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106~110話まで

------------------------- 第106部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

学校脱出編キャラクター紹介



【本文】

メインメンバー

高田 洋一 推定レベル184

攻撃 S 魔法 A 防御 B 回復 5S+

メイン武器 名刀 名桐(楓の加護付き)

神器 現在使用不可

奥義 月光牙 紅桜

死の森で体験した出来事のおかげで神威の力を取り戻すが、残り仕える回数は一回となってしまった。だが、ここで経験したことを無駄にするわけにもいかない。彼は静かに復讐心を燃やす。


大田 葵 推定レベル159

攻撃 B 魔法 3S 防御 S 回復 A

メイン武器 神霊樹の杖

神器 リクリエイサー

奥義 ディバインゲート ヘブンズゲート

洋一が無事に戻ってきてくれて、実は裏でこっそりうれし泣きしていた。洋一が眠っている間もちょくちょく様子を見に来ていて、身の回りのことを色々としてくれていた。


眞弓 春香 推定レベル165

攻撃 2S 魔法 C 防御 3S 回復 C

メイン武器 奇輝石の籠手

神器 ペラネル

奥義 破砕拳 烈火絶衝拳

洋一が無事に戻ってきて、一番安堵していたりする。葵がいない時にひょこっと顔を出したりしているところをマーズに目撃されている。


協力者

友枝 千里 推定レベル110

攻撃 C 魔法 A 防御 C 回復 B

メイン武器 木の杖

個性 勇気 効果 常に元気


牧野 透 推定レベル130

攻撃 A 魔法 C 防御 B 回復 D

メイン武器 魔鉱石の剣

個性 タフ 効果 防御力上昇


岩神 林太 推定レベル130

攻撃 S 魔法 E 防御 B 回復 E

メイン武器 魔鉱石の斧

個性 ウォークライ 効果 攻撃力上昇


城崎 翔斗 推定レベル150

攻撃 A 魔法 B 防御 E 回復 C

メイン武器 木の弓

個性 エアリアルハイド 効果 姿を消す


縁 紫雷 32歳 推定レベル390

攻撃 3S 魔法 S 防御 A 回復 B

メイン武器 雷鳴刀 轟

個性 落雷 効果 上位魔法雷属性を使用できるようにする


マーズ・ユシュ 27歳 推定レベル360

攻撃 D 魔法 3S 防御 D 回復 3S

メイン武器 巻物

個性 名称不明 効果 記憶をインプット、アウトプットできる


EXキャラクター(追加)

銀狼 年齢不明 推定レベル□□40

攻撃 □S 魔法 □S 防御 4S 回復 測定不能

メイン武器 ???

個性 ???


捺 推定年齢14 推定レベル□□20

攻撃 □S 魔法 3S 防御 □S 回復 2S

メイン武器 ???

個性 獣人化ムーンラビット


史奈 推定年齢14 推定レベル□□69

攻撃 □S 魔法 □S 防御 4S 回復 A

メイン武器 名刀 時雨(仮妹より)

個性 ??? 効果 時の操作


七海 推定年齢14 推定レベル□□47

攻撃 □S 魔法 3S 防御 4S 回復 D

メイン武器 ???

個性 獣人化サンラビット


将平 推定年齢18 推定レベル□□87

攻撃 □S 魔法 □S 防御 5S 回復 3S

メイン武器 ??? 

個性 ???


------------------------- 第107部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

春香と千里の目がマジでやばい


【本文】

ウィルダム旅行記

穴の世界から外に出ることを夢見た少女は、長い試練を乗り越えて大怪鳥と出会い外へと飛び出した。少女のその行為はその世界では禁忌と呼ばれているものだった。後戻りはもうできない。少女たちは世界を巡る旅を始める…


「何読んでるの?ひろ君」


「ん?あぁ、葵か。いや、ちょっと面白そうなのがあったから…」


そう言って俺は手に持っていた本を机の上に置いた。

ここはドルーナの誇る施設のうちの一つ。書庫。…どうみても、書庫というよりは図書館に近いようなもんなのだが、書庫と呼ばれている。まぁこの時代に図書館なんて言葉がある方がおかしいか。

