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家までの帰りに幼馴染にあう。

「白い卵かぁ」

 正直がっかりしなかったかと言われればがっかりしなかったわけではない。


 世界は常に弱者にとって理不尽なことばかりだ。

 生まれた瞬間から家柄という差別に始まり、自分の意思とは無関係に小さい頃の教育でその人の持っている能力が左右される。


 一度転げ落ちてしまっては上に登るにはとても大変だ。

 でも、誰もそれを教えてはくれない。


 いや、教えてくれていたとしても、実際に経験しないとわからないというのが正しいのかも知れない。


 今日の朝の行いを後悔しているかと言われれば後悔はしていない。

 あのおばあさんを助けていなければ亡くなっていた可能性もあるし、あのお姉さんにストーカーと間違われたのはショックだが、それでも落とし物を届けてあげたことも後悔はしてない。


 だけど……。


「はぁ白い卵か」


 この白い卵というのは、言い方を変えればテイマー養成高校では下から数えた方が早いのが決定されているようなものだ。


 スライムをいくら鍛えても3年間で生まれたてのドラゴンには勝てないのと同じだ。

 でも、この学校ではそうだとわかっていても育てるしかない。


 世間ではこの学校をでたというだけでステータスとなり、どんなに低い順位だろうとテイマーとして活躍するにはこの学校卒業が必要なのだ。


 ただ、あまりに弱すぎる魔物を引いてしまうと必然的に単位取得が困難になり勝手に脱落していくというのももちろんあるのだが…。


 俺はトボトボと白い卵を両手で持ち、魔力をこめながら家路へと急ぐ。

 卵を孵化させるために今日から、3日間常に自分の魔力をこめ続けなければいけない。


 別に魔力をこめなくても卵は放置しておいても1週間ほどでまわりの魔力を吸収して勝手に生まれてくる。ただ、この自分の魔力をこめるという作業をすることで生まれたあとの懐き具合が全然変わってくるのだ。


 懐き具合が変わってくると、今後の3年間が全然変わってしまう。


 ちなみに実は学校からはこういう情報はだされない。

 学校から言われているのは、


「卵をもらってから3日間は卵と過ごすこと。その間1年生は学校を休みとする」


としか言われていない。

 すでに情報戦は始まっており、こんなことはテイマーになるには常識だった。


 だから、いまさらそれらを知りませんなんてことになっても知らないというのが学校の判断だ。

 常に自分で情報を仕入れ成長していかなければ社会にでた時に使えないというのが創始者の考えらしい。

 創始者は学生のうちに大いに失敗しろという考えの持ち主だ。


 失敗できるうちに失敗せず社会にでてから失敗をすると無駄にプライドが高くなったり、心が折れやすくなるらしい。


 確かに今まで与えられるのが当たり前だった人間がいきなり、社会にでて自分で情報を仕入れろと言っても無理な話だろう。


 ただ、俺はその情報を事前に知っていたので昨日のうちに同級生全員にこの情報を知らせてやったら先生たちからは悪い意味で名前を覚えられてしまい、この情報を知っていた一部の学生からは非難の目を向けられた。


 まぁただ仲間に恩を売っておくのも情報戦を制するには必要だ。

 足を引っ張り合うよりも共有させた方が何倍も上を目指せると思うのだが、さすがにそういうわけではないらしい。


 そうは言っても俺は白卵だからな。


 俺が家までの道のりで10回目の白卵への後悔をしていたところ、少し先に幼馴染のマリアが歩いているのが見えた。

 マリアも両手で卵を持って魔力をこめている。


 まったく俺に気がついていないようなので、俺もあえて見なかったことにする。

 マリアは俺よりもすべてにおいて優秀だ。


 能力的にも家柄的にもウチとは全然違う。

 ようは生まれもっての勝ち組だ。


 ただ、マリアの父親が俺の父親の後輩とかっていう話で昔から家同士仲が良かったのだ。

 そして家が近い。家の大きさはもう比べ物にならないくらいマリアの家の方が大きいんだけど。

 マリアは能力的にはかなり高いのに唯一欠点といえば若干コミュ障だ。

 まぁそれを本人に言うと命の危険が…。


「アルスこんにちは」

 気が付くとマリアが俺がいることに気が付く。


「あっマリア。いたのか。卵に集中しすぎて全然気が付かなかった」

 俺はあえて知らなかったことにした。

 気がついてて知らなかったフリをするとうるさいからだ。


「本当?もし、知っていて知らないフリされていたのなら泣いちゃうからね」

 そうマリアは冗談めかして言ってくる。

 まだ今日は機嫌がいいらしい。


 機嫌が悪い日だと、たまに平気で殺害予告を告げてきたりする。


「アルスは何色の卵をもらったの?私は赤だったよ」


「俺は白だよ」


「さすがアルス! わざと弱い魔物から育ててこの学校でも最強を目指すだなんて、私も見習えばよかった」


「いや別にそういうわけじゃないぞ。ただ普通に遅刻しただけだから」

 俺がそういうとマリアの可愛い顔が歪んでくる。


「はぁ!?あれほど今日は遅刻すんなって教えてやっただろがぁ。ふざけてんのか?」

 マリアは結構こういうところがある。

 いきなりスイッチがはいってしまうのだ。

 スイッチを上手くきらないと、その後大変になるので、その日の朝俺が遅刻した理由を説明する。


「なんだ。そうだったんだ。さすがアルス」


 そう言いながらニコニコしている。

 この気分の上下さえなければ、普通に可愛いのだが。


 ちなみに、他の男子の前ではこのダークマリアになっているのを見たことはない。

 なので学校ではおしとやかで可愛い天使のようだと言われていた。

 実際はダークサイドに堕ちているのだが、よけいなことは言わない。


「でも、アルスなら白卵でもきっと大丈夫だよ。私を助けてくれた時みたいに……」


「そうだよなー。でもやってみないとわからないからな」


「きっと大丈夫。アルスはなんでもできるから」

 なぜかマリアは俺のことをすごいと勘違いしている。

 昔マリアをちょっと手助けしたことがあったが、その時のことをずっと恩に思っているらしい。

 別にたいしたことはしていなんだけど。


 それから二人で家に帰る。

 とにかく、今はこの3日間ひたすらこの卵に自分の魔力をこめなくてはいけない。


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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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