白いトカゲの名前をつけてみた。
教室につくと教室には数人すでに人が来ている。
みんなまだ卵を持って魔力をこめている。
強い魔物程魔力をこめる時間が長くなるため、俺のように卵からかえってしまうことはない。
「おはようアルス」
マリアはもう学校に来ていたようだ。
「おはようマリア。卵はもうかえったかい?」
「少し動いているようだけどまだね」
マリアの卵は前見た時よりも少し大きくなっている。
きっとかなり強い魔物が生まれるに決まっている。
それから少し雑談をしてホームルームから授業へと進んで行く。
クラスの半分以上はまだ魔物が生まれていないようだった。
幸いにも遠巻きにこそこそ俺の陰口を言ってくる人間はいるが、正面切って文句を言ってくる人間はいない。
ただ、問題は昼休みにおこった。
マリアが一部の男に絡まれていた。
「マリアさん、よかったら一緒にお昼食べない?」
「むしろ僕と食べないかい?」
「あっ……えっと……」
俺がにこやかにマリアの方を見て微笑んでいると、マリアと目があう。
マリアは何かチラチラ俺の方に目で合図をしてくる。
あの目はきっと私ここでもモテているのよ。どうよ。すごいでしょ。
っていう目だな。
よし。俺は屋上でも行って食事するか。
そう思い席を立ってマリアの方に背を向けると背中にものすごい殺気を感じる。
あれ? 俺なにか反応を間違ったのか。
「ちょっとアルスいい?」
いつの間に来たのかマリアは俺の横に来て俺の手を引いて屋上への階段をのぼっていく。
教室に残った男子からはあのトカゲ男め。
絶対に恥をかかせてやるとか。
嫌な声が聞こえてくる。
俺いったいなにかしたのか。
★
屋上に行くとそこには数人の生徒がいた。
あいている場所で俺はなぜかマリアに正座させられる。
俺が何をしたというのだ。
「アルス。普通に考えてよ。幼馴染の可愛い女の子が男に絡まれていたらば助けるのが普通だと思わない?」
「あれって? モテてるのアピールしていたんじゃないの?」
「はぁ? あんたの頭の中溶けたチーズでも入ってるの?」
「いや、普通に脳みそ入っていると思うけど。でもあけたことはないからわからないけど」
マリアの顔がどんどん歪んでいく。
あっこれ一線超えた奴だ。
マリアの身体から魔力が溢れていく。
その横で溢れた魔力をのんきに俺の相棒の白いトカゲが食べている。
コイツ魔力吸収とか覚えているのか。
なんて一瞬頭をよぎるがそれよりもマリアだ。
「いや、マリアちょっと話し合おう。俺が悪かった」
「へぇー何が悪かったのかじゃあ言ってみなさい」
「あっ……えっと……そうだな。あれだな。マリアが可愛いすぎるってことかな」
「えっそんな私が可愛いから罪だなんて。アルスったら」
今までの魔力放出をやめ急に顔を少し赤くしながらもじもじしている。
相変わらずチョロイ。
このギリギリのラインを見極めないといけない。
「さて、それじゃあ一緒にご飯食べようか」
「うん。アルス一緒に食べよ」
俺は正座から解放され二人でベンチに座った。
「そういえば、その子には名前をつけたの?」
「うん。まだなんだよね」
本当に白いトカゲなのかわかってから名前を決めようと思っていたが、結局正解はわからなかった。
ただ、トカゲにドランとか名前をつけたらば悪いし、ドラゴンにトカゲの名前をつけたらば可哀想だろ。
そんな話をするとマリアからは少し可哀想な目で見られる。
「アルスの気持はわかるけど、多分トカゲ系の魔物よ。現実を見て」
「……だよね。わかってはいるけどね。何かいい名前が思い浮かばなくてね」
確かに白いトカゲでは可哀想な気がする。
「よし!それじゃあクラウドって名前にしよう」
「なんでクラウド?」
「う〜ん。なんていうか強そう」
そうこういうのは名前の響きが大事。
なんかいいじゃないか。
「クラウドでいいか?」
「ピギゥー」
嬉しそうに鳴いている。
よし今日からお前の名前はクラウドだ。




