あほらしいと思ってすぐに燃やした送り主もわからない手紙。それはまるで、このことをしていたかのような口調で書かれていたんじゃないかってそう思ってしまった。一つの命を救うために、一つの命を消せってか……。だが迷っている暇はない。たとえそれが俺の信ずる道でないとしても、リナを救えるのなら俺は
”てめぇはその選択でいいのかよ”
脳内に聞いたことある声が聞こえた。
”他人に与えられた道を進むのか、てめぇは。俺が知っているお前は、自分で何もかも決めて来た奴だとそう思ってたんだがな”
けれど、その声はここにいるどの人の声でもなくて…
”欲張れよ。自分に正直になれよ。そして強く思え。俺はあの子を救いたいってな”
その言葉をきいてから、その声は途切れた。そうだ、俺はリナを救いたい。それに、リナの父親の事も救いたい。考えたっていいじゃないか、全ての人間を救いたいって!!
そう思った時、俺の中で何かがこみ上げてきた。今なら何でもできるような気がした。そんな自信がどこからか湧いてくる。その気持ちを保ったまま俺はリナの父親を止めるためにリナをかばうためにリナの目の前へと移動した。自分でも信じられないほどに体が軽く、たどり着けないと思っていたのに一瞬でそこにたどり着いた。
「…証明してやるよ、手紙の送り主。全ての人間を救うことはできるってなあああ!!!!」
そう叫びながら俺はリナの父親が接近してきたときに納刀した刀で右手を思いっきり叩き短刀を地面に落とさせた後、刀を投げ捨てて右手をリナの父親の心臓付近に置き
「インパクト!!」
状相破斬の応用で思いついた独自の魔法を叩きつけた。
------------------------- 第137部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
手作り料理に愛を込めて10
【本文】
夢を見ていた。まだまだ幼かった時の事だ。植物型の召喚獣を使う魔女に助けられたことがあった。それから俺はあの魔女に恩を返すために何かをしようと決意した。それからはどうすれば魔女たちを救えるのか考え続けた。しかし当時魔女は恐ろしい存在だとされていて、フリーテには魔女狩りの法律もあった。両親からは、魔女は悪魔のような存在だ。そう何度も聞かされたが、そんな言葉は俺には一つも耳に入ってこなかった。そして、長年考えた末にあることを思いついた。
僕が、魔女と街をつなぐための橋渡しになればいいんじゃないか!!
それから俺は触れたこともない剣を握りしめ、フリーテの貴族連合へと加入した。ギルドやその他の軍勢とかなり仲が悪かったようだが、それでも一生懸命頑張った。時には死ぬような思いもした。時には仲間にも裏切られた。そんな中過ごしていくうちに気が付けばフリーテを任されるほどの軍隊長になっていた。ここからは本当に自分が望むように事が運んだ。まずはフリーテの貴族たちに魔女の危険性のなさと、彼女たちのすばらしさを説いた。なかなかまとまらなかったので、自ら魔女の森へと足を運び魔女たちと接触、自分を助けてくれた魔女と会うことができ昔の事を感謝しながら、自らが行おうとしていることについて話した。そのことに興味を持ってくれたようで、当時、中でも優秀な4人の見習い魔女を俺に任せるといってその日からフリーテで4人の魔女っ子たちと暮らすことになった。この子らが本当に特徴的で、お菓子しか生み出せない子がいたり、ツンデレの火属性使いの子がいたり、綿しか生み出せない子がいたり、食材しか生み出せない子がいたり……そんな慌ただしい中で生活する中、俺は様々なことを学んだ。そして気が付けばある魔女っ子に恋心を抱いていた。そんな俺とともにフリーテの街を過ごした彼女たちを見ていた街の人たちも魔女が怖い存在ではないということをわかってくれて、街を挙げての貴族への抗議があり魔女狩りの法律を消すことができた。だが、このことで僕は貴族の方々から嫌われてしまい、軍隊長を解任され街の外へと追放された。そんな俺を見て魔女っ子たちは俺を引きずって魔女の森へと帰り、気が付けば魔女の森の守護を任されたり、魔法を学ばせてもらったりと目まぐるしい日々を送っていた。そんな中で彼女たちからお礼ということである食事をいただいたことがある。初めて見る食事に、これは何かと尋ねると俺が恋心を抱いている魔女っ子がこう答えた。
「それは、肉じゃがという食べ物ですよ」