俺に話しかけてきた葵の手には、分厚い本を何冊も重ねていて、それを机の上に置くと俺の横に座った。


「それにしても…紫雷さんが生きている事には驚いたねー。それに、今の私たちの担任ってのも信じられない話だけど…」


「まぁなー」



俺と紫雷さんが再会してから数日。体調も元に戻った俺は、葵たちとともにとある部屋に連れていかれた。部屋には俺、葵、春香、千里、透、林太、翔斗。それに、マーズさんがいた。紫雷さんは部屋に着くなり俺たちにこういった。


「入学してすぐで悪いが、君たちにはこの学校を抜けてもらわなければならない」


その言葉に、千里たちが真っ先に反応してブーブーと文句を言っていた。だが、そんなことは気にも留めずに、紫雷さんは話を進めた。


「これを言うのには、きちんとした理由がある。…まず言っておこう。ここは、貴族連合の本山だ」


その聞きなれない言葉に、さっきまで文句を言っていた四人は首を傾げた。


「貴族連合って何ですか?」


透がそのことを疑問に思ったのか、紫雷さんに質問していた。


「貴族連合とは、誰にでもわかりやすく言うと魔物に協力して世界を滅ぼそうとしている連中の総省の事だ。そしてここは、そんな人間を育て上げるための育成機関だ」


「そしてあなたたち7人は、その中でも特に良い個体として選別された。特に、君はね」


マーズさんはそう言って俺の方を指さした。その言い方を嫌うかのように、紫雷さんはマーズさんの事を一度睨むと、再び話を続けた。


「ここで育成を受けるということは、敵に協力するようなもの……」


そこまで言って、紫雷さんの口の動きが止まって顔が少し暗くなった。その気持ち、わからなくはない。あの人は大剣豪と言われる人のうちの一人だ。世界を、人を護るために生み出したものや受け継いできたものを人を殺すために、世界を滅ぼすために使ってほしくないのだろう。というか、おそらく誰もがそう思うと思った。それから、紫雷さんはすぐに席を外しマーズさんからズバズバと現在の状況を聞かされた。



「俺たちは…利用価値のある駒…か」


精神的にきつい言葉だった。人としてではなく物として扱われている感じがするから…昔見たいに。そんなことされたら誰だって嫌がるだろう。だからこそ、マーズさんは言った。人ではなく感情を持たない駒にする。MCのように。あの時マーズさんはそう言った。MCが何なのかは教えてくれなかったので、おそらく触れてはいけない話題なのだろう。


「……夜さんにただの潜入捜査だって聞かされていたのに、思ってた以上の事に巻き込まれたな」


「それもそうだね…また、四島のようにならなければいいけど…」


「そうだな…」


もう二度と、あんなにも人が殺されるのを見るのはごめんだ。それに、自分も人を殺したくはない。穏便に…とはいかないかもしれないが、それでもできるだけ穏便に事が進めばいいなと願わずにはいられなかった。それから、俺たち二人は必要そうな資料を手に持って書庫を後にした。外に出ると、まだ高い位置にある太陽の光がまぶしく世界を照らしていた。


「暑いな…、それにお腹もすいたし、みんな誘って外にでも食いに行くか」


「いいね!じゃぁ私春ちゃんと千里さん呼んでくるね。集合場所は校門でいい?」


「OK。じゃぁまた後でな」


そう言って俺は一度葵と別れて、同室である野郎ども(透、林太、翔斗)を呼びに行った。この学校では、男女別の寮があり、クラスの人間3~4人と部屋を共有することになる。俺のクラスは今のメンツの7人しかいない”特務科”という謎のクラスだ。しかも男子は4人しかいないので、強制的にメンツは決まってくるわけで…。少しだけなれた道を進み、寮の中の自分たちの部屋にたどり着くとその扉を開けた。


「みんないるか―?飯食いに行こうぜー」


「わあー!何この子ー!すっごくモフモフしてるー!」


「かわいいーーー!!」


……あっれぇ~。ここって女子寮だっけ~?いや、女子寮は男子寮と真反対にあるはずだからそんな間違いを起こすはずがない。さすがに、方向音痴の俺でもそんな間違いは起こさない…はず。駄目だ自信が持てない。目の前に春香と千里がいて、ペピーを抱き上げて二人でキャッキャしている。そして端っこの方で透達はなぜか体中に傷を負い、物のように積み重ねられていた。…あいつらがいるのなら、ここは男子寮で間違いはなさそうだな。うん。

