準備
よろしくお願い申し上げます。
第九話 準備
朝、力子とスルハは湯浴みを済ませ、大きな鏡の前で二人並んで式神に髪を整えて貰いながら話ていた、
「力子様、湯浴みって本当に気持ち良いですね、私もう病み付きになりそうです!」
「そうですね、私も湯浴みだけは欠かした事がありません、で、スルハ様今日の髪は、如何します、私は纏めて出来る女の髪型にしようと思っているのですが」
「出来る女ですか、興味深いです、では私も力子様と同じ髪型でもよろしいですか?」
「其れ、面白そうですね、できる?」
力子が式神にたずねると、式神は、
「お任せ下さいお二人ともできる姉妹に仕上げてみせます。」
「それは面白そうですね、ではメイクも大人っぽくで、お願い!」
「はい、力子様、承りました。」
「力子様、力子様の式神殿はとても優秀なのですね、羨ましいです、」
「此の子は、ちょっと私の自慢なのです、絶えず下界のオシャレを学ばせているので、休日の私服などのチョイスも、ちょっとした物なのですよ!」
二人の話が盛り上がっている間にメイクも終わり、制服を着て二人並んで鏡で確認する、二人共今日は髪を頭の上で結い上げお揃いのシックな髪飾りで留めている、目元のメイクも昨日は可愛い感じだったが、今日はキツめのメイクになっている、力子は自分の身だしなみを確認し終え、スルハに昨日作った身分証を渡す。
「スルハ様、此れが身分証です、私達の様に首から下げて下さい、此の身分証が有ればこの社に自由に出入りできる様になります、」
スルハは身分証を首から下げて鏡に写る自分を見ながら、私カッコイイ!と心の中で微笑んだ。スルハは、力子の首元を見て身分証の他に首から下げている事に気付き、力子に問いかける、
「力子様、身分証の他に首から下げている物はなにですか?」
「コレですか、コレは携帯端末を首から下げているのです、ただ制服のポケットなどに入れて置くと動いた時などに落として壊してしまう事があるからです、スルハ様も首から下げますか?
「はい!是非お願い致します。」
「では、用意させましょう、お願い!」
力子の式神はいつもの様に一礼して音も無く消えた。
「さあ、スルハ様そろそろ朝食を食べに行きましょう!」
「はい!」
居間では界理が朝食を食べ終え食後のコーヒーを飲んでいた、
「「界理様おはようございます」」
「おはよう、二人共今日はまるで姉妹の様ですね、イメージ的に学校の先生のようで、素敵ですね!」
「ありがとうございます、今日は初日なので二人共気合いが入っているんです!」
力子達は、椅子に座り籠の中のデニッシュパンを手に取りたべる、スルハはこのデニッシュパンが、たいそう気に入ったみたいで、何度も籠に手を伸ばしていた。
一方シロンの広間ではスィーネスたちが本日の準備をしていた。
「みんな、今日は各自担当するお仕事がんばってね、詳しくは説明して貰えると思うわ」
「スィーネス様そろそろお時間です、」
副天使長がスィーネスに伝えると広間の壁のガラスの扉が開き、日出ずる国の式神達も荷物を抱えながら、対策本部となる部屋に入って行く、昨晩のうちに、机や簡易パイプ椅子は運び込まれていたので、テキパキと机や椅子を並べ、必要な機材をセットして行く。
予定の時間少し前スィーネスが天使達と共に
入ってくると、一礼した式神が、並べられた机の一番前の列の、会い向かいの席にスィーネスと副天使長を案内する。
他の天使達は式神と交互に座って行き、式神達は、机の上にペットボトルの紅茶を、並べていく天使達は興味深くペットボトルを眺め、隣の式神に教えて貰い、キャーキャーさわいでいた、其処に扉が開きスルハが入って来て、スィーネスの前で一礼して、
「おはようございますスィーネス様」
と挨拶する、スィーネスと副天使長も立ち上がり一礼して
「「おはようございます」」
と挨拶を返した、スルハはキョトンとして、
「あの、スィーネス様?」
「えっ!天使長なの?」
「はい、昨晩も同じ様なやり取りをしましたが?」
「だって、貴女昨晩とも全然ちがうわよ!」
