第1話
※初めて書くジャンルなので慣れない部分もたくさんあると思いますが、ご了承ください。
「あなたが土岐亘ですか?」
高校二年生。夏休み明けの始業式の日。放課後。
俺は、転校生に話しかけられている。
つい先ほどまで、俺は席に座っている転校生のことを見ていた。
俺が窓際の一番前の席で、転校生が廊下側の一番後ろの席だから、ちょうど対角線上。
この教室の中で一番距離が遠い場所。
「ねえねえ、天翔さんってどこの学校から来たの?」
「好きなタレントとかいる?」
「連絡先交換しようよ」
転校生はクラスメイト達に囲まれていた。
当の本人は、まるで何も聞こえないように、というよりも、まるでそこに誰もいないかのように微動だにせず、真顔でそこに座っていた。
背筋がぴんと伸びて、視線は目の前の女子を通り抜けてその先を見つめているようだった。
「あ、天翔さん?」
「おーい、聞いてる?」
ざわつく周囲の様子に気付いた風でもなく、転校生は立ち上がった。
そして、頭だけを動かしてこちらを見た。目が合った。
転校生が左に向きを変える。すっと立ち上がり、足を一歩踏み出す。取り巻きたちが、さあっと道を開ける。
風を切るように、静かに、転校生は俺の方に向かってきた。
俺が、がたんと音を出して立ち上がると、転校生が目の前でぴたりと止まった。
「あなたが土岐亘ですか?」
真っ直ぐに俺の顔を見つめてくる。その目には、口を開いてへっぴり腰になっている俺の姿が映っているはずだ。
そもそも自己紹介をした覚えがないのになぜ俺の名前を知っているのだろう、とか「あなたが」の「が」に含まれている意味は何なのかとか、たくさん聞きたいことはあった。
もしかして、俺はこいつに会ったことがあるのではないだろうか。
俺はまじまじと彼女を見つめる。
眉のラインで切りそろえられた前髪。全体の長さはギリギリ肩につくくらい。
黒髪。黒いメガネ。よく見ると切れ長の目だ。
胸は、えっと少し小さ……。
こほんと咳払いが聞こえた。
「早く私の質問に答えてください。『はい』か『いいえ』で済む話でしょう」
「あ、はい、です」
「わかりました。話があります」
「え?」
「二人で話しましょう」
ちょっと待って。せめて変な日本語になった俺に、突っ込みくらい入れてほしい。
彼女は表情を変えず、俺に背を向けた。
そのまま歩き出し、前の出入り口から教室を出て行った。扉は開いたままだ。
しん、とした空気に周りを見渡すと、クラス中の奴らから注目を浴びていた。
そんな目で俺を見ないでほしい。
俺に状況説明を求めているようだが、俺だって全然飲み込めていないんだ。
どうしてこうなった。
もしかして夏休みに助けてあげたあの子? 実は小さい頃に引っ越していった幼馴染?
だったら嬉しいけど、そんな人がいた覚えもない。
ちょっと朝から一日を振り返ってみよう。