懐かしい匂いが鼻を満たし、俺はうっすらと目を開けた。頭や胸のあたりがかなりひどく痛んだ。なぜなのかは思い出せない。それでも、何かと戦ったのだろうということは覚えていた。それが誰なのかは覚えていないのだけれども。ゆっくりと体を起こすと、厨房で何かをかき混ぜる女性の姿を見た。その光景が目に飛び込んできたとたん、俺の体は駆けだしていた。
「リアンヌ!!」
そう叫びながら厨房へと駆けていくと、そこには俺の妻ではなく、俺とリアンヌの子のリナが子供用の足場に乗って何かを作っていた。
「………ぁ………」
そうだ、リアンヌは数年前に亡くなった。だから、この場にリアンヌがいるはずなんて分かっているはずなのに、それなのに……俺はまだ過去に捕らわれている。そして、娘にまでその影を重ねようとしている。馬鹿な親だ。娘も母親がいなくなって悲しいはずなのに、俺がその娘にさらに負担を増やしている。ここにいてはいけない。リナに迷惑をかけてはいけないんだ。ボロボロの体で俺は店の外へと行こうとした。
「父さん!」
そんな俺の事を娘はまだ父と呼んだ。こんな駄目な男を父と呼ぶなとそう言いたい気持ちと、父と呼んでもらえるうれしさから複雑な気持ちになった。
「……もう少しで、晩御飯出来るから……食べてってよ」
そう言いながら近づいてきた娘は私の手を取った。その手は少しだけ小刻みに震えていた。怖いだろう。この前娘にあんな暴力を働いてしまったのだ。それなのにここまで、なぜ歩み寄ってくれるのかそれが不思議でならなかった。席についてからしばらくして、娘が二人分の料理を運んできた。その手にはあの時リアンヌたちがふるまってくれた器いっぱいに入った肉じゃがを持っていた。それを俺の前と向かい合わせの席の前に置くと、娘も席に座った。
「いただきます」
娘はそう言って肉じゃがを食べだした。……今の俺に……これを食べる資格が…あるのだろうか。
「早くしないと冷めちゃうよ」
娘がそう急かしてくる。俺は娘に急かされるままに肉じゃがを口にした。途端、懐かしい味が口の中で広がった。まるでリアンヌの手料理を食べているような、そんな感じがして気が付けば俺は涙を流しながら肉じゃがを食べていた。
そんなリナの父とリナの様子を、俺とおっさんは店の外から見ていた。
「あの様子だと、もう大丈夫そうだな」
「そうですね」
「しかし坊主、さっき突然ありえない速度になったがあれはどうやったんだ?」
「それが分からないから俺も混乱しているんですよ」
あの時、リナを救うためにギアを使ってリナの前に立つことができたのは奇跡にも近い出来事だった。基本的にギアを使うときには少しだけ溜め時間がいる。だから蹴りだそうとしたときにリナの父親の位置からどう考えても間に合わなとおもっていた。それなのに、間に合うことができてしまった。特に何もしてないというのに。試しにリナの父を気絶させた後に何度か試してみたが、そのあと同じようなことは二度とできなかった。
「まぁ、少しばかり遠回りしちまったが……坊主、俺はお前に頼みがあってここに来たんだ」
「ん?なんすか?」
先程までの気前にいいおっさんの状態から、突然真面目な声でおっさんは話し始めた。
「坊主、お前連合軍に入らねぇか?」
それはあまりにも突然の出来事で、俺は始めおっさんが何を言っているのか理解できなかった。
「坊主が何をしたのかは、その情報はあの紫雷とかいう兄ちゃんに聞いた。そして、お前さんらを保護してほしいとの話もきている。どうだ?すこし考えてくれやくれないか」
「………」
おっさんに言いたいことはこうだ。今から連合軍に入ってくれ。そうすれば身の安全は保障する。正直とても魅力的な提案だとは思った。だが、それは俺の恩人の紫雷さんやマーズさんを見捨てるということになることでもあった。俺に、恩人を切り捨てるようなそんなむごいことはできない。だから俺は、おっさんに頭を下げて丁重にお断りした。
「別におっさんの提案が悪いとかいうわけじゃないんです。今はまだやることがあるし…あの人に報告しなきゃいけないから」
「…報告?誰に?」
「夜って人。街の名前までは覚えてないけど、アトリスタ大陸の下の海沿いの街で……」
俺がそこまで言うと、おっさんの顔色が突然悪くなった。
「…坊主、その街ってまさか…ギーベリか?」
「……ギーベリ…?」
「もしそうだったら、坊主お前どうにかしてるぞ。だってその街は10年前に滅ぼされたからな。このパチェリシカに」
それを聞いた俺はただただ、口をぽかんとあけることしかできなかった。
「紫雷、いますか?」
「はっ、ここに」
暗闇に包まれた部屋で、紫雷はフェルに跪き首を垂れていた。
「ついに明後日、……私の最も楽しみとしている”駒決め”が始まります」
