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朝から掃除をしていたらば人まで流してしまったのだが……

 翌日いつもより早く目が覚める。

 何か寝ていても昨日の王宮内での襲撃がずっと気になっているのだ。


 王宮内に簡単に侵入できるということは、もちろん学園にも簡単に侵入できる。

 もし、昨日の狙いがアスリアならば警備が薄い学園にいる時こそ危ないのではないか。


 家にいても特にやることがないので早めに行って訓練場で待つことにする。

 特に今の俺は魔法が使えない。

 いや正確には魔法を使うとすぐに魔力欠乏を起こしてしまう。

 いざという時はクラウドに任せるしかないのだが。


 学校にはもちろん警備の人がいる。

 ただ侵入できないかと言われればできないことはない。

 それに死角になる場所も多いのは事実だ。


 学校につくと警備の方以外まだ誰もいない。

 普段の騒がしい学校とのギャップがまるで別の世界に迷い込んだような気分になる。

 誰もいない学校を一人で歩いていると少しだけ気分が落ち着いてきた。

 少しオークの件と昨日のことで過敏になりすぎているだけかも知れない。


 少し気分を落ち着かせてから魔法訓練場に行く。

 もちろん誰もいない。


 ん?こんな時間に来たことはなかったが、窓から差し込む光の中で魔法訓練場の床がやけに汚れているのが目立つ。

 テイマーの養成学校というだけあって、魔物の排泄物で汚れてしまうことはよくある。

 ただ、それでもある程度掃除のしやすい構造になっているのでこんなに汚れが目立つことはなかったのだが。まだ他の人が来るまでには時間がある。それに俺は今日は魔法が使えないので……やることは一つだ。




「もしも♪あなたが異世界にいったならば~♪」

「ピギャー♪ピギャー♪」

 誰もいない魔法訓練場をクラウドと一緒に掃除をする。

 ノリノリで歌を歌いながら。


「よし!クラウド次はここに熱湯を高速で流して」

 魔法訓練場の床は魔法の効果をはじく石でできている。

 そのため、魔法で作ったお湯で床が傷むということはない。

 ただ、フンなどのこびりつき汚れまでは落としてくれないのだ。


 今度は調子にのって、

「次は温風魔法で表面の水を弾き飛ばしながら乾燥させるよ。あそこの入口から全部流しちゃおう」 

「ピギゥー」

 調子にのったクラウドがいつもより強めに風魔法を使う。

 もはや熱突風だ。


 入口に急におじいさんがあらわれる。

「おい!お前たち!?」

「ふがっ!」

 熱突風に吹き飛ばされる用務員の格好をしたおじいさん。

 別に戦っているわけでもないのにスローモーションで見える。

 あっ死んじゃうんじゃ。


 頭の中を走馬灯のように流れる。

 本日アルフグレド学校に通う1年生が用務員のおじいさんを殺害した件で。

 学生は罪を認めており。

 なお、殺害の実行犯の従魔は……。

 まずい!


 壁に叩きつけられ、クラウドが飛ばした水を全身に浴びるおじいさん。

 あっやってしまった。


「ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 おじいさんは頭をフリながら、

「あぁ温かい魔物の糞と汚水まみれになって、背中を強打した以外は特に問題ない。後はちょっと飲んじゃったくらいだな」

 そう言うと、俺たちに背中を見せ、口からキラキラが流れ出る。

 本当に申し訳ないことをした。


「ところでお前たちはこんな朝早くから何をしてたんだ」

「朝早く来すぎて、そしたらいつもきれいな床が汚れてたのでちょっと掃除をしてました」

「あぁ。だいたい朝学生がくる前に俺が掃除をしてるからな。ここはお前たちが?」

 おじさんは訓練場を見ながら言う。


「はい。」

「そうか助かった。俺が掃除したよりもキレイになってるよ。ありがとう」

「すみませんでした」

「なに、気にするな。誰にだって間違いはある」

 そういうとおじいさんはポケットからスライムをとりだし自分の服の水分や汚れを吸収させる。


「あっ自己紹介がまだだったな。この学園で用務員をしているエルガだ」

 エルガさんが髪の毛に白髪が混じりおじいちゃんという印象を受けるが、よく見ると身体が鍛えられ引き締まっている。

「今年1年に入りましたアルスといいます。エルガさんもテイマーなんですか?」

「そうだよ。君らよりはだいぶ先輩だけどね。そういえばさっきの魔法は君が使ったのかい?」

「いえ、相棒のクラウドが使いました」

「ほぉ。ちょっと抱っこしてもいいかな?」

「どうぞ」


 クラウドはエルガさんに抱っこされると気持ちよさそうにあくびをしている。


「うん。かなり懐いているしこの子は強くなるね。そういえば魔法は生暖かい風だったけどそれも教えたのかい?」

「はい。ちょっとお風呂沸かせるのにお湯を作らせたらば熱風も作れるようになっちゃいまして」

「ほう。そうかそうか。アルス君悪いんだけど他にも手伝って欲しいことがあるんだけどいいかい。」

 エルガさんが腰をさすりながら聞いてこられるとどんなことでも断れそうもない。


「もちろんです。俺のせいですみません」

「いや気にしなくていいよ。すぐ終わるから。それじゃあいこうか」

 そう言って校門の方へ歩き出す。


 そこへ

「おはようアルス」

「おはようございます。アルスさん。昨日はありがとうございました」


 マリアとアスリアが一緒にやってきた。

「おはようマリア。おはようアスリアさん。こちらこそ昨日はありがとうございました」


「アルスどこにいくの?」

 俺は朝からやらかしてしまったことを手短に話す。

「なら私も手伝うよ」

「私も微力ながら手伝わさせて頂きます」


「いや2人にはまだ早いからやめた方がいいと思うぞ」

 エルガさんはなぜか2人をとめていたが、


「おじいちゃん私たちをそこらのひよっこと一緒にしないでください」

「そうですよ。それにアルスさんのためなら喜んでお手伝いします」


「そこまで言ってくれるなら」

 とエルガさんも了解してくれたが、その後2人は学校に入学して一番最悪な経験をすることになる。

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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