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最後の戦い


 ――王都郊外、王女離宮――


 三人を見送ったラミアは、直ぐにカテリーナへ使いを出し、自身も訪れた。


「夜遅くに、すまないわね」

「なんの。ベアトリーチェ様も心配しておられる」


 カテリーナとその配下は、既に出撃の準備に取り掛かっていた。

 諸侯と同格か、それ以上の地位にある枢機卿の私領に踏み込むのは、王女にとっても大きな賭けではあった。

 だが、敵対されていることに間違いなく、王女の友人の救出は、実力行使を可能にするぎりぎりの線でもあった。


 ラミアとカテリーナが詰める部屋に、大柄の男が入ってきた。


「ロンバルド様、こんな夜分に何か」

 カテリーナの声に緊張が混ざる。

 国と王都の防衛と治安を担う軍団と、更に王宮の近衛である騎士団、その頂点にある騎士団長ロンバルド。

 もし止められては、逆らう術がない。


 ラミアも初対面となる国の重鎮に、丁寧に腰を折って挨拶した。

 若き騎士と魔導師、美しい二人の姿を見並べて、騎士団長は口を開いた。


「オルシーニのとこへ行くのか?」

 カテリーナは無言で頷く。

「ならば、王都の一隊を出す。連れてゆけい」

 何故そこまで、王陛下の許しなくして軍団兵は軽々と動かせない、尋ねようとしたカテリーナを騎士団長が制す。


「ここ最近、オルシーニのとこへ行った娘、ほとんどは娼婦だが、それが戻らぬとの報告がわしのところまで上がっておる。相手が枢機卿ゆえ慎重にならざるを得なかったが、良い機会だ。エンリコの隊を出す、信頼出来るぞ。それと……」

 騎士団長の合図と共に、数名の騎士が入ってきた。


「これも連れてゆけ、そなたに付ける。喜んで命令に従うとよ。わしと残りで姫様は守るゆえ、心配いたすな」

 

 王直属の騎士が公爵家の騎士の配下に入るなど、異例中の異例であったが、騎士達は不思議と嬉しそうな顔をしていた。


 伝令を走らせ、離宮の前庭に馬が並ぶ。

 ベアトリーチェ王女も、督戦の為にわざわざ出てきた。


「カテリーナ、ルシィとサガ様をお願いね」

 必ずと、カテリーナは請け負った。


 ラミアが手にしていた水晶が、激しく光を放つ。

 渡した宝玉が割られた合図、一団は挨拶もそこそこに闇の中へ馬を出した。


 残された王女が、騎士団長へ問いかけた。

「オルシーニ枢機卿が失墜なされば、お義母さまも諦めてくださいますかね?」

 直接的な質問に、ロンバルドは苦笑いをしつつ、別の答えを返した。

「王妃殿下は分かりませぬが、陛下は何かご決断なさるかも知れませんな」


 このところ娘からも逃げ回ってばかりのお父様が今更?

 そう疑問に思いつつも、王女は黙って騎士達の消えた先を見つめていた。



 ――オルシーニ邸、地下――


 大きな扉だ、引いてみるが鍵はかかっていない。

 ルシィとアデリナに、少し下がっててと言い、思い切りよく開いた。


 中へ踏み込んだ瞬間、速く小さな物体が幾つも体に当たり、跳ね返る。

 次に、目に見えぬ圧力のようなものがぶつかり、心臓が締め付けられる様な感じがした。

 最初に当たったのは、苦無のような飛び道具。


「ほう、魔物すらひれ伏す恐怖の魔法に耐えるとは、流石は異界の悪魔。それとも使い魔か」

 正面から魔法を放ったのは、オルシーニ。

 勘違いを訂正する必要はない、せいぜい警戒したままでいて欲しい。


「オルシーニ、もう教会にもバレたわ。覚悟しなさい」

 アデリナと、次いでルシィが入ってくる。

 もう手駒も数人のはずだが、オルシーニが諦める様子はない。

 それよりもと、床で光を放つ魔法陣――俺の部屋へ繋がるはず――を指差して聞いてきた。


「そこの魔法使いよ、これの使い方を教えてくれぬかね? 人を送って、生贄も捧げてみたが、何ら反応がないのだよ」

 な、なんてことを。

 下手すりゃ俺の部屋に異世界人や、人の死体が。

 クズだとは聞いていたが、これ程に節操がないとは。


「あなたなんかに絶対に教えません!」

 ルシィも怒り心頭のようだ、失敗して出来たとはとても言えない。


「ならば、体に聞くとするか」

 オルシーニは細く長い剣を取り出し、想像したよりもずっと素早く動いた。

 反応だけでルシィを庇う、俺の体はマナに守られているはず……だったが、左腕が大きく切り裂かれた。

 ルシィは驚きの声をあげて、俺も痛みにうめく。


「その程度のマナで、この剣は防げぬよ。魔神の体も断つという、教会伝来の聖剣の一振りよ」

 くそ、いい武器を持っていやがる。

 教会有数の名門出身はだてじゃないか。


 それにと、オルシーニは付け加えた。

「貴様も、その尋常でないマナの量以外は人と変わらぬな。それも、この世界のマナであろう?」

 あっさりとバレた、聖職者も魔法を使い、マナが見えるんだったな。


 どうしようか、味方が来るまで待っても良いが、どうせ何処かに逃げ道でもあるだろう。

 奥にある小さな扉、高い天井には外へと通じてそうな大きな穴もあり、壁の模様まで怪しく見える。

 魔法陣さえ取り返せれば、それで良いかも……。


 じりじりと距離を詰められる。

 手に持った短いナイフでは、間合いが違いすぎてどうしようもない。

 

 その時、奥から手下が一人、駆け出て来た。

「オルシーニ様! 外に、兵が!」

 早い、もう来てくれたのか。

 アデリナは、もう一度降参を呼びかけるが、当然応じるわけもない。


 オルシーニが何かを命じ、手下の一人が、何やら笛のようなものを取り出し吹いた。

 人の耳には聞こえない音だったが、天井の穴から一頭の影が現れる。

 こいつは、オオコウモリ!?

 

 以前、街道で襲ってきた魔物、この屋敷で飼っていたのか。

 手下の笛に操られ、オオコウモリが狙いを定めたのはルシィ。

 

 殺す気か奪い去る気か、どちらにしてもさせる訳にいかない。

 間一髪で、ルシィに覆いかぶさったが、かわりに俺の両足を捕まれてあっさり空中へと引きずり上げられた。

 

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