それにしても本当に何があった。


「あっ、ねぇひろー。この子どこで拾ってきたのー?」


俺が部屋に入ってきたことに気が付いた春香が、ペピーを抱きながらこっちの方に寄ってきた。抱きかかえられていたペピーの顔は、みたこともないようなげっそりとした顔をしていた。そして、俺の事が視界に入るなり、必死に懇願の目で助けてコールしてきた。いや、お前、俺が書庫に行っている間に本当に何されたんだよ。怖いよ。口を開くのが怖いよ。だってこの二人、目がガチだもん。可愛いものを見つけたから、自分たちのものにしようとしてる感が半端ないもん。……仕方がない。ここは、ペピーに恩を売っておくか。


「ま、まぁそこらへんでな。それよりも、葵がお前らの事探し」


「どこらへんに行ったら沢山いますか!」


話をはぐらかそうと、てきとうな話(ただし、嘘は言っていない)をしたが、千里が目を輝かせながらぐいぐいと迫ってきた。そして、それと同じように春香もじりじりと寄ってきた。俺の脳が体に本能的な指令を出す。”今のこの二人は、なんか色々とやばそうだ”と。…とりあえず、ペピーだけでも助けるか。


「あーーーーー!!!」


俺は大きな声を出しながら、この部屋唯一の窓の方に向かって指をさした。春香と千里の目線がそちらの方へと誘導される。俺はそのすきを逃さず、ペピーを春香の腕から奪い去ると全力で外めがけて走り出した。一瞬の出来事に、二人とも体を硬直させる。しかしすぐに、状況を理解したのか幼馴染である俺が聞いたこともないような声で叫んでいた。なんだよ春香の奴。怖すぎかよ!

…これは…下手したら葵にまで被害がいくな。何とかして合流して二人を撒かないといけないと、そう思った。…ここに来たのって、一応お願いからだったよな?そうなのだが、そのことが嘘のように思える今のこの状況に、俺は苦笑するしかなかった。


------------------------- 第108部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

暴力はやっぱりよくないと思うんです。手遅れだけど


【本文】

この医務室からは本当によくこの学校がよく見える。それは目で見えるものも、見えないものもそうだ。この学校は大きな闇を抱えている。例えば、ここはもともとお城で、王を今でも監禁している…とかね。そんなことを思いながらマーズは彼らの副担任として、事実の改変を行っていた。私の個性は、記憶をある物質として取り出すことができるというものだ。そうやって、自分の身を護るために自身の記憶を物質に変えたこともあった。…今では、自分自身の何が正しい記憶なのか判別もできなくなってきている。それほどまでに様々な記憶を、頻繁に取り出したり入れたりした。あの子たちを守るために。だが、それは失敗に終わってしまった。…今度こそ成功させる。たとえこの命に代えたとしても…。その時、外から騒がしい声が聞こえた。窓の方に視界を移すと、少年…洋一が黄色い動物のようなものをもって全力で走っていった。そして、その後を鬼のような形相で春香が追っていた。


「…楽しそうで何より…」


じきにそんな余裕もなくなる。だから今は、楽しんでほしい。彼のように…ルーク・マーリアのように苦しんでほしくはない。もう自分の生徒が、人形になるのを見るのはこりごりだ。


「…必ず、成し遂げて見せる」


それが…意識を奪われなかった私と紫雷の今の使命だ。




もおおおおおおぉぉぉぉ!!なんでずっと追ってくるのおおおおぉぉぉ!!!走って逃げ周りながら俺は後ろからついてくる幼馴染みを見てそう思わざるを得なかった。


「おーいーてーけー!」


しかもなんか言ってるし!怖いよ!春香さん怖いですよ!かといって、このまま逃げていてもらちが明かない。あの様子だと、おそらくどちらかが体力尽きるまで追いかけてきそうだ。体力で負ける自信はないが、…一応あれでもこの時代で軍の副隊長してたわけだし何が起こるかはわからない。仮にもし負けようものなら、おそらく命はないだろう。もう嫌だよ俺。何度も何度も包帯グルグル巻きにされるのは嫌だよ!?脳裏によみがえるフリーテ手前での大怪我。二度とあんなことになるのだけは避けたい。そんなことを思って走っていると、手前から葵が歩いてきた。そして俺を見つけると、おーいと手を振ってから走って寄ってきた。って今そんな雰囲気じゃないんですよ!葵さん!