「はい、今日は力子様と二人で、出来る女と言うコンセプトでセットして頂きました。」
すると副天使長が、
「天使長、私も天使長の様に綺麗になりたいです、今日の天使長綺麗でカッコイイ良くて、何だか力子様みたいです!其れに今日の天使長凄く良い匂いがします!」
其処に扉が開き力子と界理が入ってきて、スィーネスの前で一礼して、
「おはようございます、スィーネス様、副天使長殿」
「おはようございます、界理様、力子様」
スィーネスは力子を見て本当に今日の天使長と姉妹みたいだ思った。
「力子様、昨晩天使長に何があったのですか?昨晩はとても可愛く、今朝はカッコ良く綺麗です、其れに今日の力子様は天使長と姉妹の様にみえます。」
スィーネスに聞かれた力子は、微笑みながら、スィーネスに答える、
「私の式神が少しだけお手伝いをしただけですよ、スルハ様は元々美しい方ですので、式神も仕事のやりがいあると、喜んでいました。」
「是非、私にもその式神殿を紹介してください!力子様!」
スィーネスは凄い勢いで力子にお願いする、其処副天使長も続き、
「ち、力子様、私も宜しくお願いいたします!」
「はい、スィーネス様は今宵界理様との食事の前に式達がピカピカに磨き上げられますよ!副天使長様には、うちの式の都合の良い時に、日出ずる国のメイクを天使殿達と共に講習会を、行いましょう。」
スィーネス達は力子の話を聞いてコクコクと縦に首を振っていた。
「其れにしても天使長、日出ずる国は、どうでしたか?その制服も、とてもカッコ良いです、その上着の下はどの様になっているのです?」
スィーネスはこれも又興味深々でスルハに問いかける、スルハはちょとだけ自慢そうに上着を脱ぎながら話し出す。
「はい、夢の様な所です、今宵スィーネス様も、体験して下さい、上着の下は、この様な服を着ています、その下は今は秘密ですが、これも又今宵お教えいたします、」
スルハがニヤリとした顔をしながら答える。
「あと、その首から下げている物は何ですか?」
今度は副天使長がスルハにたずねる、スルハは首から掛けている身分証を手に取り副天使長に見える様差し出し、
「此れは界理様のお社の身分証です、この身分証があれば広間の扉から、出入りが出来るよになります、あと、もう一つは、これです、」
スルハは胸ポケットから携帯端末を取り出して見せる、
「此れはネックストラップと言うもので携帯端末を落とさない様にする物だそうですよ、」
其れを聞いた副天使長は直ぐにスルハにお願いする、
「天使長、わっ、私もそのネックストラップが欲しいのですが!」
その時、パン、パンと軽く手を叩く音が聞こえ、皆が注目する、その先には微笑む界理が、スッと立ち上がり、
「皆、おはよう、そろそろお仕事を始めましょう!」
界理が挨拶し終え席に着くと、今度は力子が立ち上がり話だす、
「皆様、おはようございます、此れより今回の作戦の説明をいたします。」
力子がそう告げると部屋の明かりが暗くなり、界理達のいる一番前の席の白い壁に昨日タブレットで見せた少年が映し出された、天使達は驚き壁を食い入る様にみているが、力子は続ける、
「昨日も説明しましたが、この少年が今回捜索する、人物名を、山崎静流と、言います年齢は、十五歳の男性です、
天使殿達は此れより隣の式神とペアを組んで捜索に当たって貰います、」
力子が一旦話を切り周りを見渡すと、式神達はすっかり自分のペアの天使達と
打ち解けていて、皆頷き返す、力子も頷き返し、話を続ける。
「今回捜索に参加する物は十五組です、後の物は本部でバックアップをして下さい、捜索隊はペアごとにナンバーを振りますので、報告はナンバーを告げ情報をアップして下さい、今日は情報収集が目的ですので、ターゲットの少年や、周りの物との接触も控えて下さい、後お昼のお弁当を式神達に持たせて居るので、各自お昼を食べて下さいね、机の上の紅茶も忘れないよう、それでは、捜索隊作戦を開始せよ!」
力子の言葉に、総勢三十人の天使、式神の捜索隊は立ち上がり、一礼して本部を後にした。
ありがとうございました。