「………」
「今年はかなり上玉が多いですし……いい駒が出来上がるかもしれません。ほんと、楽しみで…楽しみで…仕方がありません」
「……そうでございますか」
「明日、実習地へと移動します。その連絡を明日済ませておいてくださいね」
「了解しました」
「さぁ………始めましょう。楽しい……デスゲームを」
フェルはその手に持つグラスを天高く掲げた。
------------------------- 第138部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
デスゲーム1
【本文】
あの後おっさんから少しだけ、ギーベリの事について聞いた。もともと小さな王国でアラウという名の王家が治めていたらしいが、10年前の魔族襲来により暴走した貴族連合に滅ぼされた街。それがギーベリだということだった。にわかには信じがたい話だったが、おっさんはそうとしか言わないし、一度リナの店に入ってリナやリナの父にも確認を取ってみたが、ギーベリという街はもう存在しない街だといわれた。またこの時リナやリナの父にアホみたいに感謝された。いったい何がどうなってやがる。そう思いながら、俺はリナとおっさんと別れると学校への帰路を歩いた。確かにおかしいところはあった。人が全くと言っていいほどいなかったこと。それに、あの団長という存在。おっさんに確認を取ったが、そんな人は10年前にはいなかったということだった。なら、あの人はいったい何者だ。なぜ俺たちを、ここへ行くように指示したんだ。それが大きな疑問だった。それに……春香から聞いたあの年の名前はベリオルという名前だった。なぜ都市名を偽る必要があったんだ?……謎が多すぎる。だが、戻ってくれば何でも応えてくれると夜さんは言っていた。春香があれほど信頼しているはずであろう人だ。きっと教えてくれるだろう。そんな疑問を複数抱えながら、俺はその日を終えた。
次の日、いつも通りみんなとともに特務科の教室に入って紫雷さんたちが入ってくるのを待っていると、マーズさんがどたばたと慌ただしい足取りで、教室に入ってきた。
「あんたたち!急いで準備をしなさい!今から……出るわよ!!」
そう言うマーズさんの顔はとても苦々しいものだった。俺は悟った。時が来たのだと。あの時の練習試合の本番がついに今日から始まるのだと。俺たちはそれぞれの部屋に急いで戻り、荷物をまとめてから校舎の外に出た。外にはすでにたくさんの馬車と生徒でごった返していた。
「改めて思うけど、こんなに人いたんだね。俺はこんなに多くの人ごみにもまれたことはないから正直不安なんだが…洋一はどうだ?」
「透。それはお前らが田舎者すぎるだけだ」
「いやいやいや!普通の村や町は多くても1000人いないって!」
透からそう言われて、そう言えば空から落ちてきたあの時に助けられたあの村もかなり人数少なかったな。…ジルやティナちゃんは元気だろうか。
「狐火!こっちだ!!」
そんなことを考えていると、ある馬車から紫雷さんが俺たちに向かって大きな声を出しながら手を振っていた。そちらの方へ行くと、この状況の事を全員集まったら説明するからとりあえず乗ってくれ。そう言われて、俺たちはこれからどこへ向かうのか。今から何をするのか紫雷さんたちから聞かされないまま全員が馬車に乗り込むと、数多くの馬車がある場所を目指して走り始めた。
「一応確認するが全員いるよな?」
馬車が街を出発してしばらくしてから紫雷さんは俺たちにそう問いかけた。今馬車に乗っているのは俺、葵、春香、透、林太、翔斗、千里。そして紫雷さんにマーズさん。誰かいないということはまず間違いなくない。葵が全員いますよ、というと紫雷さんはよしというと今どこへ向かっているのか、そして何をするのかを説明しだした。
「君たちにはこれからある場所で実戦形式の勝ち抜け方式の試験をしてもらう」
『試練?』
「ああ。すごく簡単に説明するのなら1人10人ずつ倒して入り口まで戻って来いっていう試験だな」
単純計算で全生徒数から合わせても、合格できる人数は250人弱か……。
「君たちにはぜひこの試験を無事達成してほしい」
そう言う紫雷さんの顔はどこか苦しそうだった。あぁ、今から起こることは俺の予想している通りの事が起こるんだろうな、と俺はそう確信してしまった。それから長い間馬車に揺れ続け、太陽がすでに沈んだ頃にその場所に俺たちはようやくたどり着いた。馬車を下りるとそこには多くの生徒と思われる子たちがたくさんたむろっており、その中には制服の色が俺たちとは全く異なるものがいた。
