表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力があるのは必然です!  作者: 安積みかん
信頼は依然なし
25/42

第7話

「りんちゃん、具合は大丈夫?」


 机に座り、手を叩いて笑っているギャル集団の横を通り、奏音が席について俯いている三つ編み少女に駆け寄っていった。


「う、うん」


 奏音の後ろからついてきた俺たちに戸惑った様子で、りんと呼ばれた少女が答えた。


「……泣いてるの?」

「え? 泣いてないよ」


 ぽろり、と両目から涙がこぼれる。


「あれ? どうしてだろう」


 それを手で拭いながら、不思議そうに奏音を見上げた。


「三浦さん、この人は?」


 メイナが奏音に聞いた。


「私の隣の席の、輪島わじまりんちゃん。トドメくんと一緒に委員長をしているんだよ」


「ど、どうも」


 どもりながらぺこりとお辞儀をする。


「俺は土岐亘。留の兄だ」

「覚張結里よ。よろしくね」

「天翔メイナです。ところで貴女、先ほど能力を使いましたね?」


 自己紹介もそこそこに、メイナはりんを問い詰めた。


「へ?」


 事情を知っている俺でさえ、一瞬理解が遅れたのだから、初めて聞いたりんが戸惑うのも無理はない。


「いいえ。使ったというよりは、防衛反応で発動したのでしょう。何か嫌なことでもあったのではないですか?」

「そんな……私覚えてない」

「さっきカノンちゃんが言ってたことが、時間が巻き戻る前だとしたら」


 結里は記憶をたどるためか、右上を見つめている。


「りんちゃんは、濡れ衣を着せられたのかもしれないわ」


 その言葉を聞いて、りんの目から再び涙が溢れだした。


「あ、あれ……? 私なんで、泣いてるんだろう」

「とにかく、何かあったのは間違いないようですね。そして、時間が巻き戻った。これは能力以外の何物ではありません」

「……さっきから能力、能力、ってどういうことなの?」


 奏音が小さく手を挙げている。


「さっき、みんな持ってるって言ってたけど……正直よく分からないよ」


 素朴な疑問を口にする奏音。その隣で、りんが高速で頷いている。


「そうですよね。まだきちんとお話ししていませんでした。きっと、この短期間でこれだけの人たちが集まったということは、何か意味があるのでしょう。今日の放課後、時間を取ってお話しします」


 メイナが言った。

 ちらりと時計を見ると、次の授業が始まるまであと五分だった。

 そろそろ戻らないと、とメイナに声をかけようとしたとき、後ろから肩を叩かれた。

 びくりとして振り返る。


「あのさ」


 机に座っていたギャルだった。


「あんたがいると着替えらんないんだけど。一応ここ、女子の更衣室その二だから」


 周りを見渡すと、確かに男子はいない。廊下から男子の声が聞こえるから、恐らく女子が着替え終わるのを待っているのだろう。


「し、失礼しました!」


 俺は慌てて教室の外へと向かった。後ろからギャルの笑い声が追いかけてくる。




「亘じゃないか。うちのクラスから出てきてどうしたの? もしかして堂々としたのぞき?」


 扉を出たところで留に呼びとめられた。


「断じて違う! そもそも、どうして更衣室があるのに、女子が教室で着替えてるんだよ」

「それは、あいつらが権力を持っているからさ」


 留が遠い目をした。これ以上は聞かない方が良さそうだ。


「そうか。じゃあな」


 俺が踵を返して立ち去ろうとすると、留が俺の肩に手を置き、耳元で囁いた。


「これ以上、変態行動を起こしたら、学校にいられなくなっちゃうね。兄さん」

「お、おいっ!」


 振り向いて言い返そうとすると、そこにはもう留はいなかった。


「土岐亘、行きますよ」


 代わりにメイナと結里が立っている。


「ワタルくん、どうかした?」


 結里が俺の前で手のひらを上下に振った。


「大丈夫です、何でもありませんよ。授業に戻りますか」


 俺は大きく伸びをした。なんだか疲れた。


「覚張さん。放課後、昇降口に集合ですよ」

「分かったわ。また会いましょう」


 結里がポニーテールを揺らして、自分のクラスへと戻っていった。


「……放課後まで何も起こらなきゃいいけど」


 ぼそっと呟くと、メイナがこちらを一目見て言った。


「きっと大丈夫ですよ。あと、何か起こったら、私が守りますので。ご安心ください」


 拳を顔の前で握りしめ、ドヤ顔をするメイナ。


「はは、頼もしいな。でもそれは、男が言うセリフだ」

「土岐亘では頼りになりません」


 メイナは口をとがらせている。


「ひどい!」


 こんな日常が続けばいいなと俺は思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