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星の掃除屋

作者: 矢光翼

勢いあまって書いちゃった!

あまり気持ちのいい作品じゃないです。ごめんなさいね。

 この星は汚れている。それは結果……または、成れの果て。

 多くの人間がこの星を去った。それは仕方のないことだ。

 自浄作用の停止、それがこの星にもたらされた災厄だった。

 一つ懐古する毎に、また一つ遡らなければならない出来事がある。

 すべての原因は、とある隕石の墜落だった。


 その隕石はこぶし大の大きさで、ヒノイヅルクニの中心に墜ちた。被害はそんなに大きくなかったらしい。まぁその程度の大きさの隕石など当時のヒノイヅルクニではしょっちゅうだったそうだが。

 その隕石を当時の人々はただの墜落物として処理した。その数か月後、異変が現れた。

 墜落現場は畑だった。その畑がいつまで経っても回復しない。農家は原因究明のために隕石を処理した機関に調査を頼んだ。

 すると原因は間もなく判明した。畑にいるはずの微生物が1種類どころか1匹も居ないのだ。するとどうなるか。土壌の分解と還元が行われず、畑そのものが死んでいくのだ。

 それを知るや否や、農家はできうる限りの対処を施した。他の農家から土を貰い、それを媒体として微生物を広げて畑を回復させようとした。だが不思議なことに、貰って来た土からも微生物が姿を消した。死滅したとかではない、消滅したのだ。

 その異変はその畑のみならず、波紋を広げるように徐々に拡大していき、ヒノイヅルクニは即他国との流通の一切を停止した。そして、次はこの異変拡大の原因を調査した。

 原因は、隕石だった。調査団が原点に返って、最初の畑に墜ちた隕石を調べたところ、おびただしい程の数の微生物がその隕石に集中していることが分かった。どういった原理で隕石にとどまっているのか、どういった経路でこの隕石に集まるのか、など多くの謎はあるものの、原因はその隕石意外に考えられない、と言えるほどの超懐疑的事実がそこにあった。

 そして同時に、それが超科学の類であると仮説を立て、対抗策が見つけられることはなかった。

 混迷を極める中、まさかその波紋が海外にまで及ぶだなんて誰も思っていなかった。

 加速度的に異変を広める隕石。海を隔てていることなど一切関係なく、判明からものの一年で世界中から微生物が消え、その隕石に集まった。

 そしてそれは同時に、この世界から還元が、自浄作用の一つが消え去ったことを意味した。

 それは世界中の環境を徐々に汚染し、多くの死者を出した。


 そして、数年後。

 死者を還元する力がなくなったために、空気中には腐敗臭が漂い、生物はほとんど居なかった。特に、自然環境に頼って生きている野生生物は早々に死滅した。これが人類にとって一番の傷跡を残した。

 食料の消滅、有限の資材。力を持て余した人類など存在せず、戦争すら起こらなくなった。

 そんな中で一つだけ、発見があった。それが、「汚染耐性」を持つ人間の存在だ。それは、どれだけの環境汚染にも屈しない体組織を持った人間のことを言い、そんな人間が10人だけ存在した。

 ただでさえ残り少ない人類は、その一握りをもう一握りした程度の数しかいない人間たちのことを、かの聖書の逸話になぞらえて「ノア」と名付け崇めた。

 人類の唯一の救いは、そのノアの共通点が、清らかな精神の持ち主だったということだろう。彼らはノアではない人類が全員死んだのち、その死を悼み、一つの目標を掲げた。

 それは「星の洗浄」。

 この星で死んだ人間を悼み、この星への歴史すべてに存在する無礼を詫び、少しずつ、少しずつ浄化していった。自浄作用を失ったこの星で出来る浄化、それは「食」だった。

 後の発見だが、ノアには排泄能力がない。いや、あの隕石による恐慌が起きて、消滅したのだ。それが神の導きか、ノアゆえの特異体質なのかはすでに確かめる術はない。ただ、ノアはそれを使命と強く信じ、ただ食べることに全てを捧げた。

 食人というタブーを神の名のもと正当化している様にも見えるこの行為は、人が存在しないからこそ許された行為であった。

 ただここで悔やまれるべきことがあるとするならば、ノアである10人の内誰も、「人を食べる」ということに抵抗を抱かなかったことだ。清らかな心に巣喰う唯一の傷。それが神の行為として裏返ってしまった。

 時を経て、ノアが性愛を抱かないことも判明した。生殖に対する一切の危機感を抱かない。そしてそれを引き換えとしたのか、ノアは地球の掃除を続ける限り老化しない。つまり、不老不死なのだ。

 清らかな心を持った食人種となったノアは、重なる特殊体質を全て神からの賜りものと信じ、徐々に掃除を進めていった。


 ただ、彼らがこの星を掃除していったからと言って、新たな人類が生まれるわけではない。生殖をしない、そして生殖機能も退化してきている。ノアの箱舟も笑えてしまうほど、ノアには未来がない。それでもノアは掃除を続ける。死者を食べ、世界を食べ続ける。

 隕石が墜落してもう何年経ったかわからない。私は、彼らが止まることを望んでいる。私は、彼らに何かを与えた覚えがない。ノアのノア足る所以は、人類が勝手に生み出した変異なのだ。それこそ、隕石によるものと考えてもいい。

 これ以上、あの美しかった星を食い進めることを傍観していたくない。が、私にはそうしなければならない理由がある。この星を生み出した以上、この星の終わりまで、寄り添わなければならない。

 やめてくれ、この星は、朽ちるはずだった。それをお前たちが食い進めていい理由はない。私の威を借りノアと名乗り、生き続けていることが罪なのだ。

 だがこの言葉は届かない。この顛末にすら、私は寄り添わなければならない。

 かつては人類だった化け物によって醜く歪められていく。

 私にすら手の届かぬ、運命とやらによって。

勢いあまって書き終えちゃった!

お読みいただきありがとうございます。

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