白いトカゲについて先生に聞いてみたがわからないらしい。
翌日。
俺は少しだけ早く学校に行った。
あの後マリアと別れてからもこの魔物がなんていう魔物なのかを調べようとしたのだが、結局明確な答えがでなかったのだ。
そこで学校の先生にこの魔物のことを聞きに来たのだ。
早朝の職員室では先生たちが忙しそうに準備をしていた。
まだ朝の会議ははじまっていないらしい。
忙しそうに書類整理をしている担任のエルシア先生に声をかける。
「先生おはようございます。ちょっとお聞きしたいことがあるんですが今お時間大丈夫でしょうか?」
「えぇいいわよ。ちょうど私もアルスくんに話があったのよ」
話? 入学早々まだ何も悪いことは……あれか。
いいふらしたことでバツがあるとかか。
「それでアルスくんどうしたの?」
先に俺の方の話から聞いてくれるようなので、魔物を見せながら何の魔物か聞いてみる。
「う〜ん。これはブラックトカゲのアルビノかも知れないわね。アルビノっていうのは色が白い個体のことをいうのだけど、なんとも言えないわね。もう少し大きくなればわかると思うけど。ただそれよりもこの子まだ未熟な状態で外にでて来てしまったんじゃない?」
先生は卵を落としてたと言うのを言っていないのに未熟だというのを言い当てた。
さすが歴代1位と言われたテイマーだ。
「そうなんです。先生よくわかりましたね。実は卵を落として割ってしまったんです」
「えっ。落としたの? それでよく生まれてきたわね。でも未熟で生まれてくると魔力がすごく不安定になりやすいのよ。この子も魔力が不安定だからすぐ死んでしまうこともあるわ。それで、先生からの提案なんだけど、実はこの卵を配った日アルスくん人助けして遅刻したでしょ?」
「えっはい。そうですけど……」
でも遅刻の理由は話していなかったはずだ。
「実はあなたが助けた人からお礼の連絡が来ていて、それで他の先生たちと相談の結果、卵をもう一つ特別に渡そうかって話があるのよ。そうなると、この子とはもちろんお別れにはなってしまうけど、でも3年間を共に過ごすパートナーだから少しでも強い方が楽よ。どうしたい?」
「ちなみに、もしこの子を手放すとなるとこの子はどうなるんですか?」
「……知らない方がいいこともあるわよ」
つまりはそういうことだろう。
結局は生まれ次第で人生は変わってしまうということだ。
こいつも俺のところに生まれなければきっと元気に生きていけたはずなのに。
もし断ればこいつの命はここで終わってしまう。
生まれのよくない人間と同じだ。
生まれが悪ければ這い上がることができない。
「俺は……この子とやっていこうと思います」
「そう?アルスくんならもっと要領よくやっていくと思ったけど。ただいいの? その判断はかなり大変になる可能性が高いわよ。アルビノっていうのはどこかに異常がある場合があるの。身体が弱いとか。もちろん。その子が亡くなってから新しい卵を選択することはできるけど、でもそれだと他の人たちからはさらに差がひらいてしまうわ。それにあなたのクラスではそのこは間違いなく差別の対象になるわよ。それも覚悟の上でってことよね?」
「はい。それでも卵を選択する時にこの子が俺を選んでくれた気がするので」
「そう。そこまで言うならば先生は応援するわ」
「えっ応援してくれるんですか?」
「もちろんよ。ただあなたの覚悟を試しただけ」
そういうと先生は俺に素敵な笑顔を向けてくる。
一瞬ドキッとしてしまう。
この先生も学生時代別の意味で伝説を作ったらしい。
男性をフッた数も過去1位らしい。
「さて、それじゃあまずはこの子をどうにかしないと本当に死んでしまうわ」
「いったいどうすればいいですか。」
「少し与える魔力を増やした方がいいわね。魔力感知はできる?」
「はい」
「それじゃ、時間があれば、常にこの子に魔力が安定するまで魔力を与えなさい。それで安定すれば少しは大丈夫よ。さぁ授業が始まるから教室へ先に行きなさい」
いつのまにか先生たちの会議も始まるようだ。
俺も教室に行く。
この学校ではSクラスからEクラスまでクラス分けされている。
これは入学の時のテストの結果で別れている。
その中でSクラスは貴族や王族の子供。
Aクラスは下位の貴族や成績優秀者。
俺やマリアが入ったのはBクラスだ。
Bクラスはよく言えば普通のクラスだ。
マリアが言っていたようにうまくいけば赤い卵をもらえる人もいるが多くは緑か黄色だろう。
その中で白の卵と言うのはEクラスと同じということだ。
この世界では差別意識が今でも残っている。
この学校のEランクでさえ世間では上位だが、でも学校の中でのランクと言うのは覆すことはできないのだ。
その中でBクラスにいるのに白の卵をもつ俺は確実に差別の対象になるだろう。
はぁ。正直教室に行くのも気が重いがそういう差別意識のある奴らとは永遠に付き合っていくしかない。
これは仕方がないことだ。
少し気が重いがそれでもこの子と3年間を一緒に過ごすしかない。
俺は白いトカゲの方を見てよろしくな。
と言うと、
「ピギゥー」
と俺の方を見てうなずく。
本当に可愛いトカゲだ。