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6.ステータス授与






レオは緊張したようにそっと、その手を水晶玉に触れさせる。



すると、その大きな水晶玉が淡く青白い光を放ち出した。



そして、その奥では大司教が何を持っているように見える。


なんだろう、あれ?



気になって、覗き込むように体を少しずらすと、大司教の手元が良く見えた。


あれは、カード?



大司教が手に持っていたのは、何も書かれていないカードサイズの白紙だった。



それを不思議に思っていると、青白い光が、大司教とレオを包むように拡大していき、数秒後それはおさまる。



「なんだったんだ、今の?」



俺は強い光を避けるために目に当てていた手をゆっくり離しながら呟いた。



隣からは同じくレノアが、驚いたような吐息を漏らしていた。



後ろからなので、レオがどんな顔をしているのかは分かりかねたが、体を強ばらせているところを見ると、彼自身も不可解な光景に気後れしているのだろうことが分かる。



数秒間の沈黙の後、それを破るように、大司教が甲高い喜びの声を漏らした。



「ああ、なんと。 流石は勇者様でおられる。 まさかここまでとは……」



その声に反応し、俺達は一斉に声の主の方を見やる。



「どういうことですか……?」



最初に声を出したのはレオだ。



「おっと、失礼しました。 つい素晴らしいものを目にしたものですから。 それより、こちらを」



そう言いながら大司教はレオに近づき、先ほどのカードを手渡した。



しかし、驚いたことに、白紙だったカードには文字と思わしきものがぎっしりと書き綴られており、中央には円形の空白があった。



「これは?」



「こちらが、レオパルド君のステータスプレートになりますね」



「これが……」



レオは関心したように、その受け取ったカード見つめながら零した。



そして大司教は1つ咳払いを合間に入れて、このステータスプレートと呼ばれるカードの説明を始めた。



その説明を俺なりに要約する。



このカードには、ステータスを確認することが出来る特殊な術式が刻まれている。


そして、それは身分を証明するものでもあり、国への入国審査や就職、学園への入学など、様々な場所で必要不可欠になってくるものだ。


俺がぱっとイメージしたのは、地球で言う、免許証やパスポートの類だった。


しかし、ステータスプレートはその機能だけに留まらず、その人物の基本的能力値が値として分かるのだ。


確認する方法は、カードの中央にある空白の部分に、指を当て指紋をステータスプレートに認識させることで、視界内に映し出されるという仕掛けらしいが、その構造の仕組みはいまいち分からなかった。


ただ、この世界に魔法という未知の力と技術があるということを実感させるには十分すぎる仕掛だ。


基本的能力値は8つに分類される。


『レベル』『体力』『天命』『攻撃力』『防御力』『身体能力』『魔力』だ。


経験値の獲得によるレベルの上昇はその他の基本的能力値に影響を及ぼし、上げれば上がるほど、能力値も共に上がっていくという事だ。


この他には、適正職やその人の持つ技や素質、つまりスキルや称号などが表示されているのだという。


と、少し長くなったが、つまりステータスプレートはその人の潜在的情報を全て確認することの出来る便利アイテムなのである。



「この勇者って言うのが、僕の適正職なんですね?」



一通りの説明を聞き終えると、レオがそんな風に訊いてた。



「その通りです」



今きっとレオの視界内にはステータスが浮かび上がっているのだろう。



「でも、これじゃあ他人に見せれませんよね? ならどうやって身分証明として使うのですか?」



「それなら心配いりませんよ。 頭の中で『開放(オープン)』と呟いてみてください」



レオは「やってみます」と頷いて、数秒後、空中にぼんやりと光が浮かび、それが集合し始めた。



そして、ゆっくりと画像のような形状を構築していき、先程大司教が説明したような数値がずらずらと刻まれていく。



俺もレノアも、レオはなおさらにその不思議で奇天烈な光景に唖然としていた。



「ステータスが空中に……」



レオが吐息交じりに感嘆の声を漏らしている。



「『不可視化(クローズド)』と言えば収めることができます」



レオはそれを実行して、先程まで空中に浮かんでいたステータスは霧散するように消えていった。



「それより、そこの2人の分のステータスプレートも授与しませんとね」



大司教のその言葉で、次にはレノアがステータスを受け取った。



俺はその間に戻ってきたレオに耳打ちする。



「結局レオは何のスキルを選んだんだ?」



「ああ、僕は『全知』を選んだんだ」



「まじか。 それ俺が胡散臭いっていって選ばなかったやつだ。 よく信じたな」



「まぁ、どれもこれも胡散臭かったから、どうせなら1番良さげなやつにしたんだ」



「それにしても『全知』ならいかにも陽介って感じだな」



「まあね。 それで、アレクの方は何を選んだんだ?」



「いっただろ? 全部胡散臭かったし、選ぶのもなんか面倒だったもんで、ランダムにした」



「はは、お前らしいな。 ランダムの結果はどうだった?」



「なんか『成長率向上』て言うやつでさ、あいつ曰く外れのスキルらしいんだけど、あの中では現実味もあったし、何より好感の持てる能力だったから、俺にとったらよかったかな」



そうやって俺たちで、報告会をしながら笑いあっていると、不満そうな顔で戻ってきたレノアが言った。



「何2人で楽しそうにしてるの。 仲間はずれにしないでよ」



「ごめんごめん。 それより、にゃって言わないんだな」



レオは微笑しながら謝って、あの奇妙な語尾について言及した。



「あれは、美羽ちゃんと話すときだけなの」



すこしばかり空気がぎすぎすとしだした感じだったので、俺はここで話題を変えて、レノアのスキルについて訊く。



「それで、レノアはスキル、何にしたんだ?」



すると彼女は「ふふん」と自信ありげに鼻を鳴らすと。



「『猫化(キャットラン)』って言うのにしたの。 どう、可愛いでしょ?」



それを聞いた瞬間、俺とレオはお互いに目を合わせて吹き出した。



「猫化って、どんなスキルだよ」



「僕も『猫化』っていうのはちょっと何が起こるかわからないな」



「なによ、2人して! すごいんだよ、猫化」



「それで、いったいどんなスキルなんだ?」



「なんかね、凄いやつ」



「「いや、わからん!」」



レノアのポンコツに、俺とレオの声が重なった。



そんな俺達の態度にレノアはしゅんとなる。



しかし、彼女が言いたいことを代弁するように大司教が説明してきた。



「『猫化』というのは、瞬発力と跳躍力などの身体能力を格段に飛躍させる素晴らしいスキルです。 まさに勇者に見あったスキルと言えるでしょう」



それを聞いて俺達は呆気に取られるが、しめしめとばかりにレノアは態度を一変させて目で言ってくる。



「どやぁ」



うわぁ、うぜー。



そう思って、俺もレオも渋い顔をしていた時、大司教は続けて言ってくる。



「それより、もう1人の勇者様の授与が終わってませんので、こちらへお越しください」



それを聞いて、自分がまだステータスを貰っていないことに気づいた。



「わかりました」



こうして、ようやく俺のステータスの授与が始まったのだ。






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