「ひろ君ー春ちゃんたちいなかっ」


「逃げるぞ!!」


何も知らない葵の手を取り、勢いを殺さないようにかつ葵が転ばないように繊細の注意を払いながら走り続ける。状況を読み込めていない葵は、頭にはてなマークを浮かべているようだった。


「な、なんで!っていうか!何から逃げてるの!?」


「後ろみて理解して!」


「う、後ろ…?」


そう言って葵は、俺に手を引かれながら後ろを見た。きっとその目には見たこともない顔をした春香が目に映っていたことだろう。すぐに前を向くと、なぜか俺の事をジト目で見て


「……変なことでもしたの?」


ときつい一言を言い放った。あれ!?俺そこまで二人に信用ないんですかね!?結構傷つくんだけど!


「してないよ!こいつを取り戻しただけだ!」


俺はそう言って、つないでいない方の手に持っていたペピーを見せた。


「初めましてだッピ!僕はペピーっていう精霊だッピ!こいつと勝手に契約させてもらったッピ!」


「そうそう。ってはああああああああああああああああ!!!!???」


突然の爆弾発言に、思わず足を止めた。


「お前!お前!勝手にってお前!!!」


「だって、魔力の供給源がないと精霊は消滅して死ぬッピ。そうなるとあの中ではお前の魔力が一番ましだったから、仕方なく契約してやったんだっピ!感謝してほしいッピ!」


駄目だ。今、こいつの言うこと全てに殺意しかわかん。


「……ねぇ、足を止めていいの?」


葵が少しだけ俺から距離を取って、先程走ってきた道の方を指さしていた。指さす方に視線を動かすと、春香が地面を蹴ってこちらに向かってこぶしを振りかぶっていた。


「破砕拳!!」


容赦ない一撃が、俺の顔面にドストライクする。そのまま俺は後方に吹っ飛ばされて、意識を失った。

その後、医務室で目覚めて葵から話を聞いたところによると、俺を殴った後の春香は何かをやり遂げたかのような顔をしてペピーを手に取って大満足していたらしい。そう言って、葵は手に抱いていたペピーを見せた。ペピーは意気消沈して、魂が口から出かかっていていた。…あいつペピーがこうなるまで、いったい何をしたんだ?

改めて、こいつの事は皆に言っておかないといけないな、そう思った俺は今はいろいろと死にかかっているペピーをあいから受け取ると、お疲れ様と一言かけた。



紫雷はこれから彼らにどのような授業をするべきか悩んでいた。なぜなら、ここで外に逃げるための準備とある程度の力を身につけさせなければいけないからだ。だが、自分には学園長のフェルを守らなければいけない仕事もある。かまっていられないのも確かだ。…いや、逆にフェルに自分が付けば、彼らが動きやすくなるのでは……?彼はそんなことを思いながら、机の引き出しをなんとなく開けた。


「…そう言えば、スカイピアがこの上空に来るのが大体3か月後だったな……。なら、今回はこの手で行こう」


彼はそう言いながら、引き出しの中にあった何かの植物の種を取り出した。


------------------------- 第109部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

授業開始


【本文】

紫雷さんのクラス、特務科に入ってから数日後。それまではずっと授業すらなかった俺たちはようやく教室に呼び出された。ようやく授業だ。ここから…マーリアから脱出するための授業。いったいどんな訓練をするのだろう。やっぱり、フィールドでの移動訓練か?それとも、強敵と出会ったことを想定した逃走しながらの戦闘訓練か?そんなことを考えながら、俺は特務科の教室に入った。そして全員が集まったところで、紫雷さんが入ってきた。その手には、何かの植物の種のようなものが握られていた。そしてそれを一人に数粒ずつ配ると、こういった。


「今日の授業は指定ポイントにその種を植えてくることです」



……ってなわけで、今現在地はマーリア正面門から出たところの真正面に見える小高い丘のふもとに俺たちは紫雷さんの指示で来ていた。


「しかし、授業で植物の種を植えるって一体どういうことだ?」


「それだよねー。観光地とかが、この時代にあるはずないし…、なんか考えがないと絶対そんなことしないよね」


そうやって俺と葵が話していると、春香と千里は一緒に山の方を指さしてそのまま透達を引き連れ、丘を登り始めた。それにしても仲がいいな、あの2人。いつの間にあそこまで仲良くなったんだ?


