初心者のゴブリン狩りと言えばテンプレですよね。
この世界ではゴブリンやオークは同じ種族でも人の言葉がわかる種族と、人の言葉がわからず人間に害をなす種族にわけられる。
街の外にいるゴブリンは繁殖力が強く、正直教育が追い付かないため間引き対象として街の冒険者ギルドに常駐依頼としてでてくる。
オークなどの他の亜人種族も同じだ。
正直すべての亜人に教育を施せればいいが、どうやらそういうわけにはいかないらしい。
すべて育ち方である程度決まってしまう。
人間も同じ。
昔ゴブリンに育てられた人間がいたが、その子はゴブリンのように人を襲い、ゴブリンの言葉を話したという。その後人間に保護をされたが、その子は人の言葉を話すことはなく1年経たずに亡くなってしまった。
ここでも育った環境で運命が決まる。
人と共存するゴブリン。正直いい生活ができるわけではないし差別もある。
でも命を狙われることはない。
人と敵対するゴブリン。自由気ままに生きる代わりに、常に命の危険が伴う。
もしかしたら狩られる理由もわかっていないかも知れない。
それを理不尽だというべきか、自然の流れだと言うべきか正直わからない。
でも、唯一わかることは育つ環境次第で運命が変わるってことだ。
クラウドにはできるだけ小さい時に色々な経験をさせてあげたい。
弱い種族に生まれてしまっても、将来自分の運命を切り開けるように。
これが親心って奴なのかも知れないがそれを理解してもらうにはまだまだ時間がかかる。
「クラウドーもう少し早い対応したほうがいいかな。ただ、魔法障壁を常時はり続けられるようになったのはかなりいいね。でもそれに頼り切るのはよくないから、避けられるものはきちんと避ける事。後は次何がくるのかを考えて行動してみよう。」
「ピギゥー」
今、目の前には100匹程のゴブリンの死体が転がっている。
街の近くなのにゴブリンの集落が出来上がっていた。
何匹か上位種も混ざっていたようだが、所詮ゴブリンだ。
倒すのに苦になることはない。
「さっき、そこのメイジゴブリンが火炎弾を放って来た時にクラウド一瞬身構えたけど、魔力ドレインが使えるってことは次どんな種類の魔法を放とうとしているか見えるはずだから、慌てる必要はないよ。」
「ピギゥー」
と返事をしつつも飽きてしまったのかキョロキョロとまわりを見ている。
「わかったよ。そろそろ帰ろう。」
「ピギゥー」
そう言って俺の肩にのぼり頬に頭をすり寄せてくる。
クラウドは不思議だ。
いくらずっと俺の魔力を与え続けたからといって、ここまで理解の早い魔物はなかなかいない。
他の人はトカゲだと言うが、最初に出会った時の不思議な感覚といい普通のトカゲとは違う気がする。
ただ、相変わらずHPは低い。
強い魔物に出会ってしまった時に今のままでは生き残れない。
HPが上がりにくいならばスピードを上げるか防御力を上げるしかない。
人間にも得意不得意があるように出来ることを上げていくしかないのだ。
「よし、それじゃあ討伐の証の耳をとってギルドに寄って帰ろう。クラウド、今日はゆっくり一緒にお風呂入るよ。」
「ピギゥー」
★
帰りに冒険者ギルドに寄って討伐証明の耳を受け付けに渡す。
「ゴブリン112匹分の討伐証明です。」
「はいっ!?112匹。」
数が少なかったのだろうか。受付のお姉さんの驚きが異常だ。
結構短時間で頑張ったつもりだったんだが。
そうか。新人冒険者があまりいないこのギルドではベテランが基準になっているから、どうしても基準が高くなってしまうのか。
「えっと…アルスさん、さっき出ていかれて今戻ってきたんですよね。全部今日討伐したんですか?」
「ん?そうですよ。わざわざゴブリンの耳を収集するような趣味はありませんので。」
俺は笑顔で対応する。
世の中には色々な収集癖を持った人もいる。
俺もそんな変な収集家に見えるのだろうか。
もしかしたらレノバさんの知り合いみたいなポジションで変態扱いされているのかもしれない。
だとしたらそれは心外だ。
やっぱりあの人には出来るだけ近づかないようにしよう。
「アルスさん、あのこの耳の形って普通のゴブリンじゃないのも混ざっているようなのですが。」
「あっ確かに何匹か魔法を使うのとかいましたよ。やけに体格でかい奴とか。でも所詮ゴブリンですから。」
ゴブリンという種族は進化というのがある。
一定の経験値や生まれ持った才能でその種族にあったものに進化する。
その中でその耳というのが特に変わる。
そのため狩ってきたゴブリンの耳を見せれば大体どんなゴブリンに進化したかが判るのだ。
「ちょっと待っててくださいね。今確認してきますので。」
そういうと受付のお姉さんは慌てた感じでどこかに走っていった。
「キャッ」
あっつまずいて転んだ。
そんなに慌てなくてもいいのに。
でも、ドジッ子みたいな慌てた受付のお姉さんも可愛いかもしれない。
なんて余裕をもっていられたのはその時まででした。




