第5話
奏音が戻ってくると、メイナを中心に情報整理が始まった。
「まず、私の能力ですが、タイムスリップすることが出来ます」
りんがノートに「メイナ:タイムスリップ」と書いた。
「で、わたしが事件の匂いが分かる第六感ね」
「俺はテレパシー。ま、留限定だけどな」
目を泳がせている奏音と、ノートを見たまま動かないりんを交互に見て、メイナが言った。
「そして、三浦さんが『レコード』で、輪島さんが『ループ』です」
「それなんだけどさ」
自分の毛先をもてあそびながら奏音が言った。
「全然自覚ないし、いまいちぴんとこないんだよねえ」
「わ、私もです! 能力とか言われてもよく分かんない」
メイナは腕組みをして、何か考えている。
「そうよね。わたしも分かってないわ。私の能力って、勘みたいなものだし。実際、たまたまそんなこともあるなあって思ってたのよ」
「俺も同じ。テレパシーって言われても、って感じ」
「お二人の能力はセットで使うのが一番合理的なのでしょうね」
メイナの話が、奏音とりんのことだと理解するまでに数秒かかった。
「セット?」
りんが口だけを動かして言った。
「まず、輪島さんが『ループ』を使います。すると、時が巻戻ります。しかし、この『時』というのは、先ほど申し上げたのと同様、別の時間軸に移動しているだけなのです。つまり、そういうことが起こったという事実は存在することになります。ただし、我々はそのことは覚えていません。『ループ』には、前の記憶を消す力もあるからです。そこで役に立つのが、三浦さんの『レコード』です。ループ前に起こった出来事を記憶し、再生することが出来ます。そして我々は情報の共有ができるようになるわけです。もちろん、『レコード』はループが起こっていなくても使えるでしょう。三浦さんが、無意識にでもこの情報は大事だ、と思えばの話ですが」
メイナの話をなかなか飲み込めず、俺は天井を仰いだ。誰かのうなり声が聞こえる。
おそらくメイナ以外の誰も、この話を理解できていないのだ。
「ともかく」
始めに口を開いたのは結里だった。
「ここにいる五人の力を合わせれば、『事件』は防げるってことなのよね?」
「はいそうです」
メイナが答えると、りんがノートとにらめっこしたまま話し始めた。
「改めて情報を見直してまず分かるのは、留くんが何かに関わっているってことですね」
「俺は、留の思考が分かるからな」
「そうだね。一番大きいのは、メイナさんが、亘くんの名前を呼ぶ声を聞いた、ということだと思うんです。そもそもメイナさんが来なかったら、私たちはその事件のことは知らなかったし、おそらくこうして集まることもなかった。そうでしょう?」
全員が頷く。
「そして、今整理した情報を元に推測すると、留くんが」
りんが口をつぐんだ。一向に話し始める気配がない。
みんな、そのあとに続く言葉が何か分かったうえで俯いていた。
「留さんが、爆発事件を起こした。その可能性が高いですね」
メイナがりんを引きついで、言った。
そのあとは誰も何も話さない。
利用時間終了を知らせる電話の音だけが、部屋の中に鳴り響いていた。