「おいていかれる前に、私たちも行こっか」


「そうだな」


そう言って葵は俺より先に春香たちの後を追った。俺は、葵の後には続かず、ポケットからここに来る前に渡された紙を取り出した。紫雷さんにここに来たら、周りに誰もいない状態で開けろと言われたのだ。一応、誰もいないことを確認して俺はその紙をひらいた。そこにはやってほしいことリスト、いわゆる魔物討伐の依頼のようなものがいくらかと、ここら一体の簡単な地図。それに、植物の種についての説明が書かれていた。植物の名前は、浮遊花。名前の通り、花が咲くと空を飛ぶらしい。ただ、大きさが2~3メートルっていうのが気になるけど……。それと、特務科ってもしかして、特別任務遂行科の略称じゃないよな…?

魔物討伐リストの中には、明らかに俺でも戦うのを避けたい魔物の名前がいくらか並んでいた。というか、逆にそんなのがここらへんで出るのかよ。…警戒していた方がよさそうだな。


「ひろ君ー!おいていくよー!!」


葵が遠くの方で手を振って俺の事を呼んでいた。これ以上離れるわけにはいかないな。


「あぁ!今行く!」


俺はポケットにその紙をしまうと、道なりに沿って進みだした。

…そう言えば、こんな魔物がいそうなところを葵と歩くのはいつぶりだろう。昔は俺と葵が戦場の先陣を切り、淳が狙撃で援護、莉緒は俺たちの狩り残しを狩り、智人が盾で皆を護ってたっけ…。……やめよう、これ以上は、もう、護れきれなかった人の事を思い出したくはない。


「…懐かしいよね。あの時は、よくこんなところを走り回ってさ…」


どうやら、葵も似たようなことを考えていたみたいだった。


「まだ、花先生も生きていた時さ。安全なところをよく散歩したよね。…今は、昔みたいにはしゃごうとは思わないけど…、それでも思い出すよね。四島の皆の事」


「…葵」


「…ごめんね、何となく思い出しちゃったから」


そう言って、葵は顔を上にあげた。その行動にどんな意味があったかはよくわからない。だが、すぐにまた前を向くと、俺を見て笑って、行こっというと、先に進みだした。…ここで、何かかっこいい言葉でもかけてやれればいいのに。その時の俺は、葵に向かって言葉を投げかけてやることができなかった。ただ、葵のその言葉にうなずくと、俺は葵の後をついていった。言葉は魂を持つものだ。簡単に発言していいものではない、とそう思ったから。

それから、少し進んだところで春香たちが弁当を広げてわいわいしていた。もうそんな時間なのか。空を見上げると、太陽がほぼ真上でさんさんと輝いていた。けれども、透たちの顔は暗く曇っていた。どうしたのかと聞くと、汚物をみるかのように何かを指差した。


「じゃーん!今日は私が昼ごはんをつきってみましたー」


透の指差した方には、そう元気に胸を張って言う春香と、謎の黒いオーラを放つ弁当箱らしきものがあった。


「………誰だ、こいつに飯作らせたの」


そう言うと、透たち3人が手を挙げた。


「いやー、凄い料理を作るっていったから…」


「興味本意で作ってっていったけど……」


「こうなるなんて…知らなかった」


そう言い残すと、3人はその場に顔を真っ青にして倒れこんだ。…食ったのかこいつら?この、ダークマターを?そういうところは、男前だなぁ。普通は食う気にはならんけどな。