「あの人たちはなんで制服の色が違うんですか?」
「あぁ……彼らには近づくなよ。上級生だから」
上級生だから。紫雷さんからこんなにも誰かに近づくなと言われたことは初めてだった。それだけ危険なんだろう。ならできるだけ当たらないように回避していかないといけないな。そう思っていると、廃墟となった街の方で葵たちが呼んでいた。俺は紫雷さんにそれじゃぁ行ってきますと声をかけて、葵たちの元へと急いだ。
洋一が廃墟となった街へ行くのを見て、紫雷は胸を痛めた。あれほど人殺しをしたくないと、だから俺は支援科で一番になるんだと言っていたあの少年に今から人殺しを強いなければいけないこの状況、心が痛まないはずがなかった。
「紫雷、心配するのはわかるわ。……でも信じましょう。彼らを」
「…………そう…だな」
今はこうやって君の事を待ってあげることしかできない。だからこそマーズの言う通り信じて待つべきなのだろう。……頼んだぞ狐火、おそらくこの試験を乗り越えられるかどうかは……君にかかっている。その時、試験始まりの合図の鐘の音があたり一面に響いた。
------------------------- 第139部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
デスゲーム2
【本文】
始まりの鐘の音が鳴る前に、俺たちは最後の試練の内容について確認した。
「今回は10人以上の人を倒して入ってきた入り口からゴールを目指せばいいんだよね?」
「まぁそれに補足すると、先にポイントを取ってるやつを倒せばそのポイント+1もらえる。だから、うまく立ち回れば、1人倒すだけでクリアも可能だ」
「そう考えると…なかなかに頭を使うわね…特に人数からして、おそらく初めの方はずっと戦闘が続きそう」
「だろうな。だから俺的にはここにいる全員で固まって行動して方がいいと思ってる」
「でもそれだと、囲まれたときとても危険じゃないか?」
透がその言葉を言ったとと同時に、鐘の音があたり一面に響いた。
「あぁ透。その点に関しては、もう遅いからな」
えっ、と透や千里たちが驚くのと同時に俺と葵と春香は一斉に自分の武器を構えてすぐに動けなかった4人を背後にし円を作るように陣取った。あたりからは一斉にかけてくる足音数十。音の大きさから明らかにこちらに向かってきていることは明確だった。
「春香!遠距離攻撃の可能性も考慮して、アースクエイクであいつら護れ!葵は援護頼む!」
「分かった!」
「了解!ひろ君は?」
「俺は突っ込む!」
すでに時は夜。視界もかなり悪いせいで足音の大きさしか主に頼ることができない今、透たちを前衛に出すことは、殺してくださいと言っているようなものだ。だからこそ、あいつらにはできるだけあれらが無力化した敵からポイントを取らせる。それに、本当に人を殺さないとポイントが稼げないかも確認する必要がある。迫ってくる足音に隠れもせずに刀を納刀したまま柄を握って待つ。ただじっと、敵が獣のように突っ込んでくるのをひたすら待ち続ける。そしてその姿を目にとらえたのと同時に、俺は地面を蹴った。一瞬で迫ってきた俺に相手も動揺したのか、体が硬直していた。戦闘でそんな隙を俺が見逃すわけもなく納刀した刀のまま駆車で迫ってきた連中全員の腹を思いっきりぶっ叩いた。だが、さすがの俺でもこの数を駆車で叩くのは初めてだったので、後半の方で叩いた連中にはすぐに逃げられてしまった。残ったのは気絶した11人の同学年の生徒。……この状態で倒したという表記に当てはまればいいんだが……。だが感覚的に自分がポイントを取れたような感覚は一切ない。ここは一度、試してみるしかなかった。
「……悪く思うなよ……」
気絶しているうちの一人の心臓に、俺は刀を突きつけた。命が止まる音。それと同時に始まりの合図でもなった鐘の音が同時に鳴り響いた。
”高田洋一、+1ポイント”
……その時が来たとは思ってはいたが、本当にそうだとは信じたくなかった。だが、今目の前でそれは予感から現実へと変わった。……これは、まるで戦争だ。箱庭の中で行われる、あるものに監視された殺し合いだ。しかも、まだ何も知らない子供を使った。
「……ならいっそう、早く脱出しないとな。こんな場所から」
それが、現状を打破する唯一の方法だ。
「どうだった?ひろく……………」
後方で支援を頼んでいた葵が、駆車で少し離れた場所にいた俺に近づいてきた。そして俺の刀が1人の生徒に突き刺さってることに、言葉を失っていた。
