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2.誕生日の妙光

早速ですが、第2話投稿です。







できる妹をもった兄は苦労するなどということが言われることがあるが、そんなものはあくまで一般論でしかない。



確かに俺にもできた妹、それも出来すぎた妹が1人いるのだ。



頭脳明晰、才色兼備、おまけに運動神経抜群で全国大会にも出場するような部活から助っ人のオファーが来ることだってよくある話だ。



顔立ちはまるで人形のごとく整っており、幼いながらも凄まじい魅力を放つ容姿だ。



母の影響で、薄色の茶髪に、ブラウンの透き通った大きな瞳。



人懐っこく、同学年からも他学年からも信頼が厚く、その優しい性格も相まって老若男女問わず、絶大な人気を誇る。



容姿、中身共に完璧な少女。



現在中学生の妹、逢坂 美羽はそういう完璧な妹なのだ。



俺もよく「できた妹をもつと大変ねぇ」などと憐れむよう目で見られることがあるが、そんなもの気にしたことは1度だってない。



話を戻すが、何故俺に至っては、一般的の例外があるのかと言うと。



「お兄ちゃんー、今日も一緒にお出かけしよ」



「仕方ないなぁ、美羽は」



「やったぁー!」



とまぁ、こんな会話が日常的に繰り広げられていると言えば分かってもらえるだろうか。



そう、逢坂 美羽という少女はその美貌と才能を持ち合わせながら、中学生という盛んな時期にも関わらず、俺に甘えん坊な超絶可愛い妹なのだ。



ついつい甘えてくる美羽に頬を緩ませ、溺愛しているのがこの俺、逢坂 優真という訳だ。



念の為に言っておくが、もちろん妹として、溺愛しているという事だ。



確かに可愛い妹だが、異性として彼女を見たことは無い。



それもそのはずで、漫画や小説のように血が繋がっていないと言う、ロマンチック設定は俺達の間では成立しない。



正真正銘、血をわけた本当の家族だ。



実を言えば、母親も父親も俺と美羽が幼い頃に事後で他界しており、現在唯一血の繋がった家族は俺にとっては美羽、美羽にとっては俺ということになっている。



というわけで、俺と美羽はもはや夫婦のように仲がいいと評判のおしどり兄妹という訳だ。



そして今日も、美羽とデートで遊園地に遊びに来ている。



「なぁ、美羽、最初はどれに乗ろうか?」



俺がそう訊ねると、美羽はそんなの当たり前でしょ、というように笑ってみせて。



「最初はやっぱりジェットコースターだよね」



「ジェットコースターかぁ、あまり得意じゃないけど……」



俺がそうやって渋っていると、美羽は上目遣いで目をうるうるとさせながら。



「お兄ちゃんと乗りたいの、だめ?」



そんな表情で言われたら、お兄ちゃん頑張っちゃうなんて気持ちの悪いことはさすがに言わないが、それを言いたくなるくらい美羽は可愛いのだ。



俺は衝動を必死に堪えて頷いた。



「分かったよ。 今日は美羽の誕生日だからな、何でも来いだ」



そう、何を隠そう今日は、美羽の14歳の誕生日。



このデートはそのお祝いという意味があるのだ。



俺の返事を聞くと、美羽は、花が咲いたように笑って、喉を鳴らしながら俺に抱きついてくる。



「お兄ちゃん、大好き!」



もう14歳にもなるのだからそろそろ甘えるのはよしなよ、そんなこと俺が言うと思うだろうか。



いつまでもこうやって甘えていて欲しい、そう毎日神様に祈りながら生きているようなシスコンの俺が。



そんなこと断じて否だろう。



けれど、いつかは兄離れしなければならないということも承知はしている。



だが、想像はしないでおいているのだ。



そんなことを想像するのはこの世で俺が1番恐れているものなのだから。



そんなことをひしひしと感じながら、抱きついてくる美羽を撫でていると。



「ねぇ、お兄ちゃん、お願いがあるの」



俺の顔を見上げて少し照れくさそうにそう呟いた美羽に俺は笑顔で答えてやる。



「なんでもいいよ。 ちょっと無理難題でも美羽のためならなんでもするよ」



「それじゃね、約束して欲しいの」



「約束?」



「うん、約束」



俺は最初首をかしげつつも、なんでも聞いてやると言ったからには、なにがきても断る気はないので、ドンと来いと胸を叩いてみせる。



「分かった、何を約束するんだ?」



すると美羽は顔を真っ赤に染めながらも、すうっと息を吸い込むんで言った。



「何があっても、美羽のお兄ちゃんでいて欲しいの」



俺はいきなりの発言に気後れするが「何をいきなり」なんて野暮なことは絶対に言わない。



こんなことをいきなり言い出すおかしな所もあるが、そこがまた可愛いのだ。



美羽がこうしてお願いしてきている、その事実だけで、俺は動ける。



そして、公衆の面前ということも忘れて、俺は身長の低い美羽に目線を合わせるように中腰になって、小指を差し出した。



「約束するよ。 何があっても、俺はずっと美羽のお兄ちゃんだ」