「と言うわけで、昼食は現地調達だな。幸いにもここら一帯の地図は貰っているし、こいつらを見張る組と、狩り組に分けて行動しよう」


と言っても、動けるのは俺と葵と春香と千里の4人。必然的に動く人間が決まってしまう。


「じゃぁ、私とひろ君で狩りかな?そっちの方が、こっちで何かあってもすぐに動けそうだし」


「それがベストかなー。春香もそれでいいか?」


「ひろと私で固めると近接攻撃と防御が片方できなくなるもんね。わかった。…でも、私の料理そんなにひどいかなぁ…」


「味見をしろ味見を。じゃぁ千里、春香のこと頼んだよー」


「まっかせてー!!」


そう言って、俺は地図を見ながら葵と一緒に食べれそうな魔物と食料の調達にいったのだが…まぁ俺が地図を持っていると言うこともあって…。


「…ねぇひろ君。私思うんだ。絶対道に迷ったって」


「…返す言葉もございません」


気がつけば、何か得たいの知れない魔物の巣の中に入っていた。

上空には謎の魔物が空を舞い、地面には、小さな竜のような生き物がうろうろと這っていた。


「ま、まぁ、食料も見つかったことだし~」


「私たちが餌にされそうな勢いだよ……。本当にどうするの!?」


「決まってるさ」


そう言って俺は腰にある刀に手をかけると…。


「ばらして食うんだよ!!」


そう言って、俺は竜のような魔物に向かって走り出した。


「ああ…もう!!知らないからね!!」


そう言いながらも、葵は後ろの方で魔法の詠唱を始める。さてと、こうやって出てしまった以上、本当に全員狩らないとここから出られそうにはないんだが…、そこは技量でなんとかするしかない。俺は、刀を強く握りしめ、頭義流奥義、駆車を放つ。何体かははずしたが、それでも何体かには首に大きな一撃を与えたはずだ。これで何体か減ってくれているはず…。俺がそう思った通りに何体かの魔物は起き上がることはなく、立ち上がったりこちらに飛び付いてきたのは計6匹だった。この数、押せる!


「ひろ君!そこどいて!!」


後ろから、葵の声が聞こえた。その言葉を聞いて俺はすぐにギアを発動して、空中に避難する。そして、先程まで俺がいた辺りに、光の光線が何本も降り注ぐ。光魔法、シャイニングレイ。やはり綺麗だ。葵が光魔法をうつと、他とは違う輝きを放っているように見える。そう、まるで何かを浄化しているような…そんな暖かな光が。……って浄化したら駄目じゃね!?そう気がついたときには遅かった。俺たちの肉は、葵の光魔法によって、浄化されてしまっていた。


「あ、葵さーん……なにやってるんですかー」


「…………やっちゃった☆」


「いや、やっちゃったじゃないでしょ!?浄化しちゃってどうすんの!?」


「ご、ごめん……。でも、ひろ君が急に突っ込んだりしなければ、私ももっと冷静に判断して魔法を撃てたと思うんだけど」


「すみませんでしたーー!!!」


……俺はやっぱり葵には頭が上がらない。昔からって言うのもあるけれど、葵は人の穴、欠点とする部分やミスをよく見ている。それが、まぁ優秀な指揮官と俺たちから呼ばれる理由な訳だけれども。


「…けど、完全に収穫がなかったって訳じゃなさそうだね」


葵はそう言って、先程まで魔物が群がっていた場所の奥の方へと進んでいくと、なにかの大きな卵を抱えて戻ってきた。そして、俺の方を見てにっこりと微笑むと


「今日はこれで卵料理よろしくね?シェフ?」


そう言って俺に卵を手渡した。…やっぱり、俺は葵にはかないそうにない。

はいはい、と言いながら、結構大きめの卵を持ち直すと空を飛んでいる大きな魔物にばれないように、今度は葵に地図を渡して、千里たちのもとへと戻った。

そして、戻ってから早速俺の料理の腕を披露した。その結果、透からお前はいい嫁になると言われたので軽くぶん殴っておいた。正直な話俺は料理が昔は得意な方ではなかった。ただ、自分の胃を守るためには身に付けるしかなかった。同居人の葵と春香がゲテモノ料理しか作らないから、男の俺が飯を作る力をな。…これを口に出して言えればかなり楽になるんだが、言ったら言ったでまたゲキマズ料理との格闘が始まるので、それはそれで避けねばならない。というか食いたくない。ただそれだけ。


「でも、この卵凄い臭いがきついねー」


「春香、お前後で自分の作ってきたもん臭ってみな」


きっと、想像を絶する激臭が鼻を襲うから。

そう言えば、今全員集まってるんだよな。なら今のうちにペピーの紹介を改めてしておくか。

そう俺が思ったとたん


「呼んだッピか?」


と、ペピーが俺の目の前にポンと出てきた。こればかりは流石に毎回びっくりする。心臓に悪いから正直な所やめてほしいのだが、召喚獣が前に出るのは仕方がないことだッピと言われたので、こっちがなれるしかない。


