第8話
毎日更新すると言っているのに、お待たせしてしまって申し訳ありません。
クライマックスまでもう少し。楽しんでいただければ幸いです。
教室に向かうために廊下を歩いていると、誰かが走ってくる足音が聞こえた。
後ろを振り向くと、奏音がこちらに向かってくるところだった。
「わっくん、メイナちゃん!」
あんなに全力で走っても息は切れていない。さすがだ。
「留は?」
「トイレ行くから先に行ってて、だって」
「ふうん」
深くは考えないことにしよう。
「それでそんなに急いでどうしたのですか? 私たちに何か用事があったのでは?」
「あ、そうだった!」
奏音が自分の頭を小突いた。ちょっとイタい。
「トドメくんね、最近悩んでることがあるんだって」
歩きながら、奏音が留から聞いた話を教えてくれる。
「まるで時間が止まっているように感じる時があるんだって。例えば、一分しかたってないのに、読み始めたばかりの本が半分読み終わってるとか。これは前からだったらしいんだけど、その止まってる時間が長くなってるような気がするって言ってた」
「それって」
「能力ですね」
俺の言葉をメイナが受け継ぐ。
「やっぱり、そう思うよね」
「そして、そのことについて、留は何て言ってた?」
「怖い、って」
「そりゃそうだよな」
「何故ですか? とても便利な能力だと思いますが」
「メイナはそうかもしれないけど、この時代の人はそれが当たり前じゃないんだよ。怖いに決まってるだろ」
メイナは分からないというように首をすくめる。
「そういえば、その話を聞いた奏音は何て言ったんだ?」
登校中に見えた文字が気になり、尋ねてみた。
「えー。よく覚えてないけど、『びっくりしたけど、信じるよ』みたいなことかなあ?」
そう言った瞬間に、奏音の目から光が失われていった。
俺とメイナは顔を見合わせて、立ち止まる。
「能力?」
「おそらくはそうです」
小声で話していると、奏音の口が開いた。
『いきなりこんなこと言われても、信じられないよね。ごめんね』
『ううん、ちょっとびっくりしただけ。あたしは信じるよ、トドメくんのこと』
『えっ』
『どうしたの? 顔赤いよ。熱でもあるんじゃない?』
『ちょ、顔近い! おでこ触らなくて大丈夫だから! 熱はないから!』
『ならいいけど。とにかく、あたしはトドメ君の味方だからね』
『……僕のこと好き?』
『急にどうしたの?』
『亘よりも、僕のこと……いや、なんでもない。忘れて』
我に返った奏音が「え、また何かした?」と、俺と奏音を交互に見ていた。
「あそこでピンクになったのか。留もウブだな」
俺は納得したが、他の二人はきょとんとしている。
「三浦さん、ありがとうございました。留さんと仲直りできたようでよかったですね。これからも監視、いや、観察をよろしくお願いします」
メイナが深くお辞儀をした。
「いやいや、そんなお礼言われるようなことじゃないよ! でもそんなに喜んでもらえるなら、あたし頑張るね」
奏音がにこっと笑った。
「あと二日か……」
俺はひとりごちた。
「何も起きないといいね」
奏音が応じる。
「とりあえず、警戒を続けましょう」
メイナが小さく拳を握りしめた。