それを聞くと、美羽はパァっと明るい表情になって俺の小指に自分の小指を重ねてくる。



「ありがとう!」



それを聞いて頬をが緩むが、ただ、どこか引っかかるところがあった。



何かが起こりそうな予兆を感じた。



だが、俺が心配そうな顔をすれば、せっかくのお祝いの日なのに、美羽を楽しませることが出来ない。



俺は違和感を無かったことにした。



数秒間そうしてから、俺は「さ、今日はめいっぱい楽しもうぜ」と美羽の手を引いてジェットコースター乗り場へ向かおうとした時だった。



「相変わらず、真昼間っからお熱いねぇ」



ふと、聞きなれた声が耳に入ってきて、同時にその方を窺うと、予想通りの人物が微笑しながら立っていた。



もしかしたら何か起こるかもという予感はこのことだったのかもしれない、と俺は胸をなでおろした。



「お前には言われたくないけどな」



そして俺はそいつに向かって皮肉めいた口調で返してやる。



すると彼の隣から「へへへ、美羽ちゃん久しぶりだにゃあ」とニヤニヤとしながらこれも見知った女子が湧いて出た。



それを諌めるように男が言った。



「おい彩乃、やめとけよ。 美羽ちゃんが気味悪がってんぞ」



「おっとこれは失敬だったにゃ。 ごめんね美羽ちゃん」



俺はそんな2人を眺めて言った。



「お前らも来てたんだな、陽介に彩乃」



すると、彼は俺の方に向き直って。



「ああ、お前さんらデートだろ?」



そう答えたのは、日下部 陽介、俺の親友だ。



一言で言えば、眼鏡をかけた自称クールガイだが、俺からそれを否定してやることが出来ないのが悔しい程の完璧超人だ。



身長はスラリと高く、目鼻立ちはキリッと整っている。



その眼鏡の通り頭脳明晰で、俺の学年では常にトップの成績を保持している。



そして、先程から美羽に抱きついて猫のような喋り方の陽気な女子は、狭山 彩乃。



陽介繋がりで、友人になった女子だ。



顔は幼さを残しながらも、学年随一の美少女と名高く、運動神経抜群の超絶リア充女子なのだ。



しかし、おつむの方は足りないらしく、成績は常にワースト1位を保持する程の阿呆なのだが。



ぶっちゃけてしまえば、この2人は付き合っている。



「まあな。 お前らも昼間っからラブラブなことで」



俺はなおも皮肉げに言ってやるのだが、当然悪意などはさらさらない。



俺達4人はよく一緒にいる仲良しこよしの友人同士なのだから。



「こんにちは、陽介さん、彩乃さん」



美羽はいつもの様にさん付けで彼らを呼ぶ。



美羽は14歳の中学生、俺達は17の高校生なのだ。



「こんにちは、美羽ちゃん」



「会いたかったにゃぁ、美羽ちゃん!」



2人は美羽の挨拶ににこやかに返すと、美羽も嬉しそうに目を細めている。



俺はそんな光景を緩んだ頬で眺めつつ、どうせなのでと、3人に提案した。



「せっかくだし、このまま4人で回らない?」



そんな提案に、3人は息ぴったりに「最初からそのつもり」とでも言うように頷くのだった。



こうして、結果的にはいつもの4人で美羽の誕生日を祝いながらこの日を過ごした。



そして日も沈み、辺りは薄暗く、人気も無くなってきた。



閉園時間は刻々と迫りつつある中、陽介が言い出した。



「なぁ、このままの優真の家で美羽ちゃんの誕生会しない?」



それを聞いた途端、俺はげっと顔を顰めた。



この2人が来てしまえば今日という日のために頑張って用意した美羽へのサプライズが失敗に終わってしまう。



だが、そんな提案に美羽は乗り気だし、彩乃は当然のように着いてくる気満々だ。



仕方がない諦めるしかないか、と肩を竦めながら、いやいやに頷いた。



「よし、決まりだな。 それじゃあ買い出しにいこう」



そうして、俺達一行が移動を開始しようとした時だった。



パァっと、辺りが眩い奇光に包まれた。



「なんだ、これ!?」



「一体何がおきてるんだ!?」



俺と陽介はお互いに目を見開き叫びながら、俺は美羽を、陽介は彩乃を抱き寄せて、何とかこの事態から守ってやらねばと奮気する。



しかし光はみるみる増幅していき、完全に俺達を包み込んでいった。



2人は泣きながら俺と陽介にしがみついている。



こんな奇妙な事、普通だったら俺だって泣き出したい事態だ。



それでも俺も陽介も、腕の中で震える彼女らを放って泣き出すほど、プライドを捨てた男ではない。



しかし、そんな奮闘も虚しく、飲み込まれるようにして、俺達はその怪しげな光の中に消えていったのだ。



それはちょうど閉園時間の鐘が鳴る時だった。




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上手くランキングに載ることが出来れば、毎日更新で行く予定です。

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