「いや、改めて皆にお前のことを紹介しようと思って…」


「「黄色のモフモフ!!!」」


ペピーを出した瞬間に、春香と千里の目の色が変わった。怖いよ、あんたら2人。あの死の森に住んでいたこいつが怯えるくらいだぞ。この前本当に何されたんだよ…。とりあえず、捕られないようにしっかりと持っとかないとな。そう考えた俺は、抱いていたペピーを先程より強く抱きしめて簡単に捕られないようにしてから、改めてこいつのことを詳しく話した。死の森で出会ったこと。途中途中、ある意味で助けられたこと。そして、何故か勝手に契約させられたこと。最後の事で葵からペピーは軽く睨まれていたが、とりあえずは皆にその存在を認めてもらった。透たち改めて、俺らを助ける前にそんなことがあったのかーと俺話を興味深々に聞いていた。髪を引き抜かれまくられた所だけは皆から笑われたから、そこだけは解せなかった。そんなこんなで、昼食の休憩も終わって何事もなく俺たちは目標のポイントまでつくことができた。そこは、小さな花が沢山咲き誇る隠された花畑のようなそんな場所だった。一言目に漏れた言葉は、ここにいる皆が、綺麗、だった。この光景がもし普通の平原から見るものだったら、きっとそうは思わなかっただろう。だが、この場所の自然が、木々が、この場所を隠すかのように生い茂っていて、そしてそこでしか感じられない風を感じることができた。おそらく、綺麗と言うよりは神秘的な場所という言葉の方が似合うかもしれない。けれど、そんな言葉よりも、綺麗という言葉の方がこの場所に合っている気がした。


「確か、この花畑の所に渡された種を植えればいいんだよな?」


「多分…そうだと思うけど」


「じゃぁ、さっさと終らせて帰ろうよ。早くしないと日も落ちちゃいそうだしね」


「そうだな。早いとこ済ませてしまおう」


そうして、種を取り出そうとしたときだった。今まで心地よかった風流れが突然変わった。そして、何かが風を切るかのような音が辺り一面響き渡った。俺はとっさに、伏せろ!と叫んでいた。皆がその俺の言葉を聞いて身を伏せたのと同時に、そこを何か大きい魔物が通過する。


「あれは…鳥竜種!?」


「春香!何か知ってるのか!?」


俺がそう聞くと、春香は飛んできた魔物を忌々しそうに見ながら


「知ってるわよ……私がこの時代に来て、初めて対峙したのがこいつだったからね!……でも、普通はテリトリーに入ったりしなければ襲ってこない筈なんだけど……」


そこまで言って、春香は一度口を閉じた。そして、何か嫌なことでも思い出したのか俺と葵の方を見て


「まさか……あんたたち……あれの卵取ってきたんじゃないでしょうね…!?」


「そう言えば、上空にあんなの飛んでたな」


「絶対それじゃない!!どうしてくれんのよ!!」


「まぁ今さら騒いでも、胃の中に入れちまったもんは戻せないし……」


「…倒すしか、ないよね!!ま、頑張りましょう!!千里ちゃんたちもね!!」


そう言って、透たちの方を見ると既に木の陰に隠れてこちらを応援する体制に入っていた。待て、お前らも一応卵食ったよな?一応戦いには参加して欲しいなってそんなこと考えてる暇はないんだけどね!!


「来るぞ!!」


俺のその言葉と同時に、空を飛んでいる鳥竜種の魔物がけたたましく吠えた。


------------------------- 第110部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

ピンチ


【前書き】

キャラクター奥義集 ティニア

かけがえのない物をくれた親友に……癒しの光を! ヒーリングライト!



【本文】

様々な作業をしていて外が少し騒がしかったので、紫雷は視線をそちらの方に移した。どうやら何かが現れたらしい。舌の方で騒いでいる人々が指さす方を見ると、自分が指定したポイント辺りにここら辺の主と言われている鳥竜が空を飛んでいた。