「………これは………そうゆう試練なの?」
恐る恐るという感じで葵から俺に向かって確認の言葉が投げられる。俺がそれにうなずくと、
「……なら…これをクリアする順番を決めとかないとね…」
葵から俺が今最も悩んでいた議題が発せられた。そう、この殺し合いで最も重要になってくるのは、おそらく抜ける順番だ。俺たち7人が生き残るためには、出来るだけ戦闘が苦手な奴から脱出させてやらなければならない。それに、この夜を使った戦法を使いたいという個人的な考えもあるからぶっちゃけた話、声のうるさい透や林太にはすぐに外に出てもらいたい。翔斗はあの状況を乗り換えたことも考えて、かなり長い間残ってもらうことにはなるが、かなりの戦力にはなるだろう。千里は…おそらくこの中で最も弱い。すぐにでも外に出すべきだろう。ならまずは……千里にここにいる10人を殺させなければならない。
「葵、全員をここに呼んできてくれ」
俺がそう言うと、葵はうなずいて春香たちのいる方へとすぐに走っていった。それを確認してから、俺は一応目覚めて逃げられても困るので、気絶している10人に拘束魔法バインドで地面にしばりつけた。人を助けなければいけない立場にいた自分にとって、今やってることはとても心が痛むものだった。葵が全員を連れてきたところで、特に透たち4人は今の目の前の惨状を見て目を大きく見開いた後に全員が目をそらした。そりゃそうだ。普通は誰もが目を背ける。だが、俺はこいつらにさらにひどいことを言わなければならない。
「千里、ここに拘束している全員を…………殺せ」
「……ぇ……」
俺のその言葉に千里は顔色をさらに悪くした。足は恐怖で震えているのか、今は春香に捕まって何とか立っているようだった。いつもは明るくふるまっている千里だったが、この状況だけはどうしても個性では補いきれないようだった。
「洋一!お前、今何を言ったのかわかってるのか!」
「分かってる。だから口を挟むな、透。俺は千里に言っているんだ。それに、ここでこいつらを殺さないと、千里やほかの皆も生き残れない。……これは、そうゆう殺し合いなんだよ」
俺から発せられた言葉に、驚きを隠せない透たち。だがそれでも、今を生きるためにはそれを受け入れてもらわなければならない。
「千里、俺が言ってることがばかげているってことは、自分が一番よくわかってる。でも、ここで殺さないと俺らが殺されるかもしれない。それに俺は………お前らを必ず外に連れ出すという紫雷さんやマーズさんからのお願いもある。だからどうか………ゆうことを聞いてほしい」
それでも千里は首を振り続けた。これじゃぁ埒が明かない。仕方がない、強制的にやらせよう。俺は殺した生徒の心臓から、自分の刀を引き抜くと、それを千里の首元にわざと構えた。
「……殺さないのなら、千里。今ここで、お前を殺す」
最悪の脅しだとは分かっている。友好関係が一気に崩れるということもわかっている。だが俺に迷っている暇はない。すべては全員で生き残って生還するために!そのためになら狂人にでもなって見せよう。あとで透たちに殴られることは百も承知だ。春香に骨折もさせられるだろうし、葵に散々責められるかもしれない。だが、それでも今はこの選択肢で突っ切るしかなかった。俺の刀を首元に構えられた千里は、恐怖の対象を見るかのように俺を見ていた。そうだ、今はそれでいい。そうして俺は…俺に怒りを覚えているであろう透たちの目の前で、千里に拘束したその10人を強制的に殺させた。そして……
”友枝千里、プラス10ポイント”
残酷なアナウンスと鐘の音があたり一面に響き渡った。
【後書き】
獲得ポイント一覧
洋一、1。葵、0。春香、0。透、0.林太、0。翔斗、0。千里、10。
------------------------- 第140部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
デスゲーム3
【本文】
