表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力があるのは必然です!  作者: 安積みかん
事件は偶然?
13/42

第5話

「ごめんなさい、わたし教室に戻るわね」


 結里が向きを変えて、階段に向かっていった。


「待ってください! 今のどういうことですか?」


 俺が叫ぶと、首だけをこちらに向けて言った。


「そのうち分かるわよ。また事件が起こるところで、お会いしましょう」


 結里は一段目に躓き、つんのめっていたが、手すりを掴むことでどうにか持ちこたえたようだった。そのまま階段を駆け上がっていった。




「嵐みたいな人だったねえ」


 奏音が苦笑いをしている。


「そうだね」


 俺は廊下の時計を仰いだ。


「……授業始まっちゃったね」

「そうだねえ。でもどうせガイダンスでしょ? まずは保健室に行かないと」


 奏音は頑なだ。それはそうか。

 片手がふさがった状態じゃ、何にも集中できないだろうし。


「分かった。じゃあ行こうか」


 保健室に向かって、誰もいない廊下を歩きながら考えた。

 俺はクラスメイトにどう思われているのだろう。

 朝はメイナと一緒に登校して、奏音と二人で教室を飛び出してしまった。

 今までだって奏音と学校で話をしたことはあるけれど、こんなにあからさまに二人きりになってしまったことはない。

 さっきまで普通に話していたのに、「奏音と二人きりなのだ」と意識した途端に何も喋れなくなってしまう。


「わっくんどうしたの? 何か悩み事?」

「いや、大したことじゃないよ」

「もしかして」


 奏音の眉が下がる。


「あたしと話すの、いや、とか?」

「そういうんじゃないって。むしろ逆っていうか」


 音を立てて保健室の扉を開けるとそこには先生がいて、俺は正直ほっとした。


「あら、どうしたの?」

「転びました」

「本当だ、擦りむいてるわね。で、そっちの女の子は?」

「あの、ボタンが取れちゃって。裁縫道具ありますか?」

「あー。ちょっと待ってて。そこのベッド使っていいから。カーテン閉めてね」


 奏音がベッドに腰掛け、カーテンを閉めたのを見届けた先生が、俺にだけ聞こえる声で言った。


「新学期が始まったばかりだというのに、二人で何してたのかしらね」


 驚いて先生の顔を見ると、ウインクして唇の前に人差し指を立てている。


「誤解です! ただ廊下で立ち話してただけです」


 奏音に聞こえないギリギリの声で語気を荒げた。


「ふうん。立ち話、ねえ」


 先生は全く信用していない様子で俺の全身を見た。

 そして、机から裁縫セットを取り出すと、奏音の方へ向かって行った。


「これ使って。終わったら机の上に置いておいてちょうだい」

「分かりました。ありがとうございます」


 カーテン越しにやりとりを終えると、先生はこちらを指差しながら歩いてきた。


「そして、きみ」

「あ、二年の土岐です」

「土岐くん。これから怪我したところを消毒して、絆創膏を貼ります。治療が終わったらすぐにここを立ち去ってください」

「え? あ、はい、まあ。そうするつもりですけど」

「で、女の子の、えっと」

「三浦です」

「三浦さんはちょっと残ってちょうだいね」

「……分かりました」

「合意の上だったかってことを聞かないとね」


 奏音は意味が分からなかったからか、沈黙を貫いていた。


「先生! だからそういうことじゃないって言ったじゃないですか」

「一応ね、一応」


 先生は俺の腕を掴むと、消毒液を垂らした。


「痛っ」

「はいはい、ちょっと染みるわよね、我慢よー」


 余計な液をふき取ると、大きめの絆創膏を貼り、その上からぺしんと強めの力で叩かれた。


「痛いって」

「はい終了。じゃあ、土岐くんは授業に戻りなさいね」


 背中を両手で押されて、強制的に保健室を出される。

 振り向くと、奏音がいるベッドのカーテンが風に揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