「…行ってあげたほうが良いんじゃない?」


資料を、机の上に置きながらマーズは僕にそう言った。確かに、そうかもしれない。彼らの今のレベルで、あの敵はあまりにも……強すぎる。


「…でるぞ」


「そうですね、久々に一発かましましょうか」


そうして、紫雷は刀をマーズは魔導書を手に取ると、鳥竜のいるところへと急ぎ足で向かった。



「ひろ君!後ろ!春ちゃんはそのまま!ひろ君の道を岩で作りながら攻撃していって!」


「葵ちゃん私に言ってること結構ひどいからね!?それとひろ!よそ見してんじゃない!」


「かすっただけだ!春香!さっきの頼む!」


「ほら、行ってこい!!」


空中をぎゅんぎゅん飛び回る鳥竜種の魔物に、必死に食らいつきながらなんとか俺たちは戦いを続けていた。作戦はいたってシンプルだ。葵が目となり、春香が地面を作り、俺がその上を走り空中で魔物を斬る。ごくごく普通の、誰もが思いつきそうなもの。だが、葵はそこに独特のアレンジを色々と突っ込んでくる。例えばだが、ほんとに俺がピンチの時には緊急テレポートで位置を変えてくれる。まぁそれで何度か蹴る地面がなくて、落下しまくってるんですが。正直、そっちの方のダメージの方が大きかった。高いところから落ちると足腰痛くなるよね。


「ひろ君ー!何か考え事でもしてるのー?刀を振る動作がいつもより遅いよー」


……葵はどこまでその観察眼を鍛えているのだろうか。今みたいなことを言われると、さすがに怖いと思うぞ。誰でも。…というか、なんでそんなことわかるの!?という疑問を抱いたところで、魔物からかなり痛手の一撃を喰らった。この魔物、攻撃方法は突進だけとわかりやすいのだが、スピードが速すぎて対応しきれない。空中で態勢を立て直しつつ、攻撃を喰らったところにクイックヒールをかける。それでも少し痛かった。こりゃぁくちばしで攻撃なんてもらったらシャレにならんぞ……。そう思い俺は一度春香と葵と合流した。


「近接だけじゃだめだ。遠距離の攻撃で足止めしてもらわないと、こっちはなんもできんぞ」


「でも、それだと葵ちゃんの仕事量がかなり増えることになるけど」


「…ひろ君が何を言いたいのかはわかるけど…本人たちがあぁじゃねぇー」


魔物の位置を確認しながら、葵は木の陰に隠れている透達を見た。


「ちょっと!透じゃま!あんた別の所いってよ!」


「ふざけんなよ千里!それだと俺が隠れきれねえじゃんか!」


そんなことを言いながら透と千里は木の陰から相手を追い出しては自分が隠れたりを繰り返していた。いや、何やってるんだよと内心思ったがそこはあまり考えないでおこう。


「やっぱり…僕らも必要かな?」


そう言って俺らの所に一人翔斗が近づいてきた。


「そうだね。翔斗君はこの中でも唯一物理での遠距離攻撃ができる人だから、一緒に戦ってくれると助かるかな。できるんだったら私は前衛をひろ君、透君、林太君。後衛を春ちゃん、翔斗君、千里ちゃんに頼みたいんだけどね」


「仮にそれでいくとして、どういう役割分担なのかな?」


「そうだね…。具体的には、前の3人は後ろが魔物を落としてくれるまで待つしかないから、千里ちゃんと翔斗君で攻撃して体制を崩してそこを前衛が叩いていくって感じかな。春ちゃんはさっきと同じでひろ君の足場作り&全員の防御。私は全体の指令だね。こんな感じでいいかな?翔斗君」


「うん。ありがとう。確かに、僕らもでたほうがよさそうだね。卵食べちゃったし」


そう言って少し時間を空けて、翔斗は非力かもしれないけど、できるだけやってみる。と言って弓を取り出した。それを見て林太がしかたねぇなと言いながら、斧を両手に持ってこちらへ来た。


「ほら、お前らもこい」


「やーだー!!たたかいたくない!!」


「さ、流石にあの相手は……」


「いいから!!」


そんなことをいいながらついでに透と千里も引っ張ってきた。


「まぁ文句いっている人もいるけど、正直今はそんなこといってる場合じゃないので……さぁ全員集中して!!敵ももう待ってはくれなさそうだよ!!」


葵のその声を発したと同時に、その巨体が俺たちに向かって物凄いスピードで落ちてきた。今の状態だと、全員の回避はまず無理だ。


「させないよ!!」


春香がとっさに自身の右足に魔方陣を展開し、その足で地面を踏んだ。すると、俺たちを囲うように地面がドーム状にせりあがった。この技は初めて見た。どうやら春香の新技らしい。


「皆!すぐ動けるようにしてて!多分あの早さで突っ込んできたら、このシールドは……」


その春香の言葉が終わる前に、さっき俺たちを囲った壁にヒビが入り、すべて崩れ落ちた。

そして、手を伸ばせばすぐに触れられる距離まで距離を詰められていた。


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