あの後俺たちは千里が倒されないように、全員で入り口まで来ていた。理由は千里のポイントが取られないようにするためだった。入り口に来ると、さらに俺たちの目の前には信じられない光景が広がっていた。そこには、入り口をくぐろうとして、何かに串刺しにされたかのように死んでいる生徒が山になっていた。もう限界だったのか、千里がその場で胃の中のものを全て地面に吐き出した。それくらい、普通の人から見ればあまりにもむごい光景だった。おそらく、この人たちはこの現状を知って逃げ出そうとしたんだろう。それでポイントが足りなくて………。狩らなければ狩られるだけ。かといって逃げれば死しか待っていない。これのどこが試練だと言ってやりたい。ただの殺し合いだ。ならなおさら、千里たちは早く外に出してあげたほうが良い。……自分の判断が間違っていないことを今はただ願うばかりだ。ほとんど戦意を失っている千里を何とかして立たせると、俺たちは千里だけ入り口から外に出すことに成功した。10ポイント……か。口では簡単に言えるが、この10は人間の命の数だ。そう簡単に口に出していいものではない。……これから後多くても69人殺さないといけないのか…。胸が痛かった。けれど、それが生き残るためだ。相手も俺たちを全力で殺しに来るだろう。
「………いくぞ…、時間が惜しい」
今はとにかく急がなければならない。こいつらを生かすためにも。俺は皆にそう言って人が隠れていそうな場所や集まっていそうな場所を徹底して探しだした。葵たちもそれにただ無言でついてくるだけだった。
そこからはあっという馬だった。俺が生き残っている奴を見つけ、バインドで拘束。透や林太や翔斗を優先的に外に出すために、ほぼ俺が瀕死状態にしてから手を下させた。その時の透たちの顔は、本当に恐怖に満ちていた。すまない、という謝罪の気持ちを透たちにも手を下す生徒にも心で何度も唱えながら、俺たちは透たち3人を外に出すことに成功した。
「……残りは俺と葵と春香か……」
「…あと何人ずつだっけ…」
「俺2」
「私は後1人。春ちゃんは?」
「…後1人…。ねぇ、2人は何ともないの?」
俺たち2人の態度を見て疑問に思ったのか、春香が俺たちにそう質問してきた。まぁそう思うだろう俺が人を魔物と同じように斬りつけたりしているのだから。
「……四島じゃこれ以上の事をさせられてたし……まだこれくらいならましな方だよ」
葵は春香にそうどこか悲しい目で遠くを見ながらそう言った。だが、実際に葵の言う通りだった。あの時は鬼に協力する人間、滅びを歓迎するくるったやつらがいたから、そいつらを殺さなくてはならなかった。しかも質の悪いことに、途中で何度も味方の裏切りにあい、5人で活動していた俺たちは何度も殺されそうになったし、俺たちの協力者も何度も命を狙われた。そんな状況からすれば今は、ただ恐怖におびえている人たちを決まった人数倒せばいい。それでも心が痛むことに変わりはなかったが、あの時と比べれば幾分かはましだった。
「…2人の過去って本当にきついものが多くない?」
「あの時の四島はただの地獄だったからな。……今もだろうけど」
「……そうだね」
結局俺は四島を救うことはできていなかった。一度は成功した封印も数カ月であっけなく破られてしまい、四島は立ち入り禁止区域になってしまった。そして…俺はあいつらを死なせてしまった。事故だったということはわかっている。何者かの差し金であることもわかっている。それでも、あの時の俺は結局何も救えなかった。
「だが、それはそれだ。今は関係ねえ。とっととクリアするぞ」
もうかなりの時間がたっている。ならなおさら急いで行ったほうが良いだろう。俺たちは立ち話をやめると、人の居そうなところをまた探し始めた。そして、また何者かを発見した俺はその背中めがけて走りだし刀を振り下ろした。だが、その刀がその人物に当たることはなかった。
「おいおい、危ねえなー」
そう言いながら、先程まで俺の前にいたはずの何者かが俺の背後から頭をこつんと何かで叩いた。危険を感じた俺はすぐさま前にとびながら振り返った。だがそこに、人の姿は見えなかった。
「そんなぴょんぴょんしてたらすぐに体力切れるぞー」
また背後から何者かの抜けたような声が聞こえた。……何者かはわからない。ただ、今俺の背後にいる人は俺よりも強い。それだけはわかった。だが、この俺の警戒心は葵や春香が俺に追いついてから、一瞬にして俺の中から消え去った。
「銀狼さん!?なんでここに!?」
葵が目を丸くしながら、俺の背後にいる人の事をそう呼んだ。その名はどこかで聞き覚えがあった。
「よっ!幾日かぶり~。いや~、急にこの馬鹿に斬りつかれてさぁ~。斬られてないけど~」
葵にそう語りかける俺の背後にいる銀狼という人物は、だらけ切った声でそんなことを言いながら葵の前へと足を運んだ。漸く俺の目の前に現れたそいつは、あの時友恵に斬りつけられそうになっていた銀髪の少年だった。
「あぁ…あの時の」
「そうあの時の!………っていつの事だ!?……こっちはもう何回も接触してるからわかんねえんだよ…」
……え?俺とあんたがこうして会ったのは2回目じゃないのか?
