第2話
放課後。俺は席に座り、集中力を高めていた。
留の様子を探るためだ。
「だめだ。上手くいかない」
俺は目を開いて、止めていた息を吐き出した。
「集中しすぎなのかもしれませんね。今までは無意識のうちに思考が流れ込んできたようですし。まあ、そのうち慣れるでしょう。では、留さんに会いに行きましょう」
メイナはあっさりとしている。
「え、だって思考を探れって言ったじゃん」
「訓練もかねてのことでしたので、できなければ無理にすることはありません。行った方が早いでしょう?」
身を翻して自分の席に戻っていった。
「そりゃそうだけどさ」
俺も、鞄を持ってメイナの後を追う。
並んで教室から出る。
恋人であると誤解されているのは釈然としないが、こういう時に疑われなくなったのは便利である。
「そういえばさ」
「何ですか?」
「さっき、ありがとう。俺のこと庇ってくれて」
「庇った? 何のことでしょうか」
メイナはとぼけている。
「思ったことを口にしたまでです」
「俺がやってないっていう嘘も?」
「嘘ではありません。だって、やったのは土岐亘の体を借りた誰かです」
「よく分かんねえや。でも、ありがとな。嬉しかった」
俺が笑うと、メイナの頬がほんのり染まった。
「そんな、お礼を言われることではありません。さあ、行きますよ」
メイナはそっぽを向いて、歩みを速めた。
隣のクラスにさしかかった時、開けっ放しの扉から、留と奏音の笑い声が聞こえた。二人は談笑中のようだ。
「今なら行けそうだな」
「はい」
短い会話を交わし、俺は教室に入る。
入り口側に背を向けている奏音は、俺たちには気づかない。
留が、嫌悪感を露わにした顔で俺を見た。
「何しに来たんだよ」
奏音がその声に反応して背後を確認する。
俺が小さく会釈をすると、一歩後ずさった。
「昼はごめん。本当に申し訳ないと思ってる」
「謝って済む問題じゃないだろ」
黙ったままの奏音に代わって、留が反論する。
「そう、だよな。反省してる」
「土岐亘にも色々と事情があったのです。できればお二人とお話したいのですが」
「あんなことするのに、事情があるだと? くだらない。言い訳にしては酷すぎる。帰るぞ」
留が奏音の腕を引っ張り、自分に引き寄せた。
奏音は俯いたまま、こくんと頷く。
「じゃあな」
俺たちの前を二人で通っていく。
去り際、奏音が耳元でささやいた。
「最低」
今まで聞いたことのない低い声だった。
今回も短めです。そして19日は私用で更新をお休みします。
申し訳ありません。
 