「まぁそんなことはどうでもいいとして~…、洋一、お前に渡したいものがあってちょっとこの試練に忍び込ませてもらった」
疑問を持つ俺を置いてけぼりで話を進めていく銀狼。
「…渡したいもの?」
「あぁ、ちぃと強引だがな。痛いかもしれんが我慢してくれ」
え、痛いって何?そんなことを思っていると、銀狼は右手を胸に当てると胸から何やら光の球みたいなものを取り出した。そしてそれを持った状態で右手を俺の頭をガシッとつかんだ。そして銀狼が小声で何かを言ったのと同時に俺の脳に頭痛が襲い掛かった。想像以上の痛さで、声が出なかった。意外とすぐに終わったものの、体感ではかなり長い間頭に電流を流されているようなそんな感覚を覚えた。
「ひろ君に何をしたんですか?」
葵が少し声のトーンを落として、銀狼にそう尋ねた。
「俺の個性を使って、お前の脳内に直接ある武術の動きを叩きこんだんだ。剛破斬、双破斬、月下り……。おそらくお前だけで完成させるには時間のかかるものをすぐに使用可能にした。分かりやすく言えばこうなるな」
「……そんなことが可能な個性なんて聞いたことがありません」
「だろうな、俺だけの個性だ。”不可能を可能にする個性”それが俺の個性の特性だ。……代償はかなりひどいけどな」
そう言って銀狼はニカッと笑った。だがその顔はどこか少しだけ苦しそうだった。
「それじゃぁ俺は行くぜ。頑張れよ」
そう言って3人の頭を軽く叩いてから銀狼は姿を消した。……初めて会った時もそうだったが、本当に訳の分からない人だと改めて思った。っと、こんなところで時間を食っている場合ではなかった。まだ痛む頭をおさえながら俺は葵と春香に人を捜そうと言って、また歩き始めた。
「…………たっく………一体あの時の俺は………なんでこんなことを俺にしたんだろうかね……」
洋一たちの前から姿を消した銀狼は、すぐに心臓をおさえながら壁にもたれかかった。想像以上に自分の命までも削ってしまった。……これで、自分の寿命を延ばすことができたのならどれだけよかっただろうか。…不可能を可能には出来ても、定義され完結してしまったものについてはその概念を変化することはできない。俺はすでに定義され完結してしまっている。だからこそ、俺自身には一定時間の強化は行えても持続した強化は行えない。……全くめんどくさいものを持ったものだ。
「………後の用事は何だったか…」
右手を上から下にスライドすると、空中にウィンドウが開かれた。そこには今日やることリストと書かれた電子メモが貼ってあった。
「あぁ。次は…………狐火の討伐か」
心臓の痛みもだいぶ落ち着いた。これならある程度いいパフォーマンスができるだろう。
「………さて、行きますか。あの時の俺を殺しに」
銀狼はそうして目的を達成するために歩き出した。
【後書き】
獲得ポイント一覧
洋一、8 葵、9 春香、9 透、クリア 林太、クリア 翔斗、クリア 千里、クリア 銀